【第三章】元魔王のヒモ、ついに働き始める
第23話 リハビリ
◇
実質Sランク以上のクエストであった、Fランク(フリー)クエストである『反魔王派魔獣戦線』残党の討伐任務明けからおおよそ一週間経ったあたりか。
ヒナコのケアは完了し、久々に再会した愛するウィラとナギ姐の表情は明るく、ウィラはなんら深掘りして聞いてくることなく、余裕の笑みを浮かべている。
一方のナギ姐は、髪を金色に染め、ネイルアートのように角をデコり、今回はシックな漆黒でとってもおしゃれだ。
きっといい具合に気持ちを切り替えられたのであろう。
ヒナコも問題ない、前世で言ったら最後に見せた笑顔と同じく、いつでも死を受け入れられるぐらいに澄んだ瞳だ……ああ、やっぱり重症だ、この先はウィラに丸投げだね?
さて、久々に四人で集まったものの、今度は役割を交代だ。
ナギ姐のメンタルケアならウィラ、ヒナコのメンタルケアなら俺といったように、それぞれの役割を全うし、今度は実戦的な感覚を取り戻す上での最適なペア、あるいはバディとして再編成。
ガチガチの戦闘職である俺(シーフ)とナギ姐(白魔導師)、バリバリの支援職であるウィラ(吟遊詩人)とヒナコ(剣士)のそれぞれでペアを組み直し、各々リハビリがてらにDランクのクエストをこなして、昇格試験までの実績を稼ぐって訳だ。
職業適性なんて知ったこっちゃないが、元々の得意分野でダンジョンを攻略していこうという訳だ。
タイトルとの矛盾?……画面の向こう側の皆様、それは神の見えざる手って奴よ? HAHAHA!
久々にハローワーク(ギルド)へと出頭すれば、受付のお姉さんからためを息一つ、なんとも微妙そうな表情で歓迎されるのも慣れたよ?
とりあえず前述した事情もあるけれど、Dランクの依頼に対し、四人で組んだらあまりにも過剰戦力なので、ペアに別れてクエスト受注する旨を伝えれば、どういう訳なのか……Cランクの依頼ばかり斡旋される件について。
「あなたたちならペアでも過剰戦力ですから、一つ上のランクをご紹介させていただきます」
とのことだが、細かいことは気にしないでおこう。
浮遊のユニークスキルを持つウィラとヒナコは、採取系の依頼、あるいは支援職の必要な他のパーティーとの共闘等で引っ張り凧だ。
飛べないただの豚よろしく、戦闘職(シーフと白魔導師)の俺とナギ姐は、前衛の必要なパーティーからの需要に応えて欲しいとのことだが……とりあえず、戦闘的な方面でのリハビリを優先したいので、今回はパス。
俺とナギ姐の二人でこなせそうな、ダンジョンに住み着いた魔物の討伐任務を……え、それBランクだって?……特例で今回はオッケイ?……うーむ、なんか腑に落ちないけれど、たまたまBランク以上が出払っているので、Fランク(フリー)の依頼に書き換えて対応してくれるとのこと。
いや、その場合はさ、実績として反映されないんじゃないか?……え、ケースによっては、反映されるようになった?
おいおい、最近のハローワーク(ギルド)っていうのは、なかなか話の通じる奴になったじゃねえか? HAHAHA!
それじゃナギ姐、とっととリハビリを終わらせようぜ?───。
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