第24話 二振りの刀








  俺とナギ姐はDランクにも関わらず、気を利かせてくれたハローワーク(ギルド)の受付のお姉さんが、Bランククラスの依頼をFランク(フリー)に書き換えてくれたことで回ってきた、ダンジョンに住み着いた魔物の討伐任務。


 事前情報によれば、我がエステライヒ正規軍のような統率力、武力等はないものの、昔ながらの山賊のように群れを成している以上、危険であることには変わりない。


 ダンジョンに潜る前から装備のメンテナンスに余念なく、銃器もそうだが、久々に軍刀もばらして研いでいるって訳だ。


「カスガ、あたしの形見をよく手入れしてくれてありがとう」


 ナギ姐の言う形見の意味通り、俺の軍刀(脇差サイズ)とナギ姐の大太刀も元々は同じものであり、彼女の戦死と共に折れてしまってから打刀仕様に磨き直し、すっかりと小さくなってしまったが、刻まれた銘の位置は全く変わることなく、この世界にて再会を果たした過去と未来のコラボレーション。


 元々の刀身は、まるで南北朝時代の太刀がタイムスリップしてきたかのように長く、少なくとも四尺(121.2cm)を越えており、切っ先部分が両刃の小烏丸造りと言う特殊仕様だ。


 ナギ姐のために作刀を依頼し、婚約指輪の代わりに物騒なものを渡す変態というものが、前世においては居たんだよね。


「ああ、折れたとはいえ、あんたの魂の宿った大事な軍刀だ。イナ中佐より託された、戦女神の加護はなかなかのものだったぜ?」


「愛するダーリンからのプレゼントだからな、大切に扱ってくれるお前に託してくれて正解だな。ああ、ところでさ、あたしが女神?……冗談だろ?」


「ああ、幽霊だったわ」


「「HAHAHA!」」


 ナギ姐と冗談を言い合いながら、お互いに刀を研いでは煌めく刀身を眺め、笑みを浮かべていれば……ハローワーク(ギルド)に集まる人々から距離を置かれているのは何故だろう?


「あのー、元魔王でヒモのサラリーシーフ様、ノッポでグラマーな鬼神の魔女の白魔導師様、ギルドの入り口で刀剣研ぐのをやめてもらえますか?」


「あ? 悪い悪い、もうすぐ終わるから待っててくれよ? よし、一丁上がり」


「おう、受付のお姉さん、装備のメンテナンスを怠るアホな冒険者はさ、ここにはいないだろ?」


「そうですね、場所を考えろよ、このアホ。終わったらさっさとどいてくださいね? あんたらが怖くて誰も近寄らないものですから、こっちはとっても暇なんですよ?」


 どうやら全ての元凶は、俺とナギ姐らしい。


 カウンターで頬杖をつけながら話しかける受付のお姉さんは、呆れた表情のまま俺たちに向かって強く言葉をぶつけるメンタルは、むしろ頼もしいぐらいだ。


 一癖二癖もある訳ありの冒険者を相手にする以上、こうでなくてはね?


 さて、丁度軍刀のメンテナンスも終わったことだし、これから受付業務が忙しくなるぜ?───。







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