第10話 力の使いかた

 周りを見回すとそこは楽園だった。巨乳な女の子たちがスクール水着できゃっきゃっうふふと言いながら水浴びをしているのだ。

 ああ、やっぱり巨乳だよ。ここはおっぱいパラダイスだ。これこそが俺の求めていた異世界転生だ……



「あれ? ヘスティア様、どうしたんです? よかったらヘスティア様も泳いでくださいよ」

「……!!」



 気配を感じて振り向くと見知った顔がいたので声をかけるが彼女はなぜか必死な表情で訴えている。まるでそっちにはいくなとばかりにジェスチャーしてくる。



 いったいどうしたんですか? と話を聞こうとして……




「ぶべぇぇ!!」



 口の中に大量の液体をぶち込まれた俺は現実に戻った。あれ、今のって死ぬ間際の妄想の世界だった? それとも、また異世界転生しそうになっちゃった?



「お、ようやくおきましたね、口が汚れていますよ。お姉ちゃんが拭いてあげましょう」



 俺の口にぶちこんだポーションか何かの空瓶を捨てて、ハンカチで口を拭いてくれるヒルダ姉さん。だけどさ……



「ヒルダ姉さんのせいで死にかけたんですけどねぇぇぇえ!! 自分と同じくらいの大きさの石を背負わせてランニングさせてからの不意打ちは反則ですよ!!」

「え? ですが、戦場では不意打ちは当たり前ですよ?」

「あれ、倫理観バグってます? それともここって修羅の国でした?」



 キョトンとした顔で首をかしげられるとなんか俺が間違っている気持ちになって来る。



「まあ、そんな細かいことはおいておきましょう」

「俺死にかけたんですけど……」

「もう、あんまり口答えするとめっですよ!!」

「ぐはぁ!?」



 可愛らしい掛け声とは裏腹に急所を的確に突かれて呼吸が困難になる。くっそこの世界の特訓レベルがたかすぎる……だけど、巨乳の為だ。シグレのためにも俺は強くならねばならないのだ。



「うふふ、やる気がたっぷりなようでお姉ちゃん嬉しいです。ところでセイン様は特別な力を持っていますね」

「え……?」



 世間話をするような態度で突然聞かれて固まってしまう。



「かくそうとしてるのかもしれませんが私にはバレバレです。時おり身体能力が上がっていますし、傷が癒えていうこともあります。お姉ちゃんは弟であるあなたをしっかりと見てますからね。いやでも気づきます」

「その……この力はですね……」



 この世界では男は魔法を使えないのだ。神聖術はヘスティア様の力なので厳密には魔法ではないのだが、怪しまれるだろう。そして、彼女は一般的には邪悪な存在と言われているのだ。



「言いたくないのならば構いませんよ。歴史上あなたのような特殊な力を持っていた男性もいたとききます。それに力はしょせん力です。何をなすべきはか持ち主次第です。私はあなたの姉として、正しくその力を使えるように導くだけです」

「ヒルダ姉さん……」



 優しく微笑む彼女に俺はほっと一息つく。いや、本当のお姉さんじゃないんだけどね。だけど、姉とかいたらこんなふうなのかななんて思ってしまった。

 いや、マジで姉でも何でもないんだけどね(笑



「では、さっそくです。その力を使いこなす練習をしてみましょう。おそらく原理は魔法と同じでしょう。使えば使うほど、制御できるようになり、力も上がるはずです。まずは軽くでいいです。常に全身にその力を使ってみてください」

「はい、わかりました」



 指示通りに全身にまんべんなくアクセラレーションを使う。心なしか頭が痛くなってきたが、集中することによってしばらくは維持できそうだ。



「よくできました。では、そのまま素振りをしましょうか? 魔力が尽きそうになったらポーションがありますからご安心を」

「え? 剣振るの? この状態で?」



 例えるならば全力でランニングしながらギターをひけっていっているようなもんだよ?

 そんな俺に何を当たり前のことをとばかりに首をかしげるヒルダ姉さん。



「どうしました。強くなりたいんでしょう?」



 くっそ、やはり修羅の国の住人すぎる!!

 だけど、これくらいできないとヘスティア様の力をみせることはできないのだろう。シグレの笑顔と豊かな胸が俺の脳裏に浮かんだ。



「うおおおおお!!」

「ふふ、さすが私の弟です。それでは素振り100本いってみましょう!! あと踏み込みが甘いですよ!!」

「うおお???」



 目に見えぬ速度で木剣で足をたたかれ思わず悲鳴をあげる。そうして俺は指導を受けながら素振りを続けるのだった。



「うう……疲れた……」



 素振りを終えた俺が師匠の元へ向かうと何かが焦げている匂いがしてきた。見てみるとたき火で何かの肉が焼かれているようだ。

 ちょっと離れたところに血の池が見えるのがだいぶえぐい。



「お疲れ様です。ちょうどご飯ができたところです。お食べなさい。お姉ちゃん普段は料理とかしないけどがんばってみました」



 ごはんといって出されているのは、ほとんど炭にちかいお肉である。いや、これは……といいかけて、ヒルダの指にばんそうこうが張られているがわかる。


 

 出来はどうあれ慣れないのに俺のためにつくってくれたんだよね……



「ありがとう。うう……」



 にがっ!! にっが!! なにこれ? 肉を食べているのにじゃりじゃりするんだけど!? しかも調味料をつかっていないのか、一切味がしない。

 素材の味を大事にってやつかな? 大事にしすぎだよぉぉぉ。



「うふふ、ちょうど、獣がとれてよかったですね。やはり、携帯食料は健康に悪いですから」



 あれ、ヒルダ姉さんが美味しそうに食べているので再度口にするがやはり味がしない。この人は普段どんな食生活をしているのだろうか?

 そう思った時だった。



「あ、いたぁ!!」

「ステータスアップがとけていますよ。常にといったでしょう?」



 え、確かに常にとはいったけど、飯時までもなの?



「その……訓練をしてくれとはいいましたがもう少し手心というか……」

「?? 戦場で敵が手心を加えてくれるのですか?」



 キョトンとした顔をされて俺は言葉につまり……自分の頬を両手で叩いて、再度アクセラレーションを使用する。



「ヒルダ姉さんのおっしゃるとおりです。失礼しました。厳しく指導してください」

「うふふ、あなたならばそう言ってくれると思いました。では、食事のあとは私と模擬戦をしましょうね」

「ひぇ!?」



 そうして地獄のような鍛錬が続いていくのだった。だけど、俺は頑張れる。なぜならば確実に神聖力の使い方がわかってきて強くなっていくのがわかるのと、もう一つ理由がある。




★★




「セインさま……今日も訓練大変そうでしたね。お疲れだと思いますのでマッサージをさせていただきますね」

「ああ、いつもありがと……ってそれは?」

「その……今日は特別なものを用意してみました。ひんやりしていてとても気持ちいいらしいですよ」



 俺の部屋にやってきたシグレが瓶から取り出したのは粘質系の液体である。



「これはスライムゼリーっといって、体に塗ってマッサージをすると疲労が回復するらしいんです」



 オイルマッサージみたいなものだろう。シグレは訓練で疲れた俺を毎晩この手あの手でいたわってくれるのである。

 これが俺の頑張れるもう一つの理由だ。



「ありがとう、じゃあ、お願いできるかな? ってシグレ?」

「その……セインさまはこのお召し物がお好きだと思ったので……いかがでしょうか?」



 顔を赤らめながらメイド服を脱いでいくと、布の擦れる音ともにあらわれたのは例のスク水みたいな服である。

 ぱっつんぱっつんの胸元と、可愛らしいシグレのはにかむ笑顔に俺の下半身が熱くなってしまう。


「いや……その……最高です」

「えへへ、では失礼しますね」


 オイルマッサージ屋さんじゃなくてメンズエステだった!! ドキドキしながらうつぶせになると彼女の腕が俺の体をほぐしてくれると同時に柔らかい部分が押し付けられる。



「その……あたってるよ」

「うふふ、当ててるんです。セインさまが私の胸で興奮してくれるのがほんとーに嬉しいんです」



 そう言って笑う彼女の笑顔を見れば明日も頑張ろうという気になるのだった。シグレが揉まれて凝った部分がほぐされていく感覚と、柔らかい胸の感触に俺はそのまま眠りにつくのだった。



次回から話が進みます。


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