第19話「FREEDOM/アサルトタキオン」

 ◇


ターンプレイヤー:穂村カレン

手札:0枚

控え:破壊状態1体/待機『ヌルカグヤ』/残り枠2

バトルエリア:『九相童話ナインテールズ ヌエべロス』

        AP3333


//『浸蝕結界/境界崩壊・混沌劇場アビス・カオス・マギア』展開中//


プレイヤー:月峰カザネ

手札:4枚

控え:破壊状態3体/残り枠1

バトルエリア:『デザイアブレイド-ザンゲツ』

        AP3000


 ◇


 ——浸蝕結界。沖田先生も使用したっていう、謎の超強力カード!

 フィールドそのものを塗りつぶしてルールを追加する強力無比な特殊カード。今回カレンはその効果で、特殊な合体能力を付与した……!


 あのヌエべロスってセンチネル、イレギュラー極まりないカードだし、そもそもAPって3333みたいな数値に設定できたのね。を始めとして色々思うことがある。


 でもカード3枚を素材に使った割には大人しめなAPだと思うんだけど、どうくる……?


「ゲヒヒ! 先輩さぁ! ヌエべロスがただの重いセンチネルなわけないじゃァーーーーーん!

 ヌエべロスの特殊効果発動! 召喚時に、合計3回、アタシがドローするか先輩の手札を捨てるかを選択して発動できる!」


 ——3枚! 要は使った素材分のリカバリーをする効果! 最大3ドローか私の手札を3枚捨てるかを選べるようだけど、それだけじゃなくてその枚数配分は自由にできる……!


「じゃぁねぇ——アタシは2ドロー、先輩は1手札破壊ハンデスね! ギャハハ! 揃ってきたァ!」

「——やるわね。でも1枚だけで良かったの? 私だってそれなりに手札増強はしてたからかすり傷程度よ?」

「うるっせぇわよ! アタシがもっと物語見せたらァ! アタシは手札から『九相童話ナインテールズ アヴェンジトリガー・クラブボーン』を破壊状態で控えに配置!」


 そこには、既にかなり朽ち果てた、蟹のようなセンチネルが——かぷかぷと漂っていた!


「キャハハ! クラブボーンは復讐の始まりを告げる骸。破壊状態のクラブボーンの特殊効果によって、アタシはデッキから『九相童話ナインテールズ』を1体手札に加えるのよ! アタシはこのカードを手札に加えて、すかさず召喚!

 ——『九相童話ナインテールズ 夢幻抱擁むげんほうようマーメイド』!」


 呼び出されたのは人魚の姫。だけどその姿は既に泡となって消えつつある。しかしその状態で人魚姫は歌を奏で始める!


「『夢幻抱擁マーメイド』は、自身を破壊状態にすることで、奇跡を引き起こすの。具体的にはこのターン既に使用したカード効果を1枚だけ再発動させちゃうの! やるのはもちろん——」


 ——嫌な予感がする。

 そう思った時、既に混沌の劇場は新たな演目の上演を初めていた。


「——アタシは戦闘可能状態のセンチネルであるヌルカグヤと手札の『九相童話ナインテールズ その狐を誰が殺したのかコン・マストゴーオン』と、そして場の『ヌエべロス』でアブソーブ召喚!

 五つの魂交わりし時、新たな星が空に輝く!

 されどそれは正体不明。キメラで鵺でしっちゃかめっちゃか! 素敵で無敵な暗黒巨星!


 ——現れ出でよ! 『九相童話ナインテールズ レアルタヌア・キマイ=ラヌエ』……!!」


 ——来た! 今度こそ切り札が!


 悍ましいまでの暗黒塊。それは私への試練なのか。眼前にて蠢くのは、不定形にして不明瞭な漆黒の肉塊。童話は割と残酷な描写があったりもするけど、こういうグロいのとはまた違う気がするんですけど!!


 ◇


九相童話ナインテールズ レアルタヌア・キマイ=ラヌエ』

 AP5555

【召喚条件】

 『九相童話ナインテールズ』×5


 ◇


 これまた圧倒的なステータス。それだけでも結構脅威なんだけど、まあそれだけで終わらせてくれるはずもないわよね。


「『キマイ=ラヌエ』の特殊効果発動! 召喚時、アタシの手札が5枚になるようカードをドローして、相手との手札の差分、このセンチネルの攻撃回数を増やすのだわ!!」

「な——」


 なんつー無茶苦茶をかましてくるのよそのダークマターは……!!

 こっちの手札は3枚だから、その差は2!

 AP5555で3回攻撃!? ふざけんな!!


「ギャハハハハハハハ! バトル!! アタシは『キマイ=ラヌエ』で3! 連! 撃!

 これで終わりよ『不明瞭不鮮明伏魔殿アンノウン・パンデモニウム』——!!!」


 黒い巨星から闇色の鋭利な触手のようなものが大量に射出され、場に爆風が巻き起こる——!


「ギャァーっっハハハ!! 大勝利よアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!! これで神崎カナタのメンタルはボッコボコねェェーーーーー!!」


「——それはどうかしら?」


「——ヒャ、は?」


 爆風が晴れ、私が発動したスキルカードがその姿を晒す。

 ——名を、『ブレイドダンス-斬夜の舞』。


「このカードの効果で、キマイ=ラヌエの攻撃を1回無効にして、さらに返す刀の斬撃でAPを1000下げたの」


「それでもAPは4555! ザンゲツが場に残ってるはずないじゃ——は?」


「気づいたわね、


 ◇


『キマイ=ラヌエ』

 AP4555


『デザイアブレイド-シンゲツ』

 AP3000


 ◇


「ザンゲツは破壊された場合、デッキからシンゲツを呼び出すの。そして、シンゲツは場に出た時、月明かりのない夜の力を内包した斬撃で——

 これで、キマイ=ラヌエの追撃能力もダメ押しのスキルカードも使えなくなったってワケ。わかった?」


「くぉんの女ァァーーーーーーーーーー!!

 次でぶっ殺すかんな!!! ターンエンド!」


「はっ、やれるもんならやってみなさい」


 ——などと言ってはみたものの、こっちの控えはもう満席。シンゲツが戦闘破壊されたらそれで終わり。あーもう、なんでこのずきんちゃんは私の控えで寝てるんですかね。


 ——まあ良い、ドローしてから考える!

 なんであれ、私のデッキなら……!!


「私のターン——ドロー……!」


 ——引いたカードを視界に収める。それは、


「——EXスキルカード、発動。

 月光なき暗闇を纏う剣士よ、時空の潮流をその身に浴びて、今こそ遠未来の夜を照らせ!


 ——『Evolution』——


 来て! 『デザイアブレイド-アサルト・タキオン』——!!」


「な、ここに来て引きやがったのねチクショオーーーーー!!」


 ついにその剣は舞い降りる。

 闇を裂き、暗黒の巨星を打ち砕くべく——その機械仕掛けの翼を羽ばたかせ、時空流を纏った未来のサムライがここに降臨する。


『デザイアブレイド-アサルト・タキオン』

 AP3000


「——次でどうとか言ってたけど、撤回するなら今の内よ?」


 戦いは、新たなフェイズへ移行した。


------------

次回、『トラスト・ラスト/九相童話の吸魂狐』

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