第18話 妖狐アカツキ
「俺に話とは……島の連中は気味悪がって近寄ろうともしないのに、変わったヤツだな」
「島の外から来た人間だからな。島民たちとあんたの間に何があったかはしらないが、俺はそういうのを抜きにして一度話がしたかった」
「ほぉ……」
狐は俺に関心を持ったようだ。
これで少しは落ち着いてやりとりができる。
「まず、俺の名前はジャック。ジャック・スティアーズ。仕事は鍛冶職人だ」
「鍛冶屋か。もしかして、身に着けている大量のアイテムは自前の物か?」
「あ、ああ」
「おっと、すまない。まだこちらが名乗っていなかったな。俺はアカツキ――ここからずっと東にある島国で生まれ育った妖狐だ」
「よ、妖狐!?」
聞いたことはある。
ここからずっと東にある国は生態系から何からすべてこちらとは違う、と。その特徴から、俺が前世で暮らしていた日本に近い文化を持った国だとは思っていたのだが……まさかその国出身だったとは。
そういえば、この島には狐っていないのかな。
動物ではあるが、過去に目撃した例のない生き物って話だったからたぶん存在していないのだろう。ただ、仮にいたとしてもここまで大きく育つ個体は野生にいないか。
……ていうか、話とだいぶ違わないか?
もっとこう、問答無用に襲いかかってくるバケモノタイプを想像していたのに、めちゃくちゃ理知的なしゃべり方をしている。
「な、なあ」
「うん?」
「どうして島民たちはあんたを恐れているんだ? こうしてしっかりと話し合うことができるというのに」
「この世界に生きる人間がみんなお前のように肝の据わったヤツばかりとは限らんということさ。とはいえ、体格差を考慮すればなるべく接しないようにしようと警戒するのは間違った行為ではないな」
えらく冷静な返し……やはり、知能はかなり高いな。
そこら辺に入るモンスターとはわけが違う。
と、いうことは、
「きちんと島民と話し合えば、これまでの誤解はとける! そうすれば、この島全体を自由に行き来することが可能になるぞ!」
「俺としても今の関係が改善するというなら生活しやすくなっていいのだが……本当に大丈夫か?」
「問題ないさ。島の人たちにちゃんと話せば分かってもらえる」
「だといいが――む?」
突然、アカツキの表情が険しくなる。
な、なんだ?
何かあったのか?
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