第28話 王都防衛作戦会議
「サリー俺と一緒に来てくれ」
真剣な眼差しの団長さんに、私はここ一番の決心をする。
「わかりました。お供いたします」
一緒に会議室へ入る。
「失礼します。第三騎士団長、ルーク・デライトであります。軍議に遅れ申し訳ありません」
「生きて帰ったかルーク。第三騎士団から離れて、実家に帰ったと聞いたぞ」
「ザビル宰相どの、それはちと厳しいいい方じゃの。ルークは軍務大臣であるわしが許可して休暇を取らせたのよ。上司のわしの許可があるのだから言い方に気を付けて欲しいのう」
「デライト軍務卿、あなたは、自分の子どもに甘すぎる」
「まあ、そう言うでないわい。こうして戻って来たからには、ルーク第三騎士団長を信じてやってくれい。して、ルーク首尾はどうじゃった」
「はっ! オークはすべて殲滅して帰還いたしました」
「「なんと!」」
「「本当か!」」
「はい。こちらにいるサリー・グレアム嬢の考案した作戦と、作り出した魔道具により、瞬く間に殲滅し、半日でここまで帰還いたしました。帰還した魔道具もサリー・グレアム嬢の作ったものでございます。そのため、軍議にサリー嬢をお連れしました。お許しください」
水風船爆弾や小麦粉粉塵爆発は魔道具じゃないけど、この世界じゃ魔法みたいなものだからスルーしよう。
「「おおお!」」
「サリー・グレアムと申します。よろしくお願いします」
「おお、そちが、ルークがよく言う街角聖女殿か。ここ1年ほどで、回復薬が行き渡るようになったのは、そちの成果だと聞いておるぞ」
「ありがとうございます。普段は回復薬を作っておりますが、今回は一計を案じ、オーク討伐に必要な物を作りそろえてルーク団長様の所に馳せ参じました。計画通り事が進み、オークを討伐し、ここまで半日で帰りました」
「ふむ。ならば、今回のゴブリンの大群をどうさばけばよいか聞かせてもらおうか。聖女学院の落第生殿」
白髭の宰相が、ひげをいじりながら、ニヤニヤ笑いで言ってくる。
とてもいやらしい人。私の作戦を話させて頂こうじゃないの!
「まず、1万のゴブリン集団の実態について話します。ラビオリ領からここまでの間に、ゴブリンの集団に何度も遭遇しました。その際に統率している個体はいませんでした。つまり、集団としての組織ができていませんでした。ゴブリンは集団になると脅威度が増します。これは、集団の組織力によるものです。それが、今回のゴブリンにはありません。憶測ですが、ゴブリンは、ラビオリ領に出現したオークから逃げて来ただけと思われます」
「なるほど、サリー嬢の話は実感があるのう。その実態からすれば、1万のゴブリンといえど、恐れるに足りないという事のようじゃな。そこまでは分かった、それでどうするのじゃな?」
「はい、軍務卿閣下。それで、第三騎士団の機動力を活用したらと考えます。騎馬軍団である第三騎士団の重装騎兵ならば、たやすく蹴散らせると考えます。そこに、私が作り、ラビリスでオークを倒した魔道具も同時に利用すれば、殲滅できると愚考いたします」
「なるほど、確かに第三騎士団でなければできない任務となるの」
「その通りです。ゴブリンの習性と第三騎士団の特徴を生かしての作戦ですから、第三騎士団が最適です」
「他の騎士団はどう動くのかね」
「まずは、外壁を守る事に専念していただきたいです。特に第二騎士団は魔法部隊と聞きます。外壁の防衛に適していると思います。第一騎士団には、第三騎士団の打ちもらしの排除や、失敗した場合の外壁での防衛をお願いします。また、第三騎士団が、ほぼゴブリンを壊滅させた場合は、残りのゴブリンの処理をお手伝い願いたいです」
「ふむ。なるほど、なかなか考えられた策だな。先ほどは失礼した。サリー嬢、許されよ。では、国王陛下、ご決断をお願いします」
「では、世の考えを伝える。サリー嬢の作戦ならば、短期間にゴブリンを駆逐できる可能性が高いであろう。第三騎士団が外壁内に残って防衛しても特性は生かせぬし、消耗戦になることもあり得る。消耗戦になれば、人口が多い王都では食料不足に落ち入り自滅するやもしれぬ。今回は短期決戦が最善であろう。よって、サリー嬢の作戦を決行すべきだと世は考える」
「「仰せのままに」」
「では、出撃せよ第三騎士団!」
「はっ! これより第三騎士団は王都防衛に出撃いたします」
会議室を出た私たちは、第三騎士団の天幕に向かった。
「サリーよく言ってくれた。これで、第三騎士団が存分に働ける。ありがとう」
「団長さんから聞いた話が生きました。それに、今日ゴブリンと直接戦って、予想以上に騎馬軍団との相性がいいと思いましたので提案しました」
「では、明朝に作戦を開始するための準備を開始しよう。司令部に中隊長以上を集めてあるから、具体的な話をして欲しい」
「わかりました。第三騎士団の力になれるならばがんばりましょう」
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