第5話 ベルロイズ辺境伯領にて

西の辺境伯領に向かう護衛任務は2日目にブーリン伯爵領の町レントリムで1泊、3日目はブルーデネル子爵領の町ハルリックで1泊、4日目にベルロイズ辺境伯領の村オールーズまで来た。明日の夕方にはベルロイズ辺境伯領の領都ヘブリーズに到着予定だ。

途中の魔物はホーンラビット、フォレストウルフが3度出て来たが、クッキーは張り切って討伐してしまった為に、何もする事なく4日の行程を終わらせていた。


「ヴォルーノさん、この街道は安全なんですね。魔物はあんまり出ませんでした。」


「まあ、この街道は頻繁に人の行き来があるから、それに今回は先行しているキャラバン隊が露払いしてくれているからね。

良いタイミングで良かったよ。

それに、君たち護衛にも良い仕事してもらえて今回は本当に恵まれた。ありがたい」


そんな話をして、村の門ををくぐる。


「今日は、この村で休みますか?」


「ここは宿屋が一軒しか無いから、もう満室だろうね、でもダメ元で聞きに行って来る。ちょっと待ってて」


ヴォルーノは御者台から降りて、村の中央にある宿屋に入って行った。

暫くすると、ヴォルーノが戻って来て、


「1部屋だけ空いていたけど……。」


「ヴォルーノさん、俺達に構わず宿泊してください。俺達は、村の外で野営しますから馬車は俺達が預かっておきますよ。」


「良いのかい? 私だけって云うのは気が引けるのだけど」


「構いません。それより明日には領都に到着するのですから、俺達は依頼を終らせた後、ゆっくりしますので気を使わず宿泊して下さい」


「申し訳無いが、そうさせて貰うよ。

私が泊まる部屋は21号室2階の階段を上がってすぐの部屋だ。何かあれば来て欲しい。

それでは、失礼するよ。」


「はい、お休みなさい。」


俺達は野営をする為に、馬車を牽引して西側の出入り口近くに野営出来るスペースがありそこに馬車を止めて、テントを張った。

その広場には、他にも護衛と思われる2グループの冒険者が野営の準備をしていた。

クッキーがその冒険者達を見て、


〘あるじ、あのにんげんたち、わるもの〙


俺も念話でクッキーに話し掛ける。


〘どうして、そう思うんだ〙


〘あの、にんげんたち、いろんな、においがする。いろんな、にんげんのにおい。〙


〘あいつ等の匂いとは別でって事か?〙


〘そう、にんげん、ろくにん、でもいっぱいいる、においする〙


〘分かった。ミャア、盗賊が村に入り込んでいるかもしれない。サニーとナナシーから決して離れるなよ。〙


〘ミャアも戦うにゃ。〙


〘戦うのは良いけど。そんな攻撃があるか分からないからサニーとナナシーを守ってくれ〙


〘分かったにゃ〙


従魔達と念話を終わらせて、サニーとナナシーに声を掛ける。


「サニー、ナナシーちょっと馬車に来てくれるか。」


「はい」「どうしたの」


2人を誘導して馬車の中に3人で入る。

そして、2人に手招きをして3人顔を近づけ俺は小声で話をする。


「実は、クッキーが、あそことあそこにいる冒険者の匂いが複数の人間の匂いがするそうだ。それを聞いて俺は、奴らが盗賊じゃないかと思うんだ。奪ったモノの匂いをクッキーが嗅ぎ取ったんじゃないかと」


「お姉ちゃん、どう思う。ってクッキー喋れるの!」


「しっ!声が大きい!」


「あっ、ごめん。でもクッキーの嗅覚なら間違いは無いと思う。」


「私も、サニーと同意見。って事はミャアちゃんも喋れるのね。」


「クッキーは念話が出来る。ミャアは念話も会話も出来るけど、今日は盗賊退治になるかもしれないから念話だけにしとけよ。で、2人は念話出来るのか?」


「分かんないけど、クッキーに試してみる」


「私は、当然ミャアちゃんに試すわ」


「ふぅ~。まあ良い。それで、馬車に結界を張るから今日はこの馬車で待機してくれ。

上手く行けば盗賊のアジトを襲撃したい。

それまでは馬車を死守してくれ。」


「分かった」「分かったわ」


「良し、先ずは2人に反射の魔法を掛けておくな。 〝リフレクション〟〝リフレクション〟これで、結界を破られても最悪怪我する事は無いだろう。それじゃ、ミャアもここに残すから呼んでくるな。」


2人は頷いて、馬車の中に留まり、俺は馬車を降りてミャアに向かって手招きをする。

ミャアが気付いて俺に近寄る。


「ミャア、サニーとナナシーに話をしておいたから、〝リフレクション〟これで反射の魔法が掛かったから攻撃されても大丈夫だ。

後を頼んだぞ。おっと、食事忘れないように、ほれっ」


と言って鳥の串焼きを10本取り出し、ミャアに渡す。


〘鳥にゃ〜。鳥串焼きにゃ〜。〙


「サニーとナナシーにも渡すんだぞ。」


〘わ、わかってるにゃ〙


ミャアが両手に串焼きを持っているので自力で馬車に入れないので、ミャアの両脇に手を入れて持ち上げ馬車の中に乗せ、馬車に結界魔法を掛ける。


「セイクリッドサークル」


結界を掛け終わりクッキーのいるテントの前に向かった。クッキーに念話で、


〘クッキー、テントで待機して襲撃を待とう〙


〘いいよ。でも、にんげん、クーのこうげきで、しんじゃうかも〙


〘襲って来るのだから遠慮しないで良いよ。〙


〘わかった。ぜんりょくで、やっつける〙


こうして、クッキーと共にテントに入り、食事の串焼きと皿を出してくを皿に置き串を抜いてクッキーに食べさせる。

俺もピタパンを出して食事を済ませるとクッキーと自分に


「リフレクション」「リフレクション」


と反射の魔法を掛けて襲撃に備えた。


そして、深夜の時間帯にそれは始まった。












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