第16話 もう一人の加護を持つ少女

 ヘスティアの加護を持つと言ったシャーロット王女の豊かすぎる胸を思わず凝視していた。

 色白くその存在を主張する双丘に思わず目を奪われてしまう。シグレのすべてを包み込むような優しい谷間とはちがい、姿勢よく座っており専用の下着を身に着けており吊り上げられている彼女の谷間はどこか高貴さすら感じさせる。



「美しい…」



 まずい…流石に胸を凝視しすぎたと後悔する。好感度は最悪だろう。だけど仕方なくない?

 


 転生して二人目の巨乳なのだ。 

 


 おそるおそるシャーロット王女の顔を見ると真っ赤だったが、なぜか嬉しそうに笑ってる。



「へぇ……ヘスティア様の加護を持つというのは本当みたいね」

「うわぁぁぁぁ……」



 こちらの反応を楽しむかのようにシャーロット王女が胸を揺らすものだから俺の目もついつい追ってしまう。

 シグレのとはまたちがうきめ細かい胸はまるで芸術品の様に美しい。ロイヤルおっぱいおそるべし……



「そ、そんなに興味あるなら触ってみる?」

「え、いいの!?」

「……セイン様、落ち着いてください」



 思わず身を乗り出してしまったが、何者かに体をおさえつけられる。シグレである。彼女は不満そうに頬をふくらまして、胸を押し付けてきた。

 そりゃあ俺がほかの女の人のおっぱいににやにやしていたらいい気はしないよね……



「ごめん、シグレ……つい正気を失いかけていたよ……」

「別に他の人に心惹かれるのはいいんです……セイン様が巨乳好きなのはわかっていますから……でも、覚えていてくださいね、わたしはセイン様にかわいがってもらわらないと生きていけないんです。だから私のことも大事にしてくださいね」



 エロ小説のようなことを耳元ささやいてくる彼女にとても愛おしい感情に襲われる。

 今は話し合いに来たのだ、胸を揉みに来たのではない。



「シャーロット王女……仮にも王家の人間がなにをやっているんですか? ロイヤルおっぱいからロイヤルビッチにクラスチェンジでもするつもりですか?」

「だ、だって、はじめてだったのよ、私の胸を見て嬉しそうな顔をしてくれたのは!! つい、調子に乗ってもしょうがないでしょう」


 あっちもあっちで怒られているようだ。とりあえず仕切り直した方がよさそうだね……

 咳ばらいをして俺たちはテーブルにつくことにするのだった。




 シャーロット王女が使っているの客室に入った俺は彼女とテーブル越し向かい合っていた。もちろんシグレは隣にいる。

 相手がお姫様ということで、カチコチに緊張しているシグレを安心させるように手を握るとほほ笑んでくれた。

 そして、その様子を見てシャーロット王女がぽつりとつぶやく。



「ふぅん……信頼されているのね……」



 彼女の瞳が一瞬うらやましそうな色を宿していたのは気のせいだっただろうか? 



「きゃぁ!?」

「私もシャーロット様を信頼してますよ。だから、嫉妬しないでくださいね」

「あんたね……信用している上司のほっぺたをいきなりつまむのがあなた流の敬意の示し方なのかしら? 王族への不敬罪になるって習わなかったの?」

「皆さん、お茶を準備しましたのでどうぞ。特にセイン様は私たちに聞きたいころがたくさんあるでしょう?」

「無視するな―――!!」



 にらみつけるシャーロット王女を無視して、クロエが三人分の紅茶を注ぐ。聞きたいことか……たくさんありすぎるけど……とりあえず本題に入った方がよさそうだ。

 


「シャーロット王女、俺を試しましたね。あなたはあえて巨乳奴隷らしき人を連れてきてひどい扱いをして、俺の反応を試した。違いますか」

「ええ、そうよ。あなたが不思議な力を持っているとヒルダから聞いていた時に救世主だとはわかっていたわ。でも、ヘスティア様に選ばれた程度じゃ信頼できるかどうかなんてわからないでしょう?」



 シャーロット王女は勝気な笑みを浮かべながら紅茶に口をつける。その姿からは初対面の時のお嬢様っぽい清楚さなどかけらもなかった。

 うすうすわかっていたがこっちが彼女の本性なのだろう。



「それで、こうして話し合いに呼んでくださったということは合格ということでいいでしょうか?」

「ええ、及第点といったところかしら。クロエをこっそりと助けたのは素晴らしいと思う。だけど、王族である私に口答えしたのは減点ね。わかってると思うけど……巨乳を人間扱いしようとするのは少人数なの。あまり目立つことはしない方がいいわ。でも、あなたは途中でクロエが巨乳奴隷じゃないと気づいていたわね。なぜかしら」

「だって、クロエさんは巨乳じゃないですよね」

「ふぅん……偽物だってわかったんだ。やるじゃない」



 大きく目を見開いたシャーロット王女がぱちんと指を鳴らす。するとクロエさんがメイド服の胸元にナイフを当てると、切れた服の間から大量の靴下が落下していく。



「本当だ……おっぱいじゃない……」



 その光景に驚きの声を上げるシグレ。



 やっぱり偽乳だったか……俺は自分の目が正しかったことを確信する。違和感はあったのだ。だって……

 


「まずは普通はあれだけ大きい胸の女性はなんらかで抑えるはずなんですが、それがなかったのに違和感を覚えました。あとは、ポイズンシャークとの戦いのときですね。胸が異常なまでに上下しています。あれは本来の巨乳ではありえないし、ひっぱられると痛いはずです。なのに彼女は一切痛がるそぶりをみせなかった……そこらへんでしょうか?」



 つい目の前にあるシャーロット王女のロイヤルおっぱいを凝視しながら、語るとみながシーンとしていることに気づく。


 まずい、つい語りすぎた……と後悔してしまう。前世でもやたらと巨乳に語りすぎて友人たちにドン引かれたものだ。ましてや女の子相手に力説したらまずいにきまっていた……と思ったのだが……



「さすがヘスティア様に選ばれた救世主ね……本当に大きな胸がすきなのね……その洞察力感服するわ」

「おやおや、シャーロット様ってば、かっこつけてこそいますが、異性にエッチなめで胸を見られてうれしそうですね、ツンデレ可愛いです」

「セイン様は私の胸をたくさん見てますもんねー、それくらい当然です!!」



 顔を真っ赤にしているシャーロット王女とそれをからかうクロエ、そしてなぜか対抗心を燃やすかのようにして俺にその豊かすぎる胸を押し付けてくるシグレ。



 あれ、なんだか巨乳について語っただけなのに好感度上がってない?


 恥ずかしさをごまかすかのようにシャーロット王女が口を開く。



「あなたが本当に大きい胸を好きなのはわかったわ。だけど、あなたが好きなだけじゃだめなの。わかっているかしら」

「はい、もちろんです。俺は巨乳が好きです。だからこそ、今みたいに巨乳がその胸を隠さなければいけないという状況を変えたいと思っています。そのためにも俺はこの身をかけてかけてその常識を変えるつもりです」

「具体的なプランはあるのかしら?」



 俺はヘスティア様から直接アドバイスをもらっている。四人の加護を持つ少女を見つけろと言われている。シグレが仲間になり、シャーロット王女も仲間になってくれれば、後は二人だ。

 それに権力をもつ彼女と手を組めば巨乳の評価をあげることも楽になるはずである。



「はい、俺はヒルダ姉さんに稽古をつけてもらい強くなると同時に、ヘスティア様の助言通り加護を持つ四人の女性を見つけ力を借りたい。あなたと俺が力を合わせればきっと……」

「そう……結局ヘスティア様にしたがっているだけなのね……その程度の覚悟で世界の常識を変えられると本気で思っているのかしら」



 熱のこもった俺の言葉をシャーロット王女が冷めた態度で断ち切る。その瞳は馬鹿にするわけでなくただ失望しているだけのようで……。

 何か致命的な失敗をしてしまったのだろうか? と自分の言葉を思い返している時だった。



「それはどういう意味でしょうか?」

「あなたは自分からは何もしていないと言っているの。あなたは巨乳に関する情報を集めたことはあるかしら? ヘスティア様の名誉を回復するために何かしたことは? ヒルダが来たのも偶然でしょう? 流れに身を任せているだけの人間に変えられるほど世界の常識は甘くないわ。本気で何とかしようと思っているのかしら?」



 毅然としたシャーロット王女の言葉に俺はどう答えればよいかわからなくなる。確かに俺はどこか本気ではなかったのではないだろうか?

 それまで黙っていたシグレが立ち上がる。



「セイン様は本気です。現にヒルダ様の厳しい鍛錬に乗り越えて、あんなに恐れていたドノバン様を模擬戦で倒しました。それだけではありません。私の胸をちゃんとかわいがってくださいます。そして、誓ってくれたんです。私のような巨乳な女性が普通に生きる世界にしてくれると!! セイン様ならば変えてくれると私は信じています」


 シャーロット王女を睨みつけながらそういう彼女に普段の気弱さはない。だけど、あっちは王族で彼女は平民だ。

 さすがにまずいだろうと制止しようとして……シャーロット王女が微笑んでいるのにきづく。



「なんだ……セインはちゃんと巨乳を救っているじゃないの……」



 再びこちらを見つめるシャーロット姫。彼女は美しい所作で頭をさげる。



「あなたも神の指示に従うだけでなく少しは行動をしているのね。でも、私たちはまだ手を組むというのにはお互いをしらなすぎるわ。後日あなたにドレロス領への招待状を送るわ。そこで私がなにをやっているみせてあげる。そこで今後のことを話し合いましょう」

「ドレロス領……シャーロット王女が巨乳奴隷をこきつかっているという私有地があることで有名な地方都市です」

「な……」



 耳打ちするシグレの言葉に驚きの声をあげる。

 目の前のシャーロット王女が巨乳を奴隷のように扱っているとは思えない。現にシグレに対しても暖かい目を向けていた。ならば何か理由があるのだ。

 そして、そこで彼女がみせたいものをみたときの選択で俺と彼女の関係が決まるのだろう。



「話は以上よ、夜遅くまで付き合ってくれて感謝するわ」

「ええ……それでは失礼します」



 まだまだ聞きたいことはあったが、あとはドレロス領で話すということなのだろう。俺とシグレが部屋の外にでる。



「シャーロット様はセイン様を誤解しています。一生懸命がんばってくださっているのに……」

「シグレ、ありがとう……だけど、俺はあの人が悪い人には見えないんだよね」



 シグレに対しての優しさは本物だった気がする。彼女が負の感情を見せたのは俺がヘスティア様に従っているといった時だった。いや、違う……ヘスティア様に従っているだけで、なにもしないと思われた時だ。

 

 俺は本当にできることをすべてやっていたのだろうか?


 そんなことを考えている時だった。後ろからばたばたと音がして振り向くとクロエが無表情で追いかけてきていた。

 ちょっと怖い。



「先ほどはシャーロット姫が失礼な態度をとってしまい申し訳ありません」

「いえ、そんな……いや、試されたり失望されたり結構しんどかったな……」

「セイン様は素直ですね……」



 思わず本音を漏らすと、無表情のままクロエさんがクスリと笑う。



「これは言い訳です。ですが聞いていただきたい。あのお方はこれまでたった一人で戦い続けていたのです。王族が巨乳だということで本来ならば、処刑か追放です。ですが、あの方は自分の持つ治癒能力をもってしてその価値を示し、生き延びました。あの人は他人への頼り方を知らないのです。ですからどうか……あの人の力になってはいただけないでしょうか?」

「ええ、もちろんです。俺と彼女の目指すものが同じ限り手を組めると思っています」

「ありがとうございます」



 クロエさんは安心したのかほっと一息つく。そして、俺は気付いた。シャーロット王女は常にこちらを試しているようだった。

 でもそれは傲慢なんじゃない必死なんだったんだ。それはそうだ。俺はあくまで異世界からきていた存在な上に巨乳ではない。当事者の彼女はもっとひどい目にあってきたのだろう。



「ヒルダ姉さんにもっと稽古をつけてもらわないとな……」



 シャーロットの王女の部屋の方を見て俺は改めて誓うのだった。



☆☆


「救世主様か……信用できるといいけれど……」

 


 悪い人ではなかったと思う。だけど、まだわからない。


「でも、わかってるわね、シャーロット……他人に頼るだけじゃだめよ。自分でがんばらないと……だってヘスティア様はお母さまをすくってくれなかったもの……」


 シャーロットは自らの母譲りのおおきな胸を抱くようにして眠るのだった。






シャーロット王女ちょっとツンツンさせすぎたかな……



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