第3話 最後の挨拶と出立

木漏れ日亭でお別れの挨拶を済まして、冒険者ギルドに寄る、出来れば西の辺境に向かうキャラバンの護衛依頼でもあればそれに便乗しようと考えた。


護衛依頼用の掲示板を確認する。

明日出発の護衛依頼でキャラバンの護衛依頼は無く、行商人の護衛依頼が残っていた報酬は少ないが問題無さそうだ。依頼書を掲示板から剥がして受付カウンターに向かう。

受付カウンターはお昼過ぎの為、冒険者もまだ帰って来ていないから、受付はガラガラでどこも空いていた。

俺は、依頼書とギルドカードをカウンターに出して、


「すいません。この依頼を受けたいのですが?」

「はい。護衛の依頼ですね。ええっと、西の辺境伯領都ヘブリーズまでの片道依頼で食事は依頼者支給ですが問題ありませんか?」


「はい。問題無いです」


「それと1パーティーで1日銀貨2枚とお安いのも大丈夫ですか?」


「大丈夫です」


「畏まりました。それでは……。」


女性の受付スタッフは依頼書にハンコをしてギルドカードと一緒にこちらへ戻してきた。


「これで、こちらでの手続きが終了致しました。先方にはこちらから連絡を入れておきます。

片道の依頼なので、目的地に到着しましたら、依頼者にサインを貰って、領都ヘブリーズの冒険者ギルドへ提出していただくと、そちらで報酬を受け取れます。頑張ってください」


「ありがとうございます」


明日出発の護衛依頼の手続きを済ませて、皆んなと合流する。


「それじゃ、屋台で買い込みまますか」


〘くっしっやき、くっしっやき〙


〘西門広場の鳥串焼きは絶対にゃ〜!〙


「明日の出発はいつ頃ですか?サニーと私は朝弱いから遅刻しない様に頑張ります」


「日の出に西門集合だから、起こしに行くよ」


「「お願い」します」


冒険者ギルドを出て、西門前の広場に出ている屋台の串焼きを買い込む。


「おばさん、串焼き串焼き買えるだけ買いたい。何本買える?」


「いつもありがとうね。30本なら出せるよ。買って行くかい」


「はい、30本下さい。」


と言って銀貨2枚と小銀貨4枚を屋台のカウンターに置く。おばさんはササの葉に10本を纏めて包んだものを3つ用意し渡してくれた。


「いつも買ってくれてありがとうね」


「ここの串焼きは従魔達が大好物だからね。とても美味しいから、でも街を出るから暫く来れないんだ。戻って来るまで屋台頑張って続けてね」


「ああ。待ってるよ。気を付けて行ってきな」


鳥の串焼き屋台を離れてまだまだ買い込む為、すぐ近くにある串焼きの屋台に顔を出す。


「おじさん、買えるだけ買いたいのだけど、何本買えますか?」


「おっ、いらっしゃい。そうだなぁ〜まだ客はそんなに来てないから。時間をくれれば100本でも大丈夫だぞ!」


「それじゃ、他も回りますから作り置きしておいてくれますか。お代は100本だから銀貨5枚をここに置きます。後で取りに来ますね」


「毎度あり、頑張って美味しい串焼き作っておくからな」

串焼きの屋台にお願いをして、八百屋で野菜を買い込み、ピタパンの屋台で作り置きの30個の肉入りピタパンを買って、香辛料とハーブを売っているお店で、香辛料を買い込んだ。


「お休みの時ね、内緒でお姉ちゃんと私はマスターと奥さんに料理教わっっていたんだよ!だから旅先で料理作ってあげる!」


「おっ、そうなんだ。それは楽しみだなぁ。期待してるぞ」


そして串焼きの屋台に戻って、


「おじさん出来てる?」


「おう、出来てるぞ!ほれっ」


とササの葉に包まれた串焼きを10束渡して来た。


「ありがとう。俺達は暫く街を出るから買いに来ることが出来なくなるんだ。そう云う訳でこれだけ買い込んだのだけどまた必ず買いに来るからいつまでも頑張って屋台続けていてね」


「そうかぁ、寂しくなるが冒険者だものな!また必ず買いに来いよ!」


「うん」


こうして西門を離れて北の大通りを目指す。行き先は布地屋だ。

サニーとナナシーはミャアの洋服を作る為に、布地屋はすっかりお得意さんになっていた。


「おばちゃん、来たよ!」


サニーが店番をしているおばさんに声をかける。


「おやおや、いらっしゃい。今日はどんな生地を買いに来たんだい」


それを聞いたナナシーが、


「今日は、買い物ではなくてこの街を出る事になったのでお別れの挨拶に来たんです。

今まで良くしてくれてありがとう」


「おばちゃん、ありがとうね。また絶対買いに来るからそれまで元気でね」


「あぁ。そうかい。あなた達冒険者だったね。そうかい。街を出ていくんだねぇ。寂しくなるなるねぇ。体に気を付けて、また必ず買い物に来ておくれよ。」


「必ず来ます。それまでおばちゃんも元気で」

「おばちゃん、絶対戻ってくるからねじゃあね」


生地屋のおばさんもサニー、ナナシー達も目に涙を浮かべてお別れをした。

生地屋を出て、家に戻る。

夕食は、串焼きとピタパンで済ませて、サニーとクッキー、ナナシーとミャアのペアで各々各自の部屋に戻っていった。


今の俺の資金は、作っていたポーションの売却で金貨が商業ギルドカード預金に150枚あり、最上級ポーションを売却した事で160枚。

ポーションの売却金の端数などと冒険者の依頼達成を報酬などで手元に金貨3枚・小金貨23枚、銀貨168枚、小銀貨70枚、銅貨230枚がアイテムボックスに入っていた。

これだけあれば、当分は問題ないと思っている。サニーとナナシーも冒険者の依頼報酬でそれなりに持っているはずだ。


今後に備え、中級ポーション2箱50本、上級ポーション2箱50本、最上級ポーション1箱25本を作り残っている13本と合わせて最上級ポーションは38本。


空のポーション瓶は34箱あるので、上級キュアポーションを2箱50本これは、オトギリ草1、ヨモギ草1、ドクダミ草1、タイマ草1に純水180mlで最上級ポーションと同じ作り方をして作った。鑑定結果は、


《上級キュアポーション、

内服により内臓修復が瞬時に出来る。異常細胞の除去。免疫強化。外部侵入細菌及びウイルス不活性化》


と出た。これで、病気にも効くポーションが出来た。

それらをアイテムボックスに仕舞って作業を終わらせ就寝した。


日が登る前に起きて、サニーとナナシーの部屋をノックし、


「お~い。起きろ!出発するぞ!」


「は〜い。」〘クーはおきた〙


「はい、起きます。」〘ミャアは……。〙


取り敢えず起きた様なので、俺は1階で錬金道具を片付けて全てアイテムボックスに仕舞った。そして食堂で瞑想をしながら2人と従魔達を待った。

1番に降りてきたのはクッキーで串焼きを2本皿に置いてあげた。

クッキーは一瞬でペロリ徒歩食べてしまったが、女性陣はまだ降りてこないので、クッキーに生活魔法の「クリーン」を掛けて毛並みをモフモフしていると、ナナシーとサニーが降りてきた。


「おはよう。ミャアは?」


「おはよう。お姉ちゃんミャアは降りて来る?」


「おはよう。ミャアは起きてたからもうすぐ降りて来ると思うわ」


「それじゃ、簡単だけど屋台飯で朝食にしよう。」

サニーとナナシーにピタパンと串焼きをソレゾレ出してやり。木のコップに水を入れてテーブルに置いた。

2人が食事を始めるとミャアも降りてきたので、


「ミャア、食事にするから椅子に座って」


ミャアにも、ピタパンと串焼きを出して食事をさせる。その間に俺も同じメニューで食事をした。


そして、食事を済ませ皆で外に出ると、家に手をつき、


「収納!」


と気合を入れて家をアイテムボックスに収納した。家のあった敷地はトイレの排水口部分がぽっかり空いている以外、何も無くなっていた。


「良し!収納出来た。これでどこでも住める」


「凄い!お姉ちゃん見てた!」


「見てたわよ!驚いたわ、本当に収納出来るのね」


〘おうち、なくなった〙


〘無くなってないにゃ!ご主人が、魔法で仕舞ったにゃ〙


〘そうなの。なくなってないの。〙


「クッキー無くなってないから安心しろ。それじゃ、西門に依頼人が待ってるから出発するぞ」


「「はい」」 〘いくぞ〜〙〘出発にゃ〙


こうして、家を収納して西門に向かうのだった。









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