再会
「ねえ、もしかして君……伊織兄ちゃん?」
沈黙の時間が流れる。
いや、実際の時間は数秒なのだが、
期待感からなのか長い時間に感じられた。
「うん、そうだよ。やったね、樹!」
「ふむふむ、感動の再会ってやつか。わしのおかげだな!ふむふむ!」
何処の馬の骨ともわからない魔法使いを信じて魔法を使ってもらうのはとっても不安だったけど、
人間になれて喜んでいる伊織兄ちゃんを見ると、
やってもらって良かったと思えた。
俺は、自分が時を超える魔法を使ってもらったことを忘れかけていた。
それは、起こっていることが衝撃的すぎたからなのかもしれない。
黒い煙、焦げ臭い匂い、血のような匂い、刀で斬られたような跡、服にべったりと付いた血。
どこからどうみても異常事態。
だが怪我はないという謎。
おかしい。
「ねえ、政元さん?ここで何が起きていたか知ってる?戦闘でもあったかのような様子だけど。ほら、そこの壁に矢も刺さっているし」
伊織が指す方を見ると、
確かに矢が壁に刺さっている。
おそらく室町時代に来ているはずなのだから、
伊織の言うように戦闘があってもおかしくない。
むしろ、そう考える方が自然かもしれない。
とはいえ、刀で斬られ、血で服が赤黒くなっているのに、
怪我ひとつないのは何故だ?
「すぐ近くに養子の澄元の屋敷がある故な。きっと、わしがいなくなったのを良いことに澄之派の家臣が襲ったのであろうよ」
「刀で斬られたような跡があるのもその影響?」
「ふむ、良い質問だ樹。争いで犠牲になった者を依代に使わせてもらって時を超えたのだ。刀で斬られているような跡があるのはそのせいであろう」
「そうだとしても怪我ひとつないのはおかしいよね?」
「怪我ひとつないのはわしが天才だからだな!だが、世界の理に反しすぎたせいで……いや、なんでもない」
「え〜っ、隠し事?続き教えてほしいな」
政元さんが言葉を濁す。
世界の理に反しすぎたせいで何なのだろう?
魔法には弊害があるとか?
俺たちには言えないようなミスをやらかしたのだろうか?
「……まあ、そんなことよりもわしの屋敷についてくるが良い。面白いものが見られるであろうからな」
ははは……と、ぎこちなく笑う政元。
釈然としないまま、政元について行く樹たちであった。
魔法使いに騙されて行った室町時代は毎日が騒動です であるか。 @dearuka1582
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔法使いに騙されて行った室町時代は毎日が騒動ですの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます