第14話 変化

 俺がドノバンを倒してから屋敷の環境がだいぶ変わっていった。



「セイン様おはようございます」

「「おはようございます」」

「あ、ああ……みんなお仕事頑張ってね」



 すれ違うとメイドたちが掃除などをやめてまで挨拶してくれるようになったのだ。これまではこっちが挨拶してもろくに反応してくれなかったのに……

 隣を歩いていたシグレが誇らしげにほほ笑む。



「うふふ、みんなセイン様のすばらしさに気づいてくれたんですね、素敵です」

「いやぁ……でも、こんなふうに露骨に反応が変わると複雑だなぁ……」

「仕方ないですよ。皆さんは後継者になると思われていたドノバン様に逆らうことはできなかったんですから」



 当たり前だけど、この世界には労働法なんてない。使用人にとって、主が絶対なのだ。だから、次期辺境伯確定だと思われていたドノバンに嫌われたら路頭に迷ってしまう。そのため、俺に対してもひどいあんな風だったのだろう。

 そんな状況でも俺に尽くしてくれたシグレを思って見つめると胸が熱くなっていく。



「セイン様、どうされました?」

「いやぁ、こういうふうに頑張っていけば周囲の反応も変わっていくってわかったからさ。俺がもっと頑張れば、シグレがサラシをつけなくても堂々と歩けるようになる世界になるんじゃないかなって思ってさ」

「……セイン様!! ありがとうございます!!」

「うわぁ!?」



 感極まったシグレに抱き着きついてくる。封印されたおっぱいに腕をはさまれて幸せと、改めて巨乳を守ろうと誓っているとざわざわと二人のメイドが騒いでいるのがわかる。

 いったいどうしたのだろうとシグレから体を離して、使用人たちにはなしかける。



「何やら騒がしいが、一体どうしたのかな?」

「それは……」



 二人ともこちらを見た後に言葉に言いよどむ。それはどうこたえようか迷っているのがありありとわかる。ドノバン兄さんにでも口止めをされているのだろう。



 そりゃあ、模擬戦に一回勝っただけだしね……



 挨拶くらいならばともかく、命令に背けば完全に俺につくということになる。そこまでの忠誠心は無理か……。何か手を考えようと頭を悩ませた時だった。

 Bカップくらいのメイドさんが緊張した様子で口を開く。



「それが、お手紙が届いてきて、今から一週間後に、第二王女のシャーロット様が狩りを遊びに来るそうなんです」

「ちょっと、ローズ? そんなことをしたらドノバン様に……」


 もう一人のメイドが止めるがローズはこちらを見つめ力強く言った。



「いいじゃないの。セイン様も後継者の一人よ。だいたい、粗暴な上に、威張り散らかしてばかりなドノバン様が辺境伯の器だとは思えないわ……すれちがいざまにおしりを触って来るし、足が臭いのよ。しかも、それをしってて靴下放り投げてくるの。何度魔法で切り刻んでやろうと思ったことか!!」

「うわぁ……ストレスたまってるね……」

「あ……」



 ローズの言葉に苦笑していると、ついぶちまけすぎたと気づいたのかその顔が真っ赤になり、もう一人のメイドさんは頭を抱えている。

 どうやら彼女は思ったことを口走ってしまう癖があるようだ。



「こほん、それでですね、シャーロット王女の婚約者が決まっていないことをいいことにドノバン様はご自分をアピールしようとしているんですよ、足が臭いのに……」

「あー、それで……」



 自分よりも強い俺が邪魔になったんだろうね。シャーロット王女が来るタイミングが近づいたら、何らかの命令で俺を屋敷からはなすつもりなんだろう。

 だけど、俺としても王族に覚えてもらったほうが今後色々とやりやすくなるかもしれないし、ドノバンの思い通りにするつもりはない。



「ありがとう、ローズから聞いたことは内緒にしておくから安心して。後さ、甘いものは好きかな? こんど街にいったときに何か買って来るからみんなで食べてよ」

「わー、ありがとうございます。セイン様お優しいです。すてきです!!」

「はいはい、そろそろいくよ。では、失礼しましたぁ」



 調子のよいことを言うローズと引きづっていくメイドに苦笑して見送りながらも俺は思う。


 この前の模擬戦での勝利は確かに意味があったんだ。彼女が俺に教えてくれたのはその力を見せたからだ。

 確かな感触を感じながらそういえばシグレが会話に混じってこなかったとふりむいて驚く。



「シグレ、顔が真っ青だよ」

「セイン様……シャーロット王女は、巨乳奴隷制度を推進しているお人なんです……」

「なんだよ、それ……」



 『巨乳奴隷制度』ちう悪意しか感じない言葉に俺は驚きの声をあげるのだった。




 自室に戻った俺は顔を真っ青にしているシグレが落ち着くようにと一緒にお茶を飲みながら 『巨乳奴隷制度』について調べ怒りを感じる。



「Cカップ以上の人間は強制的に職業をはく奪されて、奴隷に身分を落とされ、辺境の地に送られるだって……」

「はい、他の領地の人間であってもシャーロット王女の息のかかった貴族の領地に連れていかれるそうです」

「なんで、そんなことが認められるんだ!!」

「この世界ではヘラ教の教えに反しない限りは各領地によって法律を決めることができるんです」


 この国ではそれぞれの領地で税金を決められるように、ある程度の法律を決めることができるのだ。前の世界で県ごとに条例が決めることができるようなものである。

 だけどさ……



「そんなの間違っている!!」



 どうりでバストサイズを隠していたシグレ以外は巨乳はおろか微巨乳にすら出会わなかったわけだ。

 別にハーレムが欲しいとかそういうんじゃない。巨乳な女性を迫害しているシャーロット王女とやらへの怒りが止まらない。

 何よりも先ほどから震えているシグレのような女の子もいるだろう。そう思うと許せないと思う。



「シグレ……万が一があったらまずい。しばらく、暇を出すよ。お金は払うから安心して」

「セイン様……」



 震える彼女を安心させるように抱きしめると、ぎゅーっと抱きしめ返してくれて

徐々にだが震えがおさまっていく。



 よかった……少しは気が楽になるといいんだけど……



 信頼されていることが嬉しく思いつつ、完全に震えが収まり体を離すと彼女と目があい、その瞳には強い意志が宿っているのにきづく。



「セイン様、私も屋敷に滞在させてください。あなたが頑張ってくださっているのに私だけ守られてはいられません」

「でも……」

「それに事情を知っている人間がいた方がセイン様も動きやすくなると思います。違いますか?」

「シグレ……わかった。だけど、危なくなったらすぐ逃げるんだよ」



 彼女の忠誠心に感動しているとシグレが顔を真っ赤にしていった。



「それに……私はもうセイン様がいない夜なんて考えられませんから……それともセイン様はもう私の体(胸)に飽きてしまわれましたか?」

「誤解されるようなことを言わないで!! 単に抱き合って寝てるだけでしょ」



 いや、まあ俺としても彼女のおっぱい枕がないと落ち着くなくなってきているんだけどね……

 そんなことを考えていると息子が元気になってくるので深呼吸をして落ち着かせようとした時だった。



「セイン様……そのですね……シャーロット王女に捕まる前に私の胸を捕まえていただけませんか?」


 いつの間にサラシをとったらやら、顔を真っ赤にして、その大きな胸を突き出すシグレ。

 メイド服のボタンがはじけそうにぱつんぱつんな光景に思わず生唾を飲んでしまう。


「また、エッチな本読んだね。このエロメイド!!

「だって、さっきのセイン様の言葉がうれしかったんですもん!! それに異性のさそいかたなんてわからないmmですもん!!」



 扉に鍵がかかっていることを確認して大きくつかみやすい胸を捕らえるのだった。





 そして、一週間後、やたらと装飾の凝った馬車がやって来るのが目に入る。隣にはこちらを慣れない礼服に身を包み不快そうに睨んでくるドノバンと共にシャーロット姫を待っていた。


 妨害工作として、魔物狩りが俺の指名できたけど師匠と協力して一瞬で終わらせたのがそんなに不快かな?


 ドノバン兄さんににこりと笑うと、彼は舌打ちをして俺たちの目の前で止まった馬車に視線をうつした。

 扉が開かれると、美しいドレスに身を包んだ銀髪の女性と、そのお付きらしき女性がおりてくる。



「これはこれはシャーロット様、お待ちしておりました」

「な……」



 ドノバンが媚びた声をあげるがそれどころではなかった。俺が絶句したのはシャーロット姫と呼ばれた銀色の髪の女性が美しかったから……ではない。

 その隣にひかえる女性のせいだ。ぼろきれのような服ごしにもわかる胸元がとても盛り上がっていたからだ。

 まさか、この子は巨乳奴隷なのか……?



「はじめまして、ドノバンさん、セインさんですね。あなたがたの御父上からお話は聞いておりますよ。本日は急なお願いにもかかわらず歓迎してくださってありがとうございます」



 シャーロット王女は見るものがほれぼれするような笑みを浮かべそういったが、とてもではないがその美しい笑顔のような心の持ち主には見えなかった。




シャーロット王女は何を考えているのか……?

明日をお楽しみに!!





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