第2話 旅立つ準備
家に帰り着くと1階の食堂でサニーとナナシーが従魔達とじゃれ合っていた。
「皆んなただいま」
「「おかえり」」〘おかえり〙〘おかえりにゃ〙
「ちょっと聞いて欲しい。
予定より早くなってしまうが旅に出ようと思う。商業ギルドで、貴族の母子が大怪我をしたと云う事で、最上級ポーションを売って欲しいと商業ギルドのギルドマスターに言われて、5本売ったのだけど、その場に薬師ギルド長が居てね、薬師ギルドへの加入を促されたんだよね。その時の薬師ギルド長の態度が横柄でね、嫌だったから断ったんだ。
その薬師ギルド長が元貴族らしいから、最上級ポーションの出所が俺ってバレたと思う。
そうなると、貴族の事だから必ず作って寄こせだとか、呼び出しに応じろとか集まって来ると思う。最悪は監禁して飼い殺ししようと云う輩も出て来る。そんな事になる前に街を出たい。良いかな?」
すると、ハスキー犬程に大きくなったクッキーが、
〘おうち、かえらない?おそとで、ねる?〙
「持って行けるなら、家の収納を挑戦して持って行きたい。やっぱりこの家は心地良いからね。」
それを聞いた、サニーとナナシーは
「私もお姉ちゃんもサミュエルに救われたのだから、何処でも着いて行くよ。ね、お姉ちゃん。」
「そうね。街の人とお別れになるのは悲しいけど、また帰って来るでしょ?」
「もちろん帰ってくるよ。貴族さえいなければここは住みやすかったからね。」
〘ミャアは反対にゃ。鳥の串焼きと離れるのは嫌にゃ〜。〙
「出発する前に、たくさん買ってアイテムボックスに保管しておくからね。それに、旅先でもっと美味しい串焼きが有るかもよ。」
〘そうにゃ?毎日2本食べれるにゃ?〙
「食べられるぐらい買って出発しよう。」
〘そう云うことにゃ、ら、旅に出るにゃ。〙
「よし!そうと決まれば買い物と、お世話になった人達に、挨拶しに行こう。」
そうして、先ずはガンツールのお店に向かった。ガンツールのお店に行くと女将さんが店番をしていた。
「女将さん、近い内にこの街を出る事になったので、お別れの挨拶に伺いました。」
「あら~。なんだい。なんだい。この街にずっと居着いてくれると思ってのに、残念だねぇ。
ちょっと!あんた!サミュエルが街を出るってよ〜!さっさと店に来な!」
「なんでぇ!うっせいなぁ!おっ、サミュエル!街を出るって護衛依頼でも引き受けたのか?」
「いや、旅に出る事にしたんだ。ちょっと、薬師ギルド長と揉めてしまって貴族に目を付けられる可能性が出て来て。従魔達の事もあるしイザコザが起こる前に一旦街を出る事にしたんだ。」
「そうかぁ。ちょっと待ってろ。」
ガンツールは鍛冶場に戻り、剣やナイフを持って帰って来た。
「これ、ちょっと振ってみろ。」
カウンターに置かれたのは、剣1本と短剣2本ナイフが4本だった。俺は剣をナナシーは短剣、サニーはナイフ2本を各々鞘から抜いて振ってみた。
「今使っている剣より使い易いですが…。」
「私もこの短剣しっくり来ます。」
「私もこのナイフの重みが丁度いい。今の軽くて物足りなかった。」
「身長も伸びて、筋肉を体力も向上してるからその、魔鋼の武器の方が今後役に立つかと思ってよ!良い感じに作って置いた。
全部で金貨1枚で譲ってやる。持ってけ。」
「女将さん、あんな事言ってますけど、良いのですか?」
「何言ってんだい。良いに決まってるよ。あんたにはスクラップで良い思いさせて貰ったからね。うちの旦那の心意気だ、くちばしは挟まないよ!」
「ではこれで、遠慮なく。」
俺は、カウンターに肩掛けカバン経由でアイテムボックスから金貨1枚を取り出し置いた。
「又、必ず戻って来ます。それまでお元気で。」
「あぁ。待ってる。」
「また、スクラップ溜めておくから、戻って来たら仕事しておくれよ。」
「じゃあね。ナイフありがとう。」
「短剣大事に使います。さようなら。」
こうして、俺達は新しい武器を手に入れ、次に木漏れ日亭へと向かった。
木漏れ日亭に着くとまだ日が高いのにニックさんとパーティーメンバーの2人がいた。
「あれっ、ニックさんどうしてここに。」
「おう、来たな。実は昨日王都から帰って来ていたんだ、その報告と次の打ち合わせに今日、雇い主のエルファン会長と商業ギルドに居たんだよ。そしたら、薬師ギルド長がプリプリ怒って降りて来たんだ。で〝実家に報告するだの〟〝ポーションはこっちで押さえる〟だの〟エラい剣幕で商業ギルドの副ギルド長に言っているのを見掛けてな、こりゃ、サミュエルのポーションで一悶着あったなってピンッと来てよ、それを知らせに家に向かったけど居ないからここで張ってた訳さ。」
「ニックさん、商業ギルドに居たんですね。
実は、薬師ギルド長が居なくなってから最上級ポーションを取引したんです。で売り先が貴族らしいので貴族の間で絶対最上級ポーションが噂となってしまうので従魔達の事と合わせて貴族とイザコザが起こってしまうのは目に見てます。なので街を出て行こうと思ってます。」
「そうかぁ、それが無難か〜。サミュエルも元貴族の息子だから其の辺は敏感に反応するわな。まあほとぼりが冷めるまでは色々な所に行って来い。冒険者なんだ!旅してなんぼだぞ。」
こんな会話をしていると、マスターが厨房から出てきた。
「うるせいぞ!ニック。サミュエル災難だったな。こうなっちゃ薬師ギルドに加入しなかった事が良かったのか悪かったのか…。遅かれ早かれあのポーション作れるならば、貴族の目に止まっちまったろうな。家はどうすんだ。」
「実は、俺アイテムボックス持ちなんです。
それで、収納して持って行こうかと。」
これを聞いた、ニックさんとパーティーメンバー2名は立ち上がり驚愕の目でこっちを見て「「「何!」」」と驚いていた。
マスターも、
「おまっ、そんな容量のアイテムボックス持ちなのか……。」
「実は、そうなんです。容量は確認していませんけどそれなりにあります。」
それを聞いたニックさんが、
「それにしたって家を収納出来る容量って魔力の消費が尋常じゃ無いはずだと思うが……。」
「その辺は良くわからないです。魔力切れ起こしたことが無いので、減っている感じはしてませんね。」
パーティーメンバーの1人が、
「信じられん。」
とつぶやいていた。仕切り直しに、
「そう云う訳で、街を出ますのでお別れの挨拶に、ニックさん、マスター暫しのお別れです。今まで、お世話になりました。」
それを合図にサニーとナナシーも
「「ありがとうございました。」」
と声を揃えて感謝を述べる。マスターは
「また来いよ。飯作って待ってるからな。」
「冒険者ギルドに伝言を寄越せよ。そうすりゃ何時でも繋がれる。頑張って貴族が手を出せないA級かS級になっちまえ!」
「えぇ。そうしてみます。ではさよなら。」
「「さようなら〜。」」
こうして、木漏れ日亭を後にして、冒険者ギルドに向かった。
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