第8話

一応七瀬もお母様に聞いて、お礼のためにも行かせてもらうという返事を頂きとりあえず今日の夜18時におれの家集合ということにして一旦先に三人には帰ってもらった。

そして涼太は倒したグリマールの死体を探索者協会に解体してもらうために最上級ダンジョンに隣接している迷宮省第2支部に来ていた。

涼太は最上級ダンジョンで倒したモンスターを解体してもらうだけでなく、他の上級ダンジョンなどに隣接されている支部で提出すると自身の身分が明らかになってしまうようなものをこの支部だと特別に解体してもよいことになっているのである。

この特権はS級探索者にだけのものであり、一般的にこのような特権が知られることはない。

ライセンスの偽造もこの特権にあてはまるのである。

しかし近々この特権を開示すべきという声も上がっていたりする。国民にこのような隠し事をして万が一情報が漏洩してしまえば信用に傷をつけてしまうかもしれないということが最近では言われてきている。


「へ~い受付ちゃ~ん。久しぶりにモンスターの解体をお願いしに来ちゃいましたぜ~。」


その第2支部はまったく人がいなかった。最上級ダンジョンの支部ということもあり、まずほとんど人が出入りすることはなく受付に2人の女性と受付の奥にいるガタイのいい男がいるだけでとても暇そうにしているようすが涼太の目には写っていた。

そんななか、受付で椅子に腰かけている顔馴染みの女性2人は涼太が来た瞬間に目を見開き、何か言いたそうな顔をしていた。


「どうかしたのか?調子が悪いのかい?お兄さんが話聞いたろか?」

「わたしの方が年上だよね?ってそれはどうでもいいのよ。君、いまスッゴいSNSでバズってるわよ。」

「どゆこと?」

「君さっきナナちゃんねるのナナちゃんの配信に写っていたでしょ。」

「へぇもう知ってるんだ。広まるの速くない?もしかしてファンだった?」


そう涼太が言ったことに、もう一人の受付の女性が不思議そうな顔をしていた。


「そりゃ速いでしょうよ。ナナちゃん、大人気のダンジョン配信者よ。」

「???ますます意味がわからんのだけど。」


再び涼太が言ったことに受付にいた奥のガタイのいい男、元S級探索者であるその男が涼太に言った。


「ナナちゃんねるのナナちゃんといえばいま一番勢いのあるダンジョン配信者だろう?もしかして知らなかったのか。」

「は?え?てことは、うん?と、とりあえずチャンネル登録者って何人くらいなの?」


「170万人だったと思うが。」


…………………………………………



は?











あいつってそんなに人気だったのか。


スマホでナナちゃんねるのアカウントやコメントを見ながら迷宮省第2支部の待合室のソファーでゴロゴロしながら考えていた。


あいつがこんなに有名なんだとしたらそらネットの回りも速くなるはな。それになんか炎上してない?急に配信を切るのは非常識?なにいってんだこいつ。お腹がへったらそんなことになるのも仕方ないだろう。それに対して七瀬もなんか弁明?みたいなのしてるし。みんなしておれが悪いみたいに言うのはどうかと思うんだが。人が腹が減ってイライラしているというのに。


ちなみに、涼太は妹の愛からお弁当を持たされていた。しかし自転車での移動中、体力を使ったからたとエネルギー補給のためにペロリと平らげてしまっていた。


「はぁ、この調子だと確実に目立つなぁ。ただS級だというのはなんとか隠せたしまぁよしとするかぁ。」


今日のことをいろいろ振り返っていたら、グリマールの解体が終わったらしい元S級探索者であるガタイのいい男、鮫島(さめじま)勝幸(かつゆき)が待合室に入ってくるなり涼太のだらしない格好に眉を寄せる。


「涼太くん、ここは君の家じゃないんだよ。もう少し礼儀正しくできんのかい?」

「つってもあなたはS級探索者とよく交渉とか解体とかのことを担当したりしてるんだし慣れてるでしょ?」

「S級全員が君みたいなのじゃないんだよ。まったく、君はいろんな意味でも問題児だからな。とりあえずグリマールの解体が終わったから売るものと持ち帰るものを決めて解体料金を支払ってくれ。」 

「はいよ~。」


さすがにこうゆう話をするときはきちんと姿勢をたださないとな。


「まず売るものだけどぉ、魔石と食べられる部分の肉意外は全部売る感じで。」

「?魔石は売らないのかい?」

「へっへっへっへっへ~~~。実はなんとこの度、私、魔石工学に手を出そうかと思っておるのですよ。」

「!!魔石工学にかい!?それまたなんで?」


「いや~実はさ前から手を出そうかと迷ってたんだけど今回の一件もあってすこし

『調整』が必要かなぁと思いまして。おそらく1年以内に魔石工学に革命が起きるんじゃないのかなぁ?」


「なんともまぁ、悪いことじゃないんだよね?」

「当たり前でしょ!おれがそんなことすると思うか?」

「気分によってやる気が変動し、気分によって行動が極端になったりするやつって大体危険って世間ではいわれてるんだよ。ねぇ涼太くん?」


はぁ、やれやれ。信頼されすぎるのも困ったもんだぜ。この人とはそれなりに長い付き合いだからな。ここまでの信頼を向けられちゃぁ応えないとだよな。


「なんかとんでもない勘違いをされてる気がするが追及はしないでおこう。てことで魔石と食べられる部位以外はこちらで買い取らせてもらうよ。」

「よろぴく~~。」


とりあえず肉と魔石受け取ったらそのまま直で帰るか。


そうして涼太は鮫島勝幸から向けられる信頼?に応えるべく魔石工学をしっかりと勉強して世間を混乱の渦に巻き込んでやろうと心のなかで強い決意をしながら家までの最短距離を通るため自転車に乗り空を飛びながら家へ帰るのであった。

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