第1話

「『リイコ』!?あんたがそうなのか!?」

「あら、知ってたのね。エリヤスから聞いてた?」

「ああそうだ。……ハッ!」

少年が目を閉じて深呼吸する。

「ふうっ……。ええと、僕はルノルドだよ。10歳の男の子なんだ。エンジニアをしてる」

「エンジニア!?えっ、じゃあ……あなたが、」


「凄腕エンジニアのルノルド!?」


「うん。そうだよ。凄腕かは分からないけどね」


ルノルドと名乗った少年は真っ赤で大きな瞳を瞬かせる。前髪がピンク色なのが印象的だが、他の髪は黒い。エリヤスと親戚らしいが顔はあまり似てないと思った。

「でも僕は機械が好きだ。だからここで働いてる」

ルノルドの後ろにある機械が音を立てる。

「あっ。ごめん。役目もないのにずっと動いてると疲れちゃうね」

「言葉がわかるの?」

「なんとなく。ずっと弄ってれば分かるよ」

「ずっとっていつから?」

「え……。うーん、覚えてないなあ」

ルノルドは曖昧に笑い、機械の電源を切った。

「改めての紹介は明日というだったね。僕はもう少しここで作業するから」

「じゃあまた明日ね、ルノルドくん」

「……うん」


自室に戻り、ガッツポーズをする。

「凄腕エンジニアって……あんなかわいい男の子だったの!?」


「かわいいー!ヤスは何も言ってなかったけど、本当にかわいいー!」


「あの子とならまともにシャフマ語の授業出来そうね!ふふふ!」





「ヤス」

「……んわー。なんやあ……起こすなアホお」

「あの女は何だ?」

「あっ!ルノルド隊長やあん。おはようさん」

「ヤス、教えてくれ。あの女は何だ?」

「なんやあってえ……説明したやあん」

「してないだろう……」

「……お兄ちゃんから通信はあ?」

「来ていないが、それが何だ?あの女に関係することなのか?」

「もちろんやでえ。やけどお……」

「眠いのなら簡潔に聞く。完成したのは知らなかった。何故俺に言わなかった」

「……」

エリヤスが黙り込む。

「答えてくれ!!」

「んわー!!声でっかいんやから耳元で叫ぶなあ!」

「……答えてくれ、ヤス」

「あんたは、早く見たいと言うと思った」


「早くオーダムに挑みたいと、言うと思ったからやあ……」


「っ……!当然だろう!」


「ちゃう。あれはお兄ちゃんとの約束でもある。だから、お兄ちゃんを待つんや」


「そんなこと言って、あんたは大丈夫なのか?」


「もちろんやあ。俺っち、危険なことは嫌いやもおん」

エリヤスはニヤリと口角を上げ、目を細める。

「……分かった。それともう一つ」

「なんやあ。もう寝たいんやけどお」

「俺のことはあの女には『10歳の男の子』だと思わせておいてくれ」

「……分かったわあ。まあ、ずっとその姿で居るのも大変やしなあ」

「ありがとう」

「んー」

ヤスが布団に移動する。ちゃんと布団で眠るようだと安心するルノルド。

「じゃあ、また明日。ヤス」

ヤスはもう眠っているようだった。

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