第13話 閑話は平常平穏4

 装甲の予備については別の問題として、塗料が乾くまでにはそこそこ時間がかかるから、大体この間に飯を食う。塗料がしっかり乾いたら組み立てだ。

 今回は改良や武装の交換はしないから、メンテナンスの為にばらしたのと逆の順番で組み立てるだけ。もちろんそうやって組み立てる時にも各パーツの状態を確認して、見落とした破損や歪みが無いか確認する。

 1人でやってるからな。チェックは何度してもいい。錆止め塗料が乾くまでは時間がかかるし、時間を置いてからもう一度チェックすると見落としを見つけやすくなる。


「よし、本体完成」


 今回は幸いそういう事は無かったので、汚れが落ちて綺麗になった相棒を前に達成感に浸る。そして別の部屋に運んでから電源を入れてコントローラーを手に取り、軽く操作して動作確認だ。

 ここで取り付け方をミスって、例えば関節の可動部を逆方向にしてるとかだと大変な事になる。特に俺の相棒は「トイ・ダンジョン」っていう閉鎖空間で動き回れるように、細い足が複数付いてるからな。

 履帯とだいぶ悩んだが、「トイ・ダンジョン」の中に毒沼になってる場所があるのを知ってこっちにした。最悪天井に張り付く事も出来るようにしておいて良かったよ。天井や壁に逃げられるっていうのは、閉鎖空間だとかなり大きかった。


「あ、これか。何かこの辺すぐ剝げるなと思ったら」


 なお干渉しない筈の場所と足の一部に、毎回のメンテナンスで同じように塗料が剥げている部分があったんだが、前のバランス調節でいじった部分だった。特定の動きをするとこすれるらしい。

 試運転を止めて電源を落とし、作業場となるビニールシートの上に戻して問題の足を外し、微調節する。ほんの数ミリの調節で変わってくるからな。もちろん、他の場所はいじっていないから、調節でぶつからないようにしないといけないんだが。

 微調節して試運転、また微調節、試運転、微調節、というのを5回ぐらい繰り返し、結局その両隣の足も調節して何とかこすらないようにした。探索中は、ある動きはしないように、なんて気を付けてられないからな。


「というか、必要だからその動きをするんだし、毎回剥げるほどそういう風に動かしてるって事は、それだけ重要な動きだし……」


 そのバランスを変えた訳だから、部屋に湧いてる高難易度の「トイ・ダンジョン」じゃなくて、「トイ・ダンジョン公園」にある低難易度の方で慣らしをした方がいいな。

 元々明日は日曜日で、いつもの「トイ・ダンジョン公園」は同じ学校の奴らがたくさんやってくる。近場は全部そうだから、少し離れた「トイ・ダンジョン公園」まで足を延ばしている訳だ。

 ついでだし、ドローンの装甲を買い足すのも一緒にするか? でも流石にあの店は遠いんだよな。定休日は火曜日だけど、日曜日も普通の客がそこそこいるし。


「自転車があればあの辺まで半時間なんだけどな」


 ま、言っても仕方ない。何故ならカツアゲーズを叩き潰した結果、転校する事になる可能性もあるからな。その後の評判とかその他諸々で、そうなる可能性も視野に入れてるから。

 で、本体の試運転が終わったところで追加武装を付け直す。そして試運転。特にさっき微調節したところを。……追加武装とぶつかったりはしないな。よし。ここで干渉するようなら更に微調節しないといけなかったから。

 組み立てが終わったドローンを別の部屋に戻し、メンテナンスに使った道具を掃除、手入れして工具箱に収める。そしてビニールシートを畳みながら細かいごみを集め、小さい箒を使って綺麗にし、収納。最後に部屋全体を掃除して完了だ。


「ん、風呂湧いたな」


 ここまでやる頃にはいい時間だから、頭とか腰の後ろとか、自分じゃ見えないところの汚れを落とすのも兼ねて早めに風呂に入る。服を脱ぐ時もちょっと気を付けないとな。何故かいい感じにナットが引っかかってて、脱いだ拍子に転がって変なところに転がり込んだ事があったから。

 風呂から上がってから夕飯。その頃には大家が帰ってくる。ごみはもう袋にまとめてごみ箱に突っ込んだし、壊れて交換したパーツも分別している。それでもそこそこの量になるからな。

 特に装甲。今回は交換したが、割と交換頻度が高い上に嵩張るから。一応金属ごみだし。……やっぱり金属じゃなくて、ポリカーボネイトにした方がいいんだろうか。あれならカメラを覆ってもいいし。


「ただ、金属製にもまして高いからな……」


 結局財布と相談になるんだよな。

 まぁ今の稼ぎが全部換金できるなら、それぐらいは全く問題なかったりするんだが、まだ学生で未成年だし。はー、子供ってめんどくせぇなー。

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