第2章 旅立ちそして辺境伯領

第1話 そして1年が過ぎて

俺は、ドラゴンの一撃で戦闘不能になり敗北をした事で、言葉では無理無理と言いながら何処かで〝殺れんじゃね。〟っとおごっていたと思う。


驕っていた自分を後悔して、色々なトレーニングを始めた。

日の出と共に起きて、先ずは内臓を鍛える為に、前世の鶴ちゃんがやっていたヨガを参考に内臓はがしををやってみる。

お腹の中の内臓を柔らかくつまんで、マッサージするように引き上げて内壁に癒着している内臓をはがすイメージで揉む。

そして、内臓はがしをしながら胸式呼吸をして肺に目一杯の空気を取り込み、肺が膨らみきるとそれをゆっくり吐き出す。それを30分程繰り返すと内臓はがしをやめて、腹式呼吸をしながら、吐き出す時にお腹の真ん中にある腹直筋を激しく波打つように動かしながら吐き出す。これも30分程行うと次に移る。


瞑想をしながら魔力循環を行うのだが、以前は表皮にばかり気が周り、内部を疎かにしていたので四肢の表皮や筋肉だけでなく全ての筋肉に魔力が行き渡るイメージで魔力循環を1時間程行う。


それを終わらして、北門の屋台に行き従魔達の食事を購入して自宅に戻り、食事を与えては木漏れ日亭で食事を取る。


7日を過ぎるとニックさんとの契約も切れて、ニックさんは護衛依頼に旅立つので、サニーとナナシーは俺と合流してパーティー活動を始めた。

最初は、西の森で薬草採取をメインにこなしつつその作業中に出くわした魔物を討伐していた。半年もすると、サニーとナナシーはE級に上がった。

E級に上がると西のダンジョンに入場資格を得るが、俺達はダンジョンには行かず、只管ひたすら西の森で薬草を採取していた。


そして、朝のルーティンになりつつある呼吸法と瞑想をサニー、ナナシーも始め出した。サニーは早起きが苦手らしく、寝坊やバックれたりする事もあったが、それも3ヶ月経つと無くなった。


そして、1年が経った現在の俺は身長は140cmと未だまだ成長途中ではあるが、肉付きが良くなりシックスパックの腹筋に四肢の筋肉もかなり付いてきた。

クッキーは秋田犬の大きさとなって顔付きから幼さの可愛らしさが無くなり犬歯が鋭くなって精悍な顔つきになってきた。

ミャアの身長も伸びて120cm程になり、ナナシーに作ってもらった八分丈のスボンに半袖の丸首シャツにベストを外出する時の装いになっている。

サニーは俺より身長が伸びて155cm程にしっかり肉も付いている。

ナナシーは更に大きく170cm程の身長でスリム体型になっていた。


俺は、ポーション作りを、夕食後に作業を行い、最上級ポーションは作らず、中級、上級ポーションを週に1度1箱ずつ卸していた。

その度に、最上級ポーションを卸して欲しいと頼まれるが材料が無いと断っていたが、1年が経った現在、1週間ぶりに中級、上級ライフポーションを卸に商業ギルドの買取所を訪ねてみると、部長のジェロニーが


「いつも、上質のポーション卸して貰って本当に有り難いよ。今日も1箱ずつかい。」


「はい、これお願いします。」


木箱を2箱分買い取りカウンターに置く。

ジェロニーが木箱の蓋を開けて、数量と品質を確認する。


「相変わらず綺麗な色のポーションだねぇ。

はい、問題ありません。代金を金貨2枚、小金貨7枚銀貨5枚になります。お確かめ下さい。」


「確かに。」


カウンターに出された代金を受け取り肩掛けカバン経由でアイテムボックスに収納する。


「あっ!ギルドマスターがどうしてもお会いしたいと言伝を頼まれていました。執務室まで一緒に来て貰えませんか。」


「構いませんよ。」


ジェロニーの後について行って、ギルド裏口から3階の執務室に向かう。


『コンコン』とジェロニーがドアをノックして、


「サミュエル様をお連れしました」


と告げると、扉の向こう側から、


「入って下さい。」


と返事が返ってきて、ジェロニーと共に執務室へと入る。重厚な執務机にギルドマスターがいて、応接セットのソファーには気難しそうなちょび髭の男が眉間に皺を寄せてこちらを睨んでいる。その男が突然俺に向かって文句を言って来た。


「お前が薬師ギルドに話を通さずと直接商業ギルドにポーションを卸している者だな!

勝手な事をやりおって!」


俺はこのチョビ髭に文句を言うつもりで口を開けようとすると、ギルドマスターが先に口を挟んで来た。


「ちょっと、薬師ギルド長。貴方薬師ギルドが商業ギルドの下部組織だって事をお忘れでは無いかな?それなのに、うちのギルド会員に上から物申すのは如何なものなのかな。 

ギルドへの加入は任意であり、それに彼の職業はそもそも薬師では無い。自身の名乗りもせずに何がしたいのかね。

私は、あのポーションを作れる人物の勧誘をさせて欲しいと君が懇願するからこの場を設けてあげたのだ。

私の顔を潰す気なら、此方にも考えがあるぞ!実家の権威が平民となった貴様に有ると思っているなら、実家との取引も見直しを考えなくてはならないな!」


ギルドマスターの剣幕に薬師ギルド長と謂われた男は項垂れて、体をぷるぷるさせ顔を真っ赤にさせて、


「申し訳ありません。」


と小さい声で謝罪していた。

私は、薬師ギルド長を無視して


「それでギルドマスターご用件は何でしょう。」


「あぁ。申し訳無い。実はポーションを融通してほしくてお呼びしたのだが、薬師ギルド長。サミュエルさんとはご縁が無かった様だ。用件は済んだようだからお引き取り願おう。ジェロニー君、廊下まで送って差し上げて。」


「畏まりました。薬師ギルド長ご退室をお願いします。」


「なっ、私にこんな事をして、後で後悔されても遅いですぞ~。」


吠えながらジェロニーに押されて部屋を出て行った。


「済まないね。嫌な思いをさせてサミュエル君のポーションを薬師ギルド経由で入手した事にしようと思い彼の要請に応じたのだが、失敗だったね。本当に申し訳無い。

それで、来てもらった用件なのだが最上級ポーションを最低2本融通して欲しい。

実は、さる貴族の夫人と令嬢が実家に帰省した帰りに魔物の襲撃に遭って、夫人は左肩に爪痕が残り更に左腕失った。、令嬢は右頬に深い爪痕と右目が潰れてしまった。

手持ちのポーションで一命は取り留めたが、傷痕や失った部位は戻らない。

ご主人は再生ポーションを聞き付けて、こちらに話を持って来たという訳だ。

どうだろう?お願い出来ないだろうか?

ご令嬢は9歳なんだ。不憫でなぁ……。」


「分かりました。お譲りしましょう。」


こうして、以前に作っておいた最上級ポーションを5本執務机に置いた。

ギルドマスターはポーションを見て、すぐに、


「支払いはカード預金への入金で良いかね?」


「構いません。」


「ジェロニー君、サミュエルさんのカードを預かって手続きをして来てくれないかね。」


「畏まりました。サミュエル様、カードをお預かりします。」


ギルドカードをジェロニーに預けて待っている間ギルドマスターに、


「これで、この街にいられなくなりましたね。明日中にはこの街を立ちます。ポーションの仕入れは本日限りとなりましょう。」


「どうしてだい。」


「再生ポーションを貴族が入手すれば、欲しがる貴族は、後を立たないでしょう。そうなれば王族も黙っている訳がない。

それに気付かないギルドマスターでは無いでしょう。」


「そう思って、薬師ギルドを噛ませたかったのだがねぇ。薬師ギルド長は愚か者だった。

重ね重ね申し訳ない。」


「こちらも、旅をする切っ掛けが出来たと思っておきます。それに、ほとぼりが冷めれば戻って来ます。家もある事ですしね。」


そんな話をしていると手続きの終わったジェロニーが戻って来たので、カード返して貰い、商業ギルドを出て帰宅した。














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