第14話 島の一大事
移住二日目は朝から大忙しだった。
早朝から漁業で使う船の修理依頼がいくつか舞い込んできていたのだ。
「実はここがちょっと欠けていてなぁ。直せるかい?」
「これくらいなら問題ないですよ」
ここでは【修繕】の付与効果が大人気だった。緋色の
午前中は村人たちからの要請に応え、午後は畑作業を開始。
その際、村人たちはさっきのお礼だといろいろ手伝ってくれた。
というか、この世界における農業知識がまったくないため、みんなと情報共有しなくちゃ何もできないんだよな。農具は自作できるけど、種や肥料はさすがに用意できないしね。
村の人たちはとても親切で、まだ島に来たばかりでよそ者感のある俺に対して嫌な顔ひとつせず野菜の種を分けてくれたり、農業のコツを伝授してくれた。
それもこれも午前中のお礼と言っていたが、明らかに俺の方が得をしているんだよなぁ。修理とかはスキルでできちゃうので苦労しているわけじゃないし。
というわけで、島の男性陣が総出となって地面を耕し、野菜を育てるのに適した環境を用意してくれた。
小さいながらも手伝ってくれたティノも大喜びだ。
あとは種を植えて水をやれば――と、その時だった。
「た、大変だぁ!」
ひとりの若い男性が血相を変えて俺たちのもとへとやってくる。
「どうかしたのか、ジェイク」
心配したオデルゴさんが尋ねると、ジェイクという若者は乱れた呼吸を整えつつ、自身が目撃した出来事について語り始める。
「や、ヤツらがまた出たんだ!」
「何っ!?」
一気にざわつく村人たち。
ジェイクのあの乱れっぷりを見る限り、相当ヤバい案件なのだろうが……一体、ヤツとは何者なんだ?
「すぐにお屋敷へ知らせに行かなくては」
「俺も行きますよ」
「ジャックが? しかし、危険だぞ?」
「大丈夫です。そういうのは慣れていますから」
俺自身が戦場に立った経験はない。
――だが、不思議と恐怖心というものはなかった。
レグロス隊長からいろんな話を聞いて耐性がついたかな……とはいえ、実戦経験はないので本当に何かあった場合は対処できないかもしれないが、それでも俺は何があったのか知りたかった。
俺だって、今はもうこの島の住人だからな。
その後、ティノを他の人に預け、俺とオデルゴさん、そしてジェイクを含む数人の村人でハドルストン家の屋敷へと向かった。
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