第6話 ハドルストン家のお屋敷

 島の東側にある見晴らしのいい小高い丘の上に建てられたハドルストン家のお屋敷。

 そこにたどり着くと、数人のメイドが出てきた。


「おかえりなさいませ、ダバラさん」

「遅くなって申し訳ない」


 ダバラさんはメイドたちのまとめ役を務めるケリスさんにここまでの経緯を説明。

 すると、当然話題は俺とティノが中心となる。


「お嬢様はあの本が来るのを楽しみにされていましたので、予定通りに到着できて本当に助かりました。ありがとうございます」

「いやいや、そんな」


 ここでもまたお礼を言われて恐縮する。

 すると、


「ああっ!」


 突然屋敷の中から女性の叫び声が。

 恐らくメイドさんなのだろうが……何があったんだとみんなで駆けつけてみたら、どうも買ってきた本を入れていた棚が壊れてしまったらしい。


「ど、どうしましょうか……」

「ふーむ、先々代の頃からあった本棚ですからねぇ。壊れるのも時間の問題と思っていましたが、まさかこのタイミングとは」

「エミリーお嬢様にとっても思い出深い本棚ですから、修繕しないと」

「ならば職人を呼ばなくてはいけませんね」


 ダバラさんとケリスさんは困り顔で本棚の今後について相談中。

 ここは俺の出番だな。


「本棚を見せていただけますか?」

「えっ?」

「俺なら直せるかもしれません」

「っ! そうでしたな! 頼めますかな?」

「私からもお願いします!」


 深々と頭を下げるダバラさんとケリスさん。

 ふたりからのお願いもあって、俺は早速本棚を直しに取りかかる。すぐ横ではティノが興味深げにのぞき込んでいた。


 俺が取る方法と言えば――やはり付与効果スキル。

 まずは【修繕】の特性を付与することで自動的に元の姿へと戻る。これだけでダバラさんやメイドさんたちから歓声があがるのだが、まだ終わらせない。ここからが付与効果スキルの見せどころだ。


「耐久度をあげておいたので、これからはそう簡単に壊れないでしょう。あとは本棚としての効果も上昇しています」

「ほぉ、具体的には?」

「本の劣化を防ぐ効果です。本来は遠征の際に食べ物を長持ちさせるために使用する付与効果なのですが、それを応用すれば本の保存も可能です」

「それはいいですね!」


 盛り上がるダバラさんとメイドさんたち。

 その騒がしさが気になったのか、近くにあった階段にひとりの少女が現れる。


「ダバラ、戻っていたのね」

「っ!? エミリーお嬢様!?」


 大慌てで少女のもとへと駆け寄るダバラさんたち。

 あの子が……噂に聞くハドルストン家のエミリーお嬢様か。

 階段を一段ずつ下りるたびに揺れる長い金髪。

 吸い込まれそうな青い瞳。

 儚げな印象を受ける白い肌。

 そして作り物の人形かと疑いたくなるほど整った愛らしい顔立ち。

 まさにこれぞお嬢様って風貌だな。


「あら? あなたたちは?」


 やがて彼女の視線は俺とティノに向けられる。

 屋敷に入ってから一気にたくさんの人と出会い、少し困惑した様子が見られたティノであったが、なぜかエミリー様に対しては笑顔を浮かべて楽しそうにしている。竜人族の彼女だからこそ感じられた「何か」があるのかな。


 ともかく、まずは軽く自己紹介。

それからダバラさんの説明もあり、応接室で詳しい話をすることになった。





※明日は朝7:00から4話投稿予定!

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