第7話


仕事も終えそうで今日、入ってきた女性の新人も案の定に残されておりいきなり社畜の洗礼を受けていたけど本人は気にしないで仕事をしていた。意外に耐えていて驚いているけどあそこまで何事もないように出来るのは少しおかしいとも感じ取れていた。






このブラック企業はそこら辺のブラック企業よりも厳しいと言われており実際にこの事を話すと他の人が真顔で他の会社に転職したほうがオススメだよと言われてしまうほどにヤバいブラック企業であり普通なら弱音の一つぐらいは吐いても当たり前なのに彼女は何一つ文句を言わずに作業をしていた。






それはまるでここ以上の地獄を体験してきたのかと言うばかりに涼しい表情をして仕事をしていた。ついでに同僚はいつもの事ながらノックダウンしておりまた同僚の帰りが遅くなるだろうなと哀れな目で見ていた。いつもながら学習の能力はないのかなと思いもしたが疲れてそこまで頭が回らないだろうと解釈をした。






本当に厳しいからもう少しだけ休みが欲しい、ここは平気で労働基準法など守っていないのでバレたら大変だけどバレないと言うかおそらく裏で何かの取引がされているから見ていないふりをしているのだろう。






ここに務めてなんとなく理解していた、社会の闇というやつは・・・今はそこは置いといてそんなヤバ過ぎるブラック企業に入っても何一つ文句または悲鳴を出さないあの佐藤紫ちゃんがおかしいと言うのだ。






何かあるなと感じて同僚の言う通りに下手に放置していると危険かもしれないと感じた俺は先に仕事を終えても真っ直ぐに異世界に向かう事はせずにお得意のトイレで時間を潰して彼女、佐藤紫と共に一緒に帰るように自然と装った。そうして対面して改めて自己紹介をするように話を始めた。






「君は確か、佐藤紫さんでしたね。こんなヤバい会社に入って大変でしょう、早めに他の会社に転職する方が良いですよ。社員の俺が言うのもなんですけど、ついでに俺は里見竜輝と言うけど覚えてもらわなくても構いませんから」






「いいえ、ご親切にありがとうございます。私を心配して下さったのですね、でも大丈夫なので気にしないで仕事に集中して下さい。こんな私と付き合ったらその人が可愛そうなので」






かなり自己肯定感が低い子だな、余程に嫌なことがあったのか、それとも・・・いや、この可能性は当たってほしくないなと考えながら一緒に歩き出していた。先輩もこちらの方なんですかと聞かれて俺はまあ、そうだねと答えた。






実際は少しばかり遠回りになってしまうが概ねは帰る道なので嘘はついていないと思っていると案の定に何か見た目が悪そうな若いグループたちが前に現れて隣の佐藤紫ちゃんは怯えている様子を見せたのでやはりかと思いで俺は見た目が悪そうなグループに声をかけた。






「済みませんが俺とこの子になにかご用件でしょうか?仕事場の後輩が怯えているので代わりに俺が話し相手になりますけどどのようなご用件なのでしょうか」






そう言うと悪そうな若いグループがその化け物女を少しばかり使おうとしただけですよ、オッサンと言われた。おい!俺はまだギリギリ二十代なのにオッサンは無いだろう、オッサンは。せめて三十代後半になってから言い出せと思いながらもこの子をどうするつもりだと聞いても詳しい内容は教えてくれずに笑っているだけであった。






反対に佐藤紫ちゃんは泣きそうにしながら体か震えているのが見えたので俺はこれは最悪、戦う事になりそうだなと感じながら改めて悪そうな若いグループに言葉を出したのである。






「あのー、俺たちはこれから用事がありますのでこの辺りでお暇させて頂きたいのですが駄目でしょうか」






すると一人の男が近づいてきて駄目に決まっているだろうがオッサンよと言いながら拳をこちらに向けて放ってきた。そしてその拳を反射で受け止めた上に軽く反撃をしてしまった。






ヤバい!つい、昔の癖で反撃をしてしまったと失敗したと思っていると一人では勝てないことが理解したのか他の男たちも一斉に襲い掛かってきたのである。おいおい、もうすぐ大人になろうとしている者たちがこんな十人ほどの集団で一人に襲い掛かっるのは駄目でしょう。






仕方がないから説教も含めた反撃もしますかと俺は次からは次へと襲い掛かってくる者たちを避けては反撃をして一斉攻撃には避けて同士討ちをさせてそんな事をしているうちにあっと言う間に壊滅してしまった。






あのー、威張っていた割には弱過ぎなのですけどこれだったら数年前に戦った極道の方が遥かに強いですよ・・・まあ、相手が極道だから当たり前の話だけど、そうだとしても弱過ぎ、そんなにこんな良い子をいじめて楽しいか、俺は飽きれながらその悪そうな若いグループに対して去る前に伝えるのだった。






「良いか、もしこの子にまた変なことをしたら今回以上の事になるから肝に免じとけ。どうしてもいじめをするなら悪人の俺にするだな。この子に狙っていじめをするよりは手加減して迎え撃ってあげるからさ」






そう伝え終えるとその場から立ち去り佐藤紫ちゃんに大丈夫だったかと尋ねると泣きながら俺に対して感謝の言葉を出してくれた。私のためにそこまでしてくれた事に心から感謝をいたしますと泣き声みたいな声で伝えてきた。






いやいや、感謝をされるのは嬉しいけど今のままで他の人に見られたら俺が泣かしたように見えるから頼むから泣き止んでくれとお願いをするのだった。しばらくしてようやく落ち着きを取り戻して話し合いができるようになった。






俺は気になったことを答えてくれるかと尋ねると出来る範囲ならと返事をくれたので早速質問をしてみることにした。それから俺からの質問に佐藤紫ちゃんはゆっくりと真面目に答えてくれたのだった。






そしてその内容はやはりかと思う内容だった上に一部では信じられないと思える内容もあった。いじめは先程も見たのでそれは理解していたが実の親たちから遠ざけられている事に驚きを隠せないでいた。






何でだ!こんな性格が良い、娘が困っているのに助けてあげないのだと怒りを出すと佐藤紫ちゃんはならその答えを見せてあげますと言って顔全体を隠している包帯を取り俺はすぐに佐藤紫ちゃんにそうか辛かったのだなと見ているこちらが泣きそうになる姿だった。






包帯の下に現れた顔は酷い火傷のあとで女性は顔が大切と言われているのにこの残酷な仕打ち、そしてそれを励ますどころかむしろ追い打ちをする他の者たち、この事を今、知ってよかった。もし先程に知っていたらあいつ等を殺してしまいそうになっていただろう。






佐藤紫ちゃん、君は本当に頑張ったそして優しい子だ。普通ならもっと荒れた性格になっても世の中を恨み悪人になってもおかしくなかったのにこの子はそうならずに頑張って生きている。なんと凄い子だ、こんな俺とは比べ物にならないぐらいの子だと思い知った。






そうして良く頑張ったと言いながら頭を優しく撫でてあげていた。本当ならこの事は親がするべきだけどこの子の親は既にこの子を見捨てている状態でしてくれるとは思えなかった。ならせめてと思いでしてあげるのだった。






すると恥ずかしいですから辞めてください先輩と言いながらもつけていた包帯は水を吸って濡れていた。本当に泣きたかったのに誰にも言わずに一人でと思いに答えるために俺は彼女に一つの提案を持ちかけたのである。






「もし、君がよろしければで良いのだけど俺と一緒に住まないか。話を聞いてみたけど親からは嫌われており誰も味方がいないならこんな俺でも構わないなら来ても良いよ。勿論、変態なことをしたらすぐに警察に突き出しても構わないから、どう?無論、俺から言い出したことだから家賃などは俺がいつも通りに支払いをするからそこは気にしないで」






俺は偽りはない真顔の顔をして彼女にそう話すと彼女は光熱費ぐらい私も一緒に払いますからと言って言葉に甘えさせても宜しいですかと聞かれたので勿論だと答えた。






すると佐藤紫ちゃんは頭を下げてからそれではこんなものですけどお世話になりますと挨拶をしてきたのでこちらを頭を下げてこちらこそよろしくお願いね、紫ちゃんと返事をした。






そうなると引っ越しの手伝いをしないといけなくなったなと伝えると紫ちゃんはその・・・荷物はあんまり無いですから気にしないで下さいと言われてしまった。やめてくれ、余計に悲しくなってきたからもうこの子に何をしてあげればと考えていた時に思い出した。






そうだ、この子も異世界に招待をしてあげれば良いではないか。それにもしかしたら異世界なら酷い火傷すら完治させる程のものがあるかもしれない、そう考えると俺はなんて運がある男だと改めてそう感じた。






俺は必ず、この子が生まれてきて良かったと思わせるほどにさせて見せる。産まれて来なければ良かったなんて親に言われる・・・そして自分で思うのは俺が最後でいいから。俺は決意を固めるのだった。








本日の成果


佐藤紫の事を詳しく理解した!


襲って来た悪そうな若いグループを撃破した!


佐藤紫と同棲することになった!

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