16.永遠に

「千恵ちゃんってさ、わたしのことおばさん扱いしないよね」


 わたしの年齢は二七歳。

 世間ではアラサーと言われ、おばさんと呼ばれる年齢だ。

 それなのに千恵ちゃんときたら、わたしのことをいつもお姉さんと言ってくれる。


 正直に言おう。

 わたしも女性のひとりだ。

 おばさんと呼ばれるよりお姉さんと呼ばれる方が心の底から嬉しい。


「あたしにとって、お母さんよりも歳下の女の人は、みんなお姉さんだよ」


 千恵ちゃんは朗らかに『あはは』と笑う。


「……もしも、この先わたしが三十歳四十歳になっても、まだお姉さんって呼んでくれる?」


 くだらないことかもしれない。

 でも、わたしはいくつになっても千恵ちゃんにお姉さんと呼ばれたい。


「当たり前じゃん。鶴はあたしの中で永遠にお姉さんだよ」


 千恵ちゃんはわたしの胸にぐーぱんをする。

 親と子ほど年齢が離れたわたしたちだが、その友情は間違いなく確かなものだった。


「今後ともよろしくね。頼れる〝鶴お姉さん〟」


 意味ありげに含み笑いを浮かべる千恵ちゃんだったが、わたしにその意味はまったくと言って伝わらないのだった。

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