第10話 閑話は平常平穏1
学生の週末と言えば、休みだ。自由だ。自分の好きな事が出来る日だ。なお宿題やテスト勉強その他必要な義務を果たしている前提とする。
ちなみに俺は今の高校を受験する条件として1人暮らしが出来る事というのを自分で設定し、自炊能力も成績もバイトの実績も作っていたので抜かりはない。まぁちょっと諸事情でバイトは半年で辞めたが。
けどまぁ高校入学の時点で即行「トイ・ダンジョン」……1m四方の範囲に収まるその土地の土の色をした、ゴツゴツした岩が盛り上がったその真ん中にぽっかりと穴の開いたいかにもな洞窟、ただしその最大内径は50㎝という小さいサイズの不思議存在から、宝石を手に入れる事ができる。これは実質バイトをしているようなもんだ。
「さーて、今日はちょっと気合を入れて掃除すっかー!」
ただまぁその辺ちゃんとしているから好きに出来る。という訳で、今日は部屋の掃除だ。まずは気合を入れる事。その為に、腹から声を出す! 少々ご近所迷惑だが怒られたら謝ろう!
……んな訳がない。掃除って言うのは普段からやっといて年末にちょっと気合を入れてやるもんだ。省エネで効率的だろうが。そもそも汚さないように生活すればいいだけだし。
まぁつまりこの腹から声を出すという動作は全く不要な物なのだが、この1階に全ての部屋の扉が並び、内部は2階建ての上下に分かれているという構造をしているマンション(?)のご近所はいない。何故なら大家の評判が最悪だからな。
「……出かけたな、良し」
どうやらあの大家、「掃除」と「日曜大工」が大嫌いらしい。だが日曜大工の方はともかく、掃除は生活していくうえで必須の行動だ。自分が掃除しなくて汚部屋で暮らす分には自己責任だが、大家であっても他人の家に口出しは出来ない。
それでも最初に1度か2度怒鳴りこまれたが、「じゃあ汚い部屋で暮らして病気になったら治療費全額負担してくれるんですか?」と不思議そうな顔で問い返してやったら、それ以降は掃除の気配を感じた途端に逃げるようになった。扱いが楽でいい。
そして実際に何をするかというと、大量のごみが出る作業だな。大規模な掃除というのも間違いじゃない。
「はーぁ。あんなに毎日寄こせ寄こせと言うポーションだって、お前がいなきゃ手に入らないのになぁ? 頭の中がどうなってるのかさっぱりだ」
「トイ・ダンジョン」の内径は最大50㎝、最小10㎝。内部は別の空間に繋がっているのか、それとも空間が歪んで広さが変わっているのか、その内径に応じた深さがある。
俺は大体20~30㎝の「トイ・ダンジョン」の攻略を最も得意としているが、基本ルールは一緒だ。すなわち、内径が大きい程内部の空間が広く、敵が多く、最深部のお宝の価値が上がる。
まぁ高難易度の「トイ・ダンジョン」になれば、脇道の先にお宝があったりするからな。広い範囲を探索するって意味だと、トイプチなら飯、そして俺の相棒であるドローンだと、バッテリーが問題になる。
そう。今日はドローンのメンテの日だ。毎日できる限り整備はしているが、やっぱり1週間に1度はちゃんとばらして掃除してパーツの傷みを見て、何なら交換したり修理したり、配線を繋ぎ直したりした方がいいからな。
まぁそんな事をすると、当然もう捨てた方がいいパーツとか、細かいところに詰まってた汚れとか、それを拭きとった布とかティッシュとかが大量に出る訳で。まぁそうやって大量のごみを週1で出していたら変な顔をされたから、掃除の言い訳をするようになったんだが。
思ったより言い訳の効果が高くて拍子抜けだったんだよな。……大家として掃除が嫌いっていうのは割と致命的じゃないか? とも思うが、まぁそれは俺の知った事ではない。俺は大家じゃないし、マンションを経営する予定も無いからな。
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