第12話 閑話は平常平穏3

 俺の相棒は俺が組み立てたドローンだ。とはいえ流石に全部の部品をバラすのは月に1回。流石に時間かかるからな。週1のメンテナンスは大きな部品を外して、全体の様子を確認するだけだ。

 ただ使用用途が閉鎖空間での戦闘、それも、少なくとも色は土だが硬さは岩でできた場所だ。何ならもっと硬い可能性があるから、まず足回りが消耗する。無理にでも回避しないといけない攻撃が来たら、動くしかないからな。

 次に消耗が激しいのが装甲。……いや、うん。装甲の消耗が激しいのは、壊れちゃいけない部分を守れたって事だから、ちゃんと役目は果たせているし、俺もそこで受けるように動かせてるって事だ。


「ちゃんと貯金もあるとはいえ、ここでじわっとあのカツアゲーズが効いてくるんだよなぁ……」


 宝石の売却は、未成年だと1週間に1個だけだ。ただし、ポーションやトイプチの卵は別枠となる。まぁ卵は買い取ってもらえないんだけどな。ポーションがなぁ。臨時収入としていいんだよなぁ。

 それを半月に1本持って行く大家。……うん。焦るな。焦って仕留めそこなう、事はまぁもうないだろうけど、しっかり潰しきっておかないと執念で復活してくるタイプだ、あれは。

 メンテナンス、そう今はメンテナンスの最中。集中だ、集中。ここで傷を見逃したら、最悪「トイ・ダンジョン」の中でドローン大破だぞ。


「……よし」


 まぁ貯金には余裕があるから大丈夫だ。そろそろ残りの学費ぐらいなら先行一括支払いできそうなぐらいある。もちろんドローン用の必要経費にしてる貯金は別枠だし、生活費とかもまた別枠にしてる。大丈夫。

 で。一通り全体をチェックして汚れを落としたら、剥げている部分と交換するパーツをメモする。ここで一旦休憩して体を動かして、何なら水分を取る。集中してて室内脱水、とか笑えないからな。

 ただここで戻ってきたら、まずドローン本体を一旦横にどけて、取り外していた追加武装の類を入れた箱も避ける。んで、ビニールシートを折りたたむようにして土埃何かの汚れを一ヵ所に集め、ざっと掃除。


「錆止め塗料とかグリースに埃が混ざったら地獄だからな……」


 ちなみに俺は部屋に結界札張ってるからそういう意味でも安全が確保された状態でやっているが、金属に対する塗料って大体の場合人間の体には悪い物だから、塗装作業はしっかり換気が出来る部屋か屋外で、ゴーグルマスク手袋長袖長ズボンと対策をしてやるようにな!

 という訳で、ビニールシートの上に戻したドローン本体と追加武装の塗料が剥げていたところを塗り直す。ムラになってもいけないが無駄に分厚くてもダメだ。加減が難しい。

 が。これも慣れの問題だ。この週1のメンテナンスと月1の徹底メンテナンスは高校に入ってからずっと続けている。問題はない。……と、油断すると斑になったり変なところに塗料がついたりするから、慎重に。


「んん゛……っ! っあー……とりあえず水飲むか」


 で、乾くのを待つ間は休憩。主に外に出してない「トイ・ダンジョン」クリア報酬の確認とか、予備パーツの数の確認とか、普通に体から力を抜いてぼーっとしたりとか。っげ、装甲の予備があんまない。

 といっても、今どきドローンのパーツを売ってる店なんて限られる。もちろん普通の、撮影とかに使うドローンのパーツはちゃんと取り扱ってる。ただ装甲は完全に「トイ・ダンジョン」の探索用だからな……。

 他の部分、風よけとか落下した衝撃から守るとか、そういうのを流用しても出来なくはないんだが、やっぱり強度と軽さの両立が出来るのは「トイ・ダンジョン」探索用として作られた装甲なんだよなぁ……。


「つっても、あの店遠いんだよな……1日かければ行けるけど、装甲って数を買うとそこそこ嵩張るし重いから、自転車無しだとちょっときついんだよな……通販とか郵送とか対応してないし……」


 自転車の買い直しは、夏毟達学校カツアゲ組を潰してから、と決めている。

 脅し半分、遊び半分でまた壊されたら嫌だからな。

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