第9話 俺、混浴を体験する
そして俺は今、絶賛混浴中です。
姉ちゃんがルルさんとやらに言ってた『準備は?』『貸切は?』とかいう話はすべてこの混浴の話だったらしい。
ほんっと勘弁して欲しい。
男が女の人と混浴……まあ、姉ちゃんだけど。家族みたいなもんだけど。でもな、もうこれが美人すぎてどうも意識してしまうっていうか。
でも大丈夫だ。さんざん赤ん坊の頃から姉ちゃんの裸は見てきた。さすがに反応は……マジか。
これはマズイ。
「嘘、だろ……?」
「どうしたの?」
「い、いや何も……でも気持ちいな! この風呂は」
俺の息子は今まで見たことないほど元気になっていた。これが姉ちゃんにバレたら幻滅されるか、そういう関係になるかの二択。
姉ちゃんのことだから気づかないフリはできない、はずだ。
はっきりズバズバ言っちゃうタイプだしな。
俺は肩に掛けていた布で慌てて息子を隠した。
だがしかし、これでもバレてしまうのではないかと心配だ。
確か冷たい水を浴びると息子は、その寒さから元気をなくすはず。だから冬のような寒い日は、外から帰ると元気がなかった、ような気がする。という考えに至り、俺はすぐに風呂を出た。
冷たい水を頭から思いっきり浴びると……それでもまだまだ元気だった。その後も何度も何度も水を浴びるも元気なままで変化が見られない。
マズい、このままじゃ姉ちゃんが怪しんでこっちの様子を見に来てしまう。
「ネオ君やっぱり変だよ。どこか身体の調子が悪いの?」
やっぱりきた~!!
風呂から出てゆっくりと俺に近づいてくる。
あ、終わった。もう手遅れだ。
恥じらいを捨てた俺の精神はもう無敵状態。
人間諦めが肝心なのだ。
真っ向から正々堂々と、近づく姉ちゃんに歩み寄る。するともちろん姉ちゃんは異変に気づいたようで……。
「あら、大きくなったのね。何だか感慨深いわ~」
思ってた反応と随分違った。
女の人なら普通、悲鳴の一つは上げるはず。
けど、姉ちゃんは悲鳴を上げるどころか感慨深いと言ったのだ。
それは俺を男として見ていないということだろう。それとも姉? もしくは母親のような感情と同じものだろうか?
「ネオ君が赤ちゃんの時は、あんなにもちっちゃかったのにこんなに大きくなって。立派になったね」
「いや、下半身見ながら言われてもな、あまり嬉しくないんだが」
「そ、そうね。ごめんね。でもお姉ちゃん嬉しいのよ。こんなに成長してくれたんだって」
いや~もうそれは立派に成長しましたとも。
姉ちゃんのおかげで。
「お姉ちゃんそろそろ上がるわね。ネオ君はゆっくりしてていいから」
と言われ、俺はもう一度湯船に浸かった。
しかし俺もそろそろ限界を迎えようとしていた。このままじゃのぼせてしまうと思い、絞った布で身体を拭いた。
そして脱衣所に行くと、着替えの途中だった姉ちゃんの姿があった。
どんだけエロい展開が続くんだよ!!
そう俺は心の中でエロゲ主人公のように叫んだ。
「ご、ごめん姉ちゃん」
「いいのに。お姉ちゃんの裸なんて見慣れてるでしょ?」
「それはそうだけど……」
「男の人は堂々としてるのが一番よ」
「と、言われてもな。姉ちゃん綺麗だし目の毒だよ」
咄嗟に呟いてしまった一言。
この一言が原因かは謎だが、姉ちゃんの吐息が妙に激しくなっている気がした。
まさかそんな~とも思ったが、身体をモジモジさせている姉ちゃんは妙に色っぽくてエッチィのだ。
これはそういう展開なのか?
と、心の中で期待した俺もいました。
しかし、姉ちゃんは「お花を摘みに行く」と言ってどっかに行っちゃうし、俺の期待は早々に裏切られた。ていうか、むしろ何もなくてよかった。
俺は脱衣所を出て和室に戻った。
部屋中を照らしていたロウソクを消すと、俺は布団に潜る。だが背を向けた途端、俺の隣に誰かが入って来たのだ。
「ネオ君起きてる? この匂い……はぁ~やっぱり落ち着く。お姉ちゃん危なかったんだよ」
何かよからぬことをしようとしてるのは見過ごすとして、話の続きが気になる。
危なかったって何が?って質問してみたい。
でも今起きてるのがバレたら、当然何も話さなくなるだろう。
それに姉ちゃんが俺の布団で何しようと自由だ。そこはプライバシーを尊重しなくては。
「ネオ君はね、お姉ちゃん好みの男の人に成長しちゃったね。だから裸を見た時すごく興奮しちゃった。今まで色んな男の人見てきたけど、こんなに心臓がドキドキすることなかったんだ」
興奮した、だと。俺でか?
姉ちゃん、それは完全に俺をエッチな目で見てるのと変わらないのでは?
それに心臓がドキドキするって恋なのでは?
ここまで理解してしまう俺が恐ろしい。
けど、俺には姉ちゃんの気持ちを尊重できない。
なぜなら今まで姉弟として過ごして、それに俺の育て親みたいなものだからだ。
ごめん、姉ちゃん……。
ここで俺の意識は夢の中へと消えた。
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