17.てへぺろ

「千恵ちゃんってさ、牛乳好きじゃない?」

「……別に大して好きじゃないけど」

「じゃあ、その胸のサイズは何なの?」

「知らんわ」


 千恵ちゃんの胸はとても大きい。

 それはそれはもう大きくて、悔しいことに大人顔負けのサイズだ。

 正直、千恵ちゃんがその大きな胸を揺らす度、わたしの悲しいまでに小さなプライドは、メラメラと激しい嫉妬心に燃えていた。


(何が千恵ちゃんのおっぱいをそこまで大きくしているのか。その謎を解明すべく我々はアマゾンの奥地へと向かった――)


 じゃなくて!


 ――やっぱり、千恵ちゃんの胸が大きい理由は〝アレ〟かもしれないな。

 もし、そうだとしたら――。


(食べるか……。甘いお菓子……)


「えーん、わたしも胸がおっきくなりたいよぅ……!」


 千恵ちゃんの胸を見ながら、わたしは恥を捨てて大泣きをする。


「また揉んであげようか?」


 それを聞いたわたしは一瞬で泣き止む。


「ち、千恵ちゃんの揉み方、エッチ以外の何ものでもなかったから、もう絶対に嫌だよ……!」


 わたしがノーサンキューと両手を前に出すと、千恵ちゃんは小さく『チェッ!』と舌を鳴らした。


「その代わりと言ってはなんだけど」

「あたしの胸を揉ませてとかだったらぶん殴るからね」

「……ごめんなさい」

「あんたは黙って牛乳飲んでなさい」


 いつになく今日の千恵ちゃんは辛辣だった。

 まぁそんな日もあるよね、てへぺろ。

 何を言われても懲りない女、それがわたし『公衆便女こうしゅうべんじょ』なのです。

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