第16話 作戦会議

 エミリーお嬢様との作戦会議はなかなかうまくいかなかった。

 というのも、森に居座っているその存在について情報があまりにも少なかった。そのため、どうやって対応すればいいのかという根本的な部分から躓いていたのだ。


 ただ、この話し合いで謎の存在に関する今現在分かっている情報がいくつか出てきた。

 もっとも重要な情報としては、そいつが動物よりのモンスターであるという点。しかし、それがなんの動物をベースにしているのかは分からないという。


 さらに驚かされるのは会話が可能だということ。

 言葉を話すとなると、かなり知能は高い。

 まだ深刻な実害は出ていないとのことだが、いつどうなるか……何もかもがまったく読めない状況だ。


 これについては島で暮らしている人たちが知らないだけで大陸側ではメジャーな動物である可能性もあるので実物を見るまでは判断できないな。さすがにエミリーお嬢様をはじめとする屋敷の関係者は直接目撃しているわけじゃないみたいだし。


 まあ、そういった事態なので具体的な策は何も浮かばず。

 なので、ここは俺が出よう。


「森にいるそいつが何者か、ちょっと確認してこようと思う」

「っ!? き、危険だぞ!? ヤツはかなり獰猛だ!」


 オデルゴさんに止められはしたが、具体策を練っていくにはどうしても相手の生態を知る必要がある。


「何も直接対決をしようってわけじゃないんだ。ちゃんと対策はしていくし、近づきすぎないように配慮するよ。本当にそいつの脅威を取り除こうというなら、まずは相手のことをよく知る必要があるしね」

「し、しかし……」

「本当に大丈夫なのですね?」


 食い下がろうとしていたオデルゴさんを止めたのはエミリーお嬢様の声だった。


「あなたの言うように、私たちはその存在について知らなさすぎます……少しでも有益な情報が増えれば対策の幅も広がるでしょうし」

「お任せください」

「……分かりました。お願いします。ただ、ひとつだけ条件を出させください」

「じょ、条件ですか?」

「そうです。――無茶はせず、必ず生きて帰ってきてください」


 大真面目な顔つきでそう語るエミリーお嬢様。

「死んでも成果を挙げてこい」と怒鳴り散らしていたアロン代表とは真逆だな。


「肝に銘じます」

「それなら、私からこれ以上言うことはありません」


 こうして、エミリーお嬢様からGOサインが出た。

 相手がどんなヤツなのか……この目で確かめてやる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る