第17話 森の調査
島民たちが恐れている謎の存在。
森にいるというそいつの姿を拝むため、俺は単独で潜入を試みる。
念のため、付与効果でいろいろと強化したアイテムを持参しているため、最悪の場合はそれを使って逃げ延びよう。
ただ、あまり事を荒立てるようなマネはしたくない。
村にはうちのティノを含め、小さな子どももいる。
俺ひとりでどうにかなるのであれば多少の無茶もできるけど、今はそういうわけにもいかないからな。あくまでも相手の様子見という段階でとどめておかなくては。
あと、個人的にこの森には興味があった。
今後あの小屋を強化していくのにちょうどいい素材が転がっていそうだしね。
辺りを注意深く見回しながら、少しずつ森の奥へと入っていく。念のため、島民が作成したというマップを持っているが、正確に把握されているわけではないらしいので目安程度となっている。
それでも、何もないよりはずっといい。
「それにしても……いい森だな」
外から見た印象だと、もっとこうジメッとしているというか、日光を遮るようにして木々が生えているので薄暗いんじゃないかって思っていた。しかし、あちこちに木漏れ日が差し込んでいて、暗さは一切感じない。
それと、森の一部は道として整備されており、進みやすかった。
これは例の存在が居着く前に島民が手を加えたらしく、狩りなどで使用していたとのこと。
「狩りか……新しい食料入手方法としてはありかもしれないけどな……」
すべては例の存在次第――と、その時、視線の先で何かが動いた。ハッキリと姿を見たわけじゃないが、かなり大きかったぞ。
「ついに出たか……?」
気づかれないよう小声で呟き、接近を試みる。
この場合、相手の嗅覚が優れていて臭いから場所を特定されるなんてことになったらおしまいだが、さすがにそのようなことは――
「誰だ、貴様は」
……ないと思っていたが、こういう嫌な予感だけは当たるんだよなぁ。
俺は咄嗟にその場から飛び退く。
それからすぐに声の主を確認すると……予想外すぎる者がいた。
「俺がそんなに珍しいか、人間」
話していたかなり大きな狐だった。
どうやら、こいつが島民たちの間で話題になっている存在らしい。
「きょ、今日はあんたに話があってきた」
見つかってしまっては黙って戻ることもできない。
なんとか、この場を穏便に済ませたいところだ。
※次回より不定期投稿です。
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