第15話 シャーロット王女との狩り

ドノバンの指揮のもとシャーロット王女を連れての狩りがはじまる。シグレはついていきたがったが、さすがに戦闘力のない彼女は屋敷だ。



「シャーロット王女ご安心ください。このように私がいればどのような魔物が来ても問題はありません。今夜はごちそうですよ!!」



 暴れ牛という魔物の攻撃をドノバンが受け止めて、貧乳魔法使いの魔法で倒しおえると、どや顔でシャーロット王女に声をかける。



「おお、なんとも頼もしいことでしょう。さすがは武官と呼ばれるギャンガー家のご子息ですね。兵士の方々も屈強だと聞いています。頼りにしてますよ」



 動きやすい服装に着替え、まるで無垢な少女のように微笑むシャーロット王女にドノバンだけでなく、兵士たちもだらしない笑みをうかべながらどよめく。ちなみに兵士といっても女性も多い。この世界での戦闘は男性が守り、貧乳女性が魔法で仕留めるのがメジャーだからね。

 彼女の笑みはその美しい顔立ちときれいな所作から、男女ともに魅了させる力をもっているようだ。俺は警戒してるけど。



「まあ、確かにうちの兵士たちは優秀なんだよね」



 ダンジョンや魔物が出る森などを任されている辺境伯であるギャンガー家は特に力を重視する。だからこそ、セインは肩身がせまく後継者争いからは外されていたのだ。

 

 それはともかくだ……


 楽しそうにおしゃべりしているドノバン達から少し離れてつらそうに一人重そうな荷物を持たされている巨乳な少女が目に入った。

 明らかに大変そうなのに、ドノバンはもちろん、うちの兵士たちもまるで視界に入っていないかのように声をかけないのはその胸のせいだろう。



「女性の身でその荷物は重いでしょう? お手伝いしますよ」

「……私に声をかけた?」



 彼女に声をかけると驚いたように大きく目を見開く。



「セイン様でしたか……。なるほど、将を射んとする者はまず馬を射よってやつですか。ですが、巨乳奴隷に優しくしてもシャーロット様のハートは射貫けませんよ? 奴隷は奴隷です。私はあの人のただの所有物なのですから……」

「そんなんじゃないから……君が心配になったんだよ」

「じゃあ、私目当て……? こんなにも大きい胸なのに、異性を魅了してしまう自分の美しさがこわい……」

「自己肯定むっちゃ高いね!! あれ、俺の中の奴隷のイメージが崩れているんだけど!?」



 なんか癖が強いな、この人!!

 思ったより深刻ではなさそうな巨乳奴隷さんに驚きの声をあげながらも荷物を預かる。

 でも、なぜかはわからないが、彼女のおっぱいを見てもあまり興奮しないんだよね。

 というかこのカバン何が入っているかはわからないが、ずしりと重い。



「……こんなに荷物を持っているに誰も声をかけないなんて……」



 これはうちの兵士が冷たいわけではないのだろう。彼らが困っているメイドを助けるところは屋敷でも何度も見た頃がある。

 彼女が巨乳だから助けないのだ。これがこの世界の普通なのだ。



「私のために怒ってくださるのですか……お優しいですね。ですが、ストレス解消の方法はありますのでご安心を……」

「え?」



 俺がきょとんとしていると、巨乳奴隷さんは落ちていたどんぐりを拾うとそのまま、さっと投げる。

 それはきれいな弧をえがいてシャーロット姫の後頭部にあたり、そのままドレスの隙間から内部に入っていった。



「きゃうん!!」

「どうしました、シャーロット王女」

「ああ、もうしわけありません、ちょっとこけそうになってしまいまして……」



 悲鳴を上げるシャーロット王女にドノバンが声をかけている。そして、振り返った彼女が一瞬こちらを鋭い目でにらんできた気がする。

 なんというか思ったよりも気安い関係なのか……?


 そんなふうに思っていると風が吹いて革袋の中身が見えて思わず間の抜けた声をあげてしまう。



「え?」



 革袋に入っていたもの。それは大きな石だったからだ。

 もちろん魔物に投げれば効果はあるだろうが、わざわざ狩りに持っていくようなものではない。ただの嫌がらせだろう。

 巨乳だからと言ってこんな扱いをしていいのか? つらそうにしていたシグレと目の前の彼女が重なって思わず頭に血が上ってしまう。



「シャーロット王女!! この石はどういうことですか? こんなものを彼女に持たせる理由は一体なんなのですか?」

「……セイン様? なにを怒ってらっしゃるのですか? 私の巨乳奴隷に何をもたせても勝手では? それにこれは大切な石なのですよ」



 シャーロット王女が困ったように首をかしげると、ドノバンがわが意をいたりとばかりに口をはさんでくる。



「そうだぞ!! セイン。そんな醜く大きい胸の女がどうなろうが、どうでもいいだろう。シャーロット王女に失礼だろうが!! 」

「セイン様……シャーロット王女様の前です……今のは謝った方がいいですよ。この方は巨乳嫌いで有名ですから……」



 兵士まで俺は悪いと訴えてくる状況に、歯がゆいものを感じる。世間は巨乳に冷たいし、目の前のシャーロット王女が巨乳奴隷制度を作ったことはあまりにも有名だ。冷静に考えれば動くべきではなかったのだろう。

 だけど俺は……



「何か言いたそうですね、セインさん。まさか、巨乳な女性を守ろうとした……とかではありませんよね?」



 ぞくりと背筋が凍るような気がした。シャーロット王女の瞳には何やらどろりとしたものを感じる。

 いったいなんだ……?


 そんなことを考えている前の方がやたらと騒がしくなってきた。


「お逃げください!! 前方からポイズンヴァイパーがやってきています」

「なっ!? ポイズンヴァイパーだって? ダンジョンにしか現れないはずの魔物がなぜ!?」



 森の奥から逃げてきた兵士たちを追いかけて、全長1メートルくらいの巨大な毒蛇が五匹ほど現れて兵士たちの間で動揺が走る。それも無理はないだろう『ポイズンヴァイパー』の通称は『魔術師殺し』。機敏な動きは守りに特化した兵士の攻撃をかいくぐり、その強力な麻痺毒を持つ牙は露出の高い女性魔法使いの天敵なのである。

 そして、そんな魔物が二匹も巨乳奴隷の襲い掛かろうとしているのを見て……



「させない!!」



 俺はアクセラレーションを使って、彼女と『ポイズンヴァイパー』たちに割り込み、剣をふるう。

 殺気を感じた『ポイズンヴァイパー』が軌道をかえようとするが、もう遅い。



「ヒルダ姉の剣の方がもっと読みづらいんだよ!!」



 俺の一撃は『ポイズンヴァイパー』をとらえてその胴体を真っ二つにする。もう一体もと思った俺は予想外の光景に思わず目を見開いた。




「あぶな……えええええー!?!」

「この状態でも私を守ろうとするとは……合格です」



 いつの間にか巨乳奴隷さんがもう一体の『ポイズンヴァイパー』眼前にきていたのだ。そして、そのまま襲い掛かろうとした『ポイズンヴァイパー』をその豊かな胸元にから取り出したナイフで一刀両断した。



 強い……それにあれは……



 俺が彼女のやたらと上下に動く胸に違和感を覚えて声をかけようとしたときだった。



「すげえ、セイン様の剣が魔物を捉えてる!!」

「やっぱり、ドノバン様よりセイン様のほうが……」

「はっ、蛇ごとき俺様が倒してやるよ!! 見ていてください、シャーロット王女!!」



 ドノバンが威勢のいい言葉を発して奥からさらにやってきたもう一匹の『ポイズンヴァイパー』に切りかかる。だが、その一撃は空を切り、逆にその腕をかまれると、どんどんその顔色が真っ青になっていく。



「ドノバン様!! 屋敷で治療しないとお命が……」 

「シャーロット王女をお守りしろ!!」



 兵士たちも慌ててたたかうがその剣はなかなかとらえることはできない。



「さすがに見殺しにはできない!!」

「セインさん、 も力を貸しましょう」



 シャーロット王女がこちらに向けてなぜかほほ笑む。

 すると兵士たちの方へと向かい俺と巨乳奴隷?さんで向かおうするといきなりポイズンヴァイパーの動きが鈍くなっていく。

 

 これはまさか……ヘスティア様の加護では……?


 違和感を覚えながらも残った『ポイズンヴァイパー』を倒す。


「はやく、ドノバン様を運ぶ……あれ、毒が治ってる?」

「だれか治療薬を持っていたのか? でも、なんで持ってるんだ……?」



 背後がいろいろと騒がしくなっている。ヘラの加護では状態異常もできなかったはずだ。

 だったら答えは一つしかない。俺は試されていたのだろう。



「セインさんお強いんですね、すごいです。ヒルダから聞いた通りです」

「あなたの もなかなかですね。シャーロット王女」

「そりゃあ、私は優秀ですからね、えっへん」



 俺は先ほどまでとは違いどこか好戦的な笑みを浮かべるシャーロット王女と、そのほっぺたをツンツンとしている虚乳奴隷さんを見つめ返す。



「今夜私のいる客室に来て、もしも、巨乳があなたのそばにいるのならば連れてきてもいいわ」

「夜のお誘いとは……王女さまは積極的だね」



 口調の変わったシャーロット王女は俺の軽口ににこりとも笑わず、踵を返す。彼女が何を考えているかはわからないけれど、ここが俺のターニングポイントになる。

 なぜだかそれがわかったのだった。



 夜になり皆が寝静まったころを見計らってシグレと共にシャーロット姫のいる客室へと向かう。



「いいのか、シグレ。まだ、シャーロット王女が味方とは限らないんだよ」

「ですが、もしも、味方ならば私という巨乳をそばに置いていることは信用を得るのに大きな証拠になると思います。私にも役にたたせてください」

「ありがとう……シグレ」


 そういう彼女は今はサラシを外し、メイド服越しに豊かな胸がその存在を主張している。

 これだけの覚悟を持っている彼女にこれ以上の言葉は失礼だろう。緊張しているであろう彼女の手を握り、目の前の扉をノックする。



「入っていいわよ」

「失礼しま……え?」



 扉を開けて広がる光景に俺は思わず間の抜けた声をあげてしまった。なぜならばそこにいた少し露出の高いネグリジェのまとったシャーロット谷間はシグレに勝るとも劣らない巨乳だったからだ。



「改めて自己紹介をするわね。私はシャーロット=ホーリースター。ヘスティア様の加護を持つ人間よ」

「うふふ、どうです、シャーロット様のロイヤルおっぱいは大きくて素敵でしょう」

「クロエ!! 人の胸に変な愛称をつけるな!!」



 クロエと呼ばれた虚乳奴隷?さんのせいで一瞬流れたシリアスな雰囲気がきえたんだけど……






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