7.生まれた意味

「WEB小説の魅力とは?」


 書き手としても読み手としても、WEB小説の一ファンとして気になったので、千恵ちゃんに尋ねてみる。


「それはやっぱり〝面白い〟の一言に尽きるからじゃん?」


 けだ至言しげんだ。

 WEB小説は本当に面白い。

 そして、スマートフォンでどこでも気軽に読めるのもいい。

 わたしは一応書き手であるが、しかし、正直なところ、読み手としてのWEB小説ファンであると言ってもいい。

 大好きな憧れの作家先生は数え切れないくらいいる。

 いつか自分の小説にも〝大好き〟と言ってくれる人が出来たら――。

 『生まれた意味を教えてくれてありがとう』を言いたい。

 そんな思いを抱きつつ、わたしはもうだいぶ長いこと小説を書いている。


「なーんか難しいこと考えてない?」


 千恵ちゃんがわたしの鼻先に指を押しつける。


「――あたし、鶴の小説悪くないと思うよ」

「それはつまり良くもないってこと?」

「そうじゃなくて、刺さる人には刺さるってこと」

「刺さるって……」

「もう! 面倒くさいなぁ! いちいち言わなきゃ分からないわけ!?」

「ご、ごめん!」

「鶴の小説、あたしは〝大好き〟ってことだよ」


 『まったく! 言わせんな!』と、千恵ちゃんはふいっとそっぽを向いた。


「……ありがとう」


 千恵ちゃんはわたしに〝生まれた意味〟を教えてくれたよ。


「――あっ、でも」

「な、何?」

「何度も言うようだけど、〝公衆便女こうしゅうべんじょ〟ってペンネームはないわ」


 『あれで全てが台無し』と言って、千恵ちゃんは深いため息をついた。


「め、目立ちたかったんだよ……」


 にっこりと花が咲いたように笑う千恵ちゃんだったが、それは明らかに心から軽蔑しているという意味合いだった。

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