第7話

「実はおれはA級探索者なんだ。」


そう聞いた瞬間七瀬は納得の目線を向け、流陣は天に顔を向けて鼻で息を吸う。渡辺は、


「いや、さすがに冗談でしょ。だって自分で言うのもなんだけど高校生でB級ってかなりすごいんだよ。それを越えての高校生でA級はさすがに嘘。信じられるわけがない。」


信じてすらいなかった。

これは普段の態度のせいで、まず探索者を否定していたのが悪かった。配信を見て、そしてこの上級ダンジョンにいることもあってなんとか涼太が探索者であることに納得させることができた。しかし、A級探索者というのはまず人間として認識されてないのが大きい。確かにS級探索者よりもA級探索者はかなり力が劣る。しかし、A級とは上級ダンジョンの深層に入ることができるほどの実力者でないとA級探索者になることはできない。なぜこのようにB級とA級による強さの区分がなされているのかというと、上級ダンジョンの下層と深層では難易度が約2倍から3倍になる。それが理由でA級とは上級ダンジョンの下層よりもずっと難易度が高くなる深層を攻略できるほどの実力がないとなれないのである。


つまり渡辺のこの認識が普通であり、高校生でB級になること事態かなりヤバイやつであるが、高校生どころかまずA級以上のランクにたどり着くことは人間じゃねぇと思われているのである。


「いや信じろよ。ていうか冗談で言うことでもない気がするんだけど。」

「まったく、冗談にしては叩かれやすい話題を言うなんてハングリーはバカじゃないか?」

「おれの話、右から左に抜けていってないか?」


「はぁ、とりあえず神咲くん?探索者ライセンスあるよね?見せて現実に目をむけさせてあげて。」

「なんか自分の言葉で信じさせることができないことにおれはショックを感じてるんだが。割と。そんなに信用なかったかなぁ?」

「いや、内容が内容だけに信じさせることはムズいだろ。」

「流陣は信じてくれるのか?」

「まぁ、あの配信みたらな。なぜか渡辺は信じてないみたいだけどな。ていうかはよライセンス見せろよ。」

「はいはいはいはい。」

「……………………………………いや誰か突っ込んでよ。はいが多いって。」


若干不満げなようすでライセンスをカメラと3人が見えるように『偽造したライセンス』を見せた。


二人はため息を、一人は目が白くなっていた。


………………………………







「それで何で今まで黙ってたの?」


再び落ち着いた渡辺になぜ黙っていたかの理由を聞かれた。


「その前におれの紹介してもいいか?まだしてねぇんだわ。」

「あぁそうだったね。はいどうぞどうぞ。」


そう七瀬が言うとドローンのカメラをおれだけが写るように微調整をした。


「えぇっとぉ、まずおれの名前は神咲涼太だ。こいつら3人と同じ高校二年生で、妹がいる。


:きた~~~!!!

:とりあえず質問コーナーを

:あなたはあと3秒後に死にます


「う~~~~~~~~ん」


ポチッ


「はい?」「は?」「?」


「うし、帰るか。」


そうして帰る準備をするためにミノタウロス?の死体の方へ向かう涼太。


そうして涼太が3人に背をむけて歩き出して約3秒後、


「なにやってんだぁぁぁぁぁ!!!!!!」


一番に反応したのは流陣だった。

ちなみに、七瀬と渡辺は視覚から受け取った

情報を脳で処理することがまだできていなかった。


「!なんだよ、急に?どうした?落ち着けって。」

「前から変なやつだと思っていたけど、今回に関しては本当に意味がわからん!!!!」

「落ち着けって、どうどう。話をするには冷静でいないと。ほら深呼吸深呼吸。吸って~吐いて~吸って~吐いて~。」

 

涼太の掛け声にあわせて深呼吸をする流陣。

しかし、女子二人は状況をのみこむことができていなかった。

そして落ち着いた流陣が涼太へ問いかける。


「スーーー、んで何でお前は

『配信停止ボタン』を押したんだ?」

「えっと~、お腹が減ったから。」

「だめだ、こいつ人間が理解できる領域にいない。」


なに言ってんだこいつ?

お腹が減ったんだからしょうがないだろ。

べつになにもおかしくない。


ようやく流陣の問いかけで、聴覚からも情報を得た二人が言葉を発する。


「わぁお、これは予想外。」

「人間じゃないのか。道徳心も人との関わりの仕方を知らないロボットか怪物のどちらかなのかな。」


七瀬はかなり冷静に言葉が出てきたが、渡辺は脳が考えるのをやめていた。


「とりあえず、帰ろうぜ。お腹減ったし。みんなでバーベキューしようぜ。」

「あ、ごめんわたし帰ってからお母さんがご馳走作ってくれることになってるから。」

「それならお母様も招いてみんなでパーティーしようぜ。大丈夫か、七瀬?」

「おっけ~。お母さんにも電話して聞いてみる。」

「「なんでそんなに冷静でいられるの?んだ?」」









「ねぇ、このミノタウロス?どうするんだ。」


マジックポーチを出すわけにはいかないしな。

普段どうやって運んでんのかを知りたかったので、とりあえず聞いてみた。


「あ、それはドローンで持っていこうか。」


ドローン?なに言ってんだ。


そうして七瀬がスマホを少しいじりしばらくすると、四機のドローンが来た。


「?なんでドローンがここに来てんだ?」

「えっもしかして知らないの?それだったらどうやっていつも倒したでっかい魔物を運んでるの?」

「えっとぉ、いつもは素手で。」

「へぇ、パワフルだねぇ。それならこれからはこのドローンを使うと効率的だよ。」


話しているうちに四機のうち一機がデカイ網を吐き出した。そしてそれぞれのドローンが網の端を持ち、その網の上に流陣がミノタウロス?を持ち上げて置いた。

そのまま四機のドローンは網の上にミノタウロス?を乗せたまま、どこかに飛んでいった。


「便利になったもんだなぁ。ちなみにあれどこにいったんだ?」

「転移用魔方陣のところ。」

「…………………………………」


世の中知らないことがいっぱいなんだな。

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