物語が終わって

 話が終わった後。


 絵里はしがみついて来た幼い女の子を抱っこしつつ、子供達に囲まれていた。


 周りの注目を浴びている事に改めて気づき、恥ずかしさと盛大にやってしまった感に顔色を紅く青くする絵里は、そっと溜息をつく。


(よかったあ……出来はともかく、何とかなったみたい……)


 と、ミニタオルで額に滲む汗を拭いた絵里が安堵できたのはつかの間だった。キラキラと目を輝かせた子供達の一斉のおねだりが始まったのだ。


「違うお話、してえ~!」

「今度はわんちゃんのお話ー!」

「異世界でカッコよく冒険する僕の話を作ってください!」

「きゃあ! きゃあ!」


 子供達は思い思いに自分の聴きたい話をせがみ、大人達は拍手をした後に、ニコニコと期待の目で絵里を見ている。


(む、無理無理、ぎりぎりセーフっぽいここで終わらせてぇ! ……あ)


 子供達に向かってニコニコふわふわと笑いながらも、たら~り、と冷や汗を流す絵里に、先程鳴きだしそうになっていた男の子が顔いっぱいの笑みを浮かべて近づいて来た。


「お話面白かった! リーダーもカツ夫もみんなもカッコいい!」

「そっかあ、よかった! じゃあじゃあ、これでもう少しだけ……パパさんのお話ができるまで我慢できそ?」

「うんっ! 我慢できる!」

「そっか。お話、楽しみだね~」

「ねえねえ、次は僕がお姉さんにお話聞かせてあげるね!」

「嬉しいな! 楽しみに待ってるね、ありがとう」


 男の子の笑顔にほっと一安心した絵里は、キョロキョロと視線を彷徨わせ、そして母親に抱かれている女の子、心を見て絵里は掌を握りしめた。


「ごめんね、あの子とお話したいの。ちょっと待っててくれる?」


 絵里は側にいた子供達に謝りながら立ち上がり、ゆっくりと歩いていく。


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