(五)-2
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取れるだけの材料は全部取った。もう会うこともないだろう。あの白銀の炎も見納めだ。あとは何か、もう一押しあればいい。
中央では会津が京都守護職を拝命し、昨年末から駐屯を始めている。武市を投獄するに都合のいい展開が何かしらあるはずだ。単純な話、尊攘激派は調子に乗ってやりすぎた。揺り戻しは必ず来る。
それは安政の大獄から藩内の権力争いに至るまで様々な政治の暗闘を生き抜いてきた者の勘だった。
大の大人を子供のように手玉に取り、相手の信頼を陥れのために平然と利用する。
政治はきれいごとではいかないのだ。どうやら自分も、阿部正弘や島津斉彬と同じ領域に達してきたらしい。
武市が去った直後は沈鬱で暗かったその差しは、いまやあらゆる感情を含みつつそのどれにも名状しがたい、逆に能面のごとく静まり返ったものになっていた。
文久三年八月十八日。
京都で会津藩と薩摩藩が共同し、御所から長州勢力を一掃する。世に言う八月十八日の政変である。
高知城下に戒厳令が敷かれ、武市半平太ら土佐勤王党の主だった者たちが逮捕投獄されたのは九月二十一日のことである。
(完)
炎舞 小泉藍 @aikoizumi2022615
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