第1話 ~俺だけじゃない~

俺は何故か知らない世界に居る。なんでこんなに冷静なのかって?きっとラノベの読みすぎだろう。むしろ異世界というものに来れたこと自体、

嬉しく感じてしまう。現世の俺はきっと今死んでいるのかもしれない。

だけど俺は俗世に戻らないといけない。何故って

俺にはやり残したことがあるからだ。人間は

何か心残りな事があると、心がモヤモヤした

気持ちになるだろう。それは気持ち悪かったはずだろう。吐きそうになるだろう。俺が異世界に

いる理由もなく、ソースは俺。

「なにをボケっとしている。早く仕度をするんだ。」

俺は見知らぬ少女と出会った。クリーム・バンズ、だっけ。よく分からない。

そいつが現世へ戻る方法を知っているという、

なにも不思議な話だ。

「あの、そのバンズの地?はここからどのぐらいかかるんです?」

「バンリの地だな。それは私も知らん。なんてたって人類にとって未知の世界だからな。」

「は?知らないって、じゃあどうして!」

俺は意味の分からない回答に対して食い気味で言ってしまう。

「そりゃあ、お前が現世に戻りたいと言うからだろう。」

だからって、なんで...

「昔、爺ちゃんに聞いた事があってな。よくこの世界には、見たことも無い人間達がここへと彷徨ってくるらしいんだ。流石に私もその話は信じられなかったよ。でもな、その時この辺ではあまり

見ない顔の人がいて聞いてみたら、事故にあったはずがいきなりこの地面に座ってたって。本当に不思議な話だ。」

「俺以外にも....」

どうやら他の人もここへ転生、と言っていいのか

分からないが来ていたみたいだな。

「それと、話してもらったのがバンリの地だった。ここに彷徨ってきたやつらはそこを目指して行くって。私も行ったことも無いし、見たこともない。でも、見つけられたらワクワクするだろ!」

本当にそんなこと起こり得るのか。それは誰にも分からない。爺ちゃんが創った話なのか。はたまたこいつの作り話なのか、どれも可能性は未知数だ。

「何処にあるのか分からないのかが、冒険の醍醐味なのかもしれない。」

少女は目を輝かせて言う。でも何故こいつが

この地へ行きたがっているのだろうか。

本当に俺だけじゃないのか。

「それに、私も―――――――」


ガチャ!


「ん?」

ドアノブだろうか。まさに何かが開く音がした。

「まさかッ..!」

少女は途端と戦闘態勢に入った。手に何も持っていないが。なんだ、何故構える。もしかしてこの世界は普通に誰か家襲ってきたりするの?えー怖、怖いんですけど。

さっきと変わって目の輝きは消えて赤く染まっていた。

「えと、もしかして悪いやつ?」

「知らない!けど多分そうだッ.....」

彼女はこちらに顔を向けること無く、死に物狂いで言葉をかける。

「これ、俺逃げた方がいいやつか?」

知らない世界に彷徨って早々、死のピンチを

迎えてしまっている今。いや、ここは格好つける

チャンスか。よくある俺が助けて結婚する流れか。こいつ顔も悪くないし、うん。

「どけ」

「っ?!お前なにをする!」

任せとけ、この数々のラノベを読んできた俺を何だと思っている。

「見てな、お嬢さん。俺が助けてやるから//」

フッ、勝ったな、俺の勝ちだ。すまない。

ライトニングアメイジィィィング!


ガチャ。


「っ..て。え?」

あれ.....金髪。でよく見える谷間.....


「..あーあはは。あ、どもー。」


えっと、どちら様ですか。目出し帽で黒パーカーをぶっ倒して俺が彼女と結婚するプランは。

「えっとー。なんかすみません。」


ガチャ。


現世より恥をかいた人って―――――

俺だけじゃないよな?








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俗世を目指して旅に出る。 油性ペン @Yusenon

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