第6話

おれはミノタウロス?の左腕を切り落としたあと、そのまま追撃のために背後に回りミノタウロス?の首めがけて右からの横薙ぎを放った。手加減していたので首が半分くらいしか切れなかったがそのままミノタウロス?は死に絶えた。


「片付いたな。」


そうしておれは一呼吸をつく。


なんとか手加減して倒せたけどこのミノタウロス?どうしようかな?


「なぁ七瀬~、この死体どうする………ってお前大丈夫かよ!!」


七瀬の方を向いたらそのまま七瀬は座り込んでしまった。

緊張の糸が切れたのかな?

そりゃ圧倒的な実力差のあるモンスター相手に勇敢に立ち向かっていたんだからそらそうなるよな。


おれは改めてそのような状態でもおれのために命をかけようとしていた七瀬に尊敬の念を抱いた。


「あはは、ちょっと緩んじゃったね。ごめんね神咲くん、ちょっと壁際まで運んでくれない?」

「任せろ。おんぶか?それともお姫様抱っこか?」

「お姫様抱っこで。」

「…………えっっ、まじで?自分で言ってなんだがそっち?」

「おんぶだったら力が抜けて胸が当たっちゃうでしょ。だからお姫様抱っこ。」

「そういうことなら任せろ。」


そうしておれは右手で七瀬の脇の間から背中に手を回して左手を七瀬の膝裏に回した。


「いやかっる。おまえちゃんと食べてんのか。」

「女の子に体重の話はNGだよ。」

「別に重いとか言ってるんじゃないんだし別にいいだろ。」


そんな軽口を言い合いながら壁際に七瀬をもたれさせるようにしてそっと丁寧に置いた。


「さて、……………………どうしようか?」

「どうかしたの?」

「いやだってさ、配信してるわけでしょ。まじでどうする。」


そう言いながらおれはドローンのほうを見た。

わざとコメントのほうを見ないようにして。


「そうだねぇ、まずは君の紹介からかな。」

「そうなるよなぁ。」


まぁしゃあないか。出てきちゃったもんはしょうがないし。


「どうせなら質問タイムもOKにしない?」

「う~ん、まぁオープンのほうが探られにくくなるしな。よしいいだろうおれも腹をくくる。」

「そうこなくっちゃね。じゃあドローンをこっちに誘導してくれない?」

「わかったよ、待ってろ。」


そうしておれはドローンの方へいき、撮影者の方へいくボタンを押した。その時たまたまコメントがチラッと見えた。


:イケメンすぎ

:イケメンな上に強いとか反則でしょ

:こいつ○す○す○す○す

:結婚してください!!

:おれらのナナちゃんを誑かしたクソやろうめ!!退治してやる!!!

:今先ほど呪い殺しました。あと3秒で死にます。


コメント荒れまくってね?

いや別におれのせいではないか。うん。そう認識しよう。


「それじゃぁみんな、

紹介に移ろ「由奈!!!」「七瀬!!!」!?」


一応魔力探知で気づいてはいたがせっかくだし黙っておいた。サプライズだ。


「瑠色に桜井くん!なんでここに!?」


「そんなの配信を見ててピンチになったから来たに決まってるでしょ!!心配させやがって!!」


瑠色は由奈が助かっていたことによる安堵など様々な感情の濁流のせいで普段の落ち着いた態度が崩れていた。そしてそのまま由奈に抱きついて泣いてしまった。あまりの急展開に由奈はおろおろしていた。


「渡辺の言うととおりだ。ほんとうに心配したんだからな!!」


「ご、ごめんなさい。わたしも予想外のことばかりで、」


「はぁ、とりあえず渡辺が落ち着くまで待たないとな。それで、何でお前がここにいるんだ?涼太。」

「それに関しては配信でも説明するから少し渡辺が復活するまで待とうぜ。」


とりあえずドローンを渡辺と七瀬のほうから反対側に向けた。


:おい!!なに違う方向写してんだ!!

:そうだそうだ!!美少女同士の絡みを見せろ!!

:気遣いまでできるなんてどれだけ紳士なのよ

:娘を助けていただき本当にありがとうございます!!

:まじ母いるの?


そのように数分おれはコメントを読みながら渡辺が泣き止み復活するまで待っていた。








「とりあえず落ち着いたか?」

「う゛んっ」


若干涙声ながらも、ほとんど元通りになっていた。


「まさかハングリーに気を遣われるなんてね。想像すらしていなかったよ。」

「それだけ言えれば大丈夫だな。」


:おいなんだこの顔面偏差値パーフェクトグループは

:どこをみてもイケメンと美少女しかいねぇ

:ていうかいまナナちゃんの友達みたいな子、お兄ちゃんのことハングリーって言わなかった?

:まさかのこのタイミングでハングリーの正体が突き止められたのかよ

:ていうかここ上級ダンジョンだからここにいる全員B級以上の探索者なんだよな?


「とりあえずわたしの友人をみんな紹介するね。その間桜井くんと瑠色は見てなかった部分の配信を見といてよ。」


「おけ。」

「わかったよ。」


「え~まずこっちにいるかわいい女の子はわたしの親友の、えっと~「名前出してもいいよ」わかったよ。渡辺瑠色です。B級探索者でわたしと同い年の同じ高校です。そしてこっちのイケメンくんはわたしの友人の、えっと~「名前出してもいいぞ」おっけ~。桜井流陣くんです。瑠色と同じくわたしよりも早くB級探索者になった同い年の同じ高校です。」


:まさかのここで噂のこいつらが登場してくるとは

:今回神回すぎるよ

:情報量が多すぎる。あとイケメンうざい

:イケメン(美少女)でB級探索者とか勝ち組すぎるだろwww


「まぁとりあえずわたしがよく知っているこの二人は説明ができるんだけど、もう一人の方は桜井くんと同じようによく話すんだけど、ほんとうに探索者をやってること事態知らなかったから本人で説明してほしいんだけど………………神咲くん、それって探索者ライセンス?何してるの?」


おれがA級に偽造したタイミングでちょうど七瀬が話しかけてきた。


「ねぇちょっとまって。ハングリーきみ探索者だったの?しかもこれわたしよりもずっと強いよね。ちょっとどういうことよ!!」


せっかく落ち着いていた渡辺がまた焦りだした。ちょうど同じく見ていなかった配信の部分をみていた流陣も顔をしかめてこっちを見て、


「お前、何で隠してたんだよ。別に言ってもよかっただろ?というか涼太お前探索者ランク何級だよ?」


そう聞いてきた流陣にそしてこちらをみてくる七瀬や渡辺、そして配信用のドローンまでもが訝しげにこちらの話を促すように視線をむけてきた。


おれはとうとう腹を括った。そう、

こいつらを騙す覚悟を!!

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