寝取りチャラ男に転生した俺、主人公の親友ポジで毎日忙しい。そんな俺達を見る視線が生温かったり、敵意剥き出しだったりするのは何故?
30000系高
第1話
とあるエロゲーの中で『寝取りクソ野郎』という汚名を賜ったチャラ男。
主人公の
これ見た時ソフトを投げ捨てて、床に叩きつけられた円盤を某奇妙な冒険の五部の主人公のように何度も踏みつけてやった。
今でもあの結末は胸糞悪くて何回か夢に出た。こいつの顔は二度と見たくない。
そう思っていた……そう思っていたはずなんだ。
「俺なんだよなぁ……」
信じられるか? ある日その寝取りクソ野郎こと柳瀬義雄(5歳)になっていただなんて。
ショックで何日間か寝込んだよ。
「よっす! ヨッシー! 朝から元気ないけど、どうしたんだ?」
「その呼び方やめてくれよ、ショウ」
今は学校。自分の席で頭を抱えていると、声をかけてくる人物の姿があった。
清廉潔白、いかにも主人公のような精悍な顔立ちの男子生徒。
爽やかな笑みを浮かべながら俺の肩を叩くのは、清木将吾————主人公である。
……うん、意味分からないと思うよね? 簡単な事だ。俺、超頑張った。
無茶苦茶前から必死で主人公を探して三千里、とは行かずとも町の中を目を皿にして探し回った。それらしき人影を発見して、近づくと二人いた。
ポニーテールがよく似合うメインヒロインの
ゲーム内でメインヒロインはよく分かっていない主人公に将来を約束させるシーンがあるんだが、それが泣ける。でも見れなかった……俺が来た時にはもう終わってた。でもとても仲良さそうで、本当に感動した。
……俺はそんな二人の仲を引き裂こうとする寝取りクソ野郎になってしまったんだがな。
取り敢えず俺はその日のうちに二人に話しかけた。最初は警戒していた二人だったけど、何度も必死に話しかけているうちに仲良くなれた。
で、その日から何度も一緒に遊ぶようになり、現在に至る。ただユキは両親の仕事の都合で町から引っ越すことになった。二人がわんわんと泣き喚きながら抱き合う姿を後方友達面で腕組みしていたら互いの両親二人に生温かい目で見られたのは恥ずかしかった。
とっても恥ずかしかった。
高校二年生となった今でもショウとは交友関係があって、学校が終わった後や休日に時間を作って時々遊んだりしている。
彼女……というより軽そうでも容姿が整っているから寄ってはくるが、正直ショウと遊んでる方が楽しい。お互いに気心を知れてるからかもしれない。
「なぁ、ショウ」
「ノートなら見せないぜ? 昨日、俺の家で宿題やらなかっただろ? 自分だけゲームばっかしてたのを忘れたとは言わせんぞ」
「うっ……」
ショウからの正論に唸るしかなかった。だってゲーム楽しいし、勉強楽しくないし。
寝取りクソ野郎はチャラ男のくせに頭の出来は悪くないので、テストだとかそういうのは問題ない。
だが、授業態度や宿題などの提出物をよく忘れるせいで成績はまぁまぁで留まっている。
いやまぁまぁなだけありがたい。担任の女性教師様々だ。
周りは俺がショウの前で体を小さくしているのを見て、クスクスと笑っている。馬鹿にしたような笑いじゃなく、また始まったとでも言わんばかりに優しい目だ。
余計に傷つくんだが。
「ヨッシー、お前は頭悪くないんだからやれば出来るだろ? 宿題するのだって、親が誘ってる時に一緒にやればいいだけの話だ」
「でも、どうしてもクリアしたいところがあって……」
「それ、俺のゲームデータだから。勝手にクリアしてもらっちゃ困る」
「はい、すみません……」
また教室内で笑い声が聞こえてきた。他人事だと思って……!
「分かったよ……じゃあ今日もお前の家に行っていいか? 今日こそはちゃんと勉強するからさ」
「……ハァ、仕方ないな。 いいぜ、付き合ってやるよ」
掌を合わせて頼み込むと、ショウは困ったように笑いながらも了承してくれた。やっぱり持つべきものは友だ。
「あ、あの……私もいいかな?」
と、ショウと話が纏まりそうだったところへおずおずと小さく手を挙げながら入ってきたのは、小動物を彷彿とさせるメガネに三つ編みの女子生徒。
彼女の視線はショウと俺との間で行き来しており、何故か泣きそうに見えた。
「え、でも夕月さんって勉強出来るんじゃ……もごっ!?」
と、言いかけたショウの口を咄嗟に塞ぐ。
突然口を押さえられて混乱しているショウをよそに、俺はチャラ男らしい軽薄な笑みを浮かべた。
「いいよ、参加しなよ……ショウも喜ぶよ」
「はぅ……!」
何故か文学少女の彼女は俺の言葉に顔を真っ赤にし、本を抱きしめるように胸を押さえた。
不整脈か!?という勘違いはしない。
おそらくショウのことを好きと見抜かれているのを恥じらっているのだろう。
俺の目は節穴ではないからな!
「彼女……いや、奥さん……!」
「え?」
「いえ、何でもないです……あの、そのやっぱり大丈夫です! ちょっと尊いが過ぎるので……じゃなくて! 今日用事あるの思い出しました失礼しまァす!!!!」
文学少女は目の色を変え、教室を出て行ってしまった。クラスメイト達は何やら分かっている様子だが、俺にもショウにも分からなかった。
「なんだったんだ?」
「さぁ?」
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