第15話  剣を作りましょう(1)

 ロアンと光の神の会話は、三賢人の耳にも届いていた。


 彼女は、剣の完成まで銀の森の出禁を申し渡され、即刻デュール谷へ帰されることになった。


「くっそったれの光の神!!」


 ロアンは、光の神が自分の力を分けてくれなかったことに腹を立てていた。


「神の力を欲しがるとは……不心得な……」


「いずれにしても、そなたは、もう出禁なのだから。その間に、その無駄に有り余っている力で、魔法剣を作って来るのじゃ」


「今しがた受け取った、神からの伝言です」


 三賢人の中で唯一の女性の大巫女グラン・リーアのセレシアが言った。銀色の髪を持つ彼女は、神の子孫の直系に近い血筋だ。

 セレシアは、ロアンの前に出てくると、


「魔法鍛冶は、これより後はあなたのお家、フレイドル家に伝承されるものになるでしょう。あなたがそのもといになるのです。

 何年かかろうと構いません。何事も投げ出さない不屈の精神こそ、我らの神が人間を愛する所以なのです」


 この大巫女グラン・リーアは、光の神にそっくりな容貌で、ロアンに話してきた。

 光の神に言われると、ムカついてしょうがなかったが、大巫女の言葉はすんなりとロアンの耳に入って来た。


「それに、お約束しましたね?」


「えっと……?」


 腹が立っていたので、光の神と何を話したかなど覚えていない。


「魔法剣が出来た暁には、何でも願いを叶えると……」


 ロアンは、優しい顔でそう言われたことを思い出して赤くなってしまった。


「頑張りましょう。ロアン・フレイドル。私たちは、いつまでも待っていますよ」


 ロアンは、完全に洗脳されて、うんうんと頷きながら、セレシアと別れた。



 ▲▽▲



 デュール谷、はぐれ谷の鍛冶小屋__


 ロアンは、風の精霊エーレに頼んで、飛ばしてもらいその日の内に鍛冶小屋まで帰ってきた。

 そして、一番にベリルに言った。


「普通の剣の作り方を教えてよ」


「やっと、そこに気が付いたのか?」


 ベリルに笑われた。

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