第30話 魔夜's レッスン 卒業認定試験

先輩を鏡子さんに預けて自室に向かいながらふと思う。


先輩との決闘の末、何とか死にながら得た勝利。


先輩は『次はオレが勝つ。』なんて言ってたけど


本当になりそうなのでもう戦いたくない。


俺の能力は魔術主体で戦った時に格下、または対等な相手との戦闘では有効だけど、


「格上との戦闘が今後の課題か~。」


言い終わると同時に自室の扉の前に着く。


「そのとーり。」


っは?なんで魔夜が俺の部屋にいんの。


つか、これもう何度目だよ。


「まーやー。勝手に部屋に入るなって何度も言ってるだろう。」


「断る。


まぁ、そんなことは置いといて。」


置くな、そんなことで済ますなよ。


今度、部屋に忍び込んでやろうか。


「きゃー、憶人のえっち。」


だー、もう。こいつが心読めるの忘れてた。


「とにかく、憶人は気づいたんでしょ。」


あー、格上への対抗策か。


「憶人に魔法を習得してもらいます。」


「ま、マジで。俺、ついに人間やめちゃう....。」



そっから魔夜の魔法レッスンが始まった。


「まず初めに、魔法と魔術の違いは何でしょうか。」


俺と魔夜の違い...


「発動までの工程の数。」


「藍花君、40点。」


厳しめの採点。ってかその伊達メガネどっから出したんだよ。


「もっと大事な部分が抜け落ちてるよ。


魔術は魔力さえあれば誰でも使えるけれど、


魔法は原則一人一つ。


先天的に魂が持っているものしか使えない。


言ってしまえば、能力みたいなものだね。」


「じゃあ、俺が魔法を使えるようになれば


「能力二つ持ちみたいなものだろうね。」


魔夜は俺の発言を待たずして先を言い、


「きっと憶人の魔法はとんでもなく強いものだと思う。」


そう断言した。


説明もわかったし、魔夜が強いだろうということから


魔法を使ってみようかと思ったが、


「そもそも魔法はどうやったら使えるようになるんだ?」


そんな至極当然な質問をする俺を笑う魔夜。


「なんのための訓練だったと思ってるの。


もう使えるようになっているはずよ。


全魔力を体の一部、眼に思いっきり込めるの。


魔眼が発現して初めて魔法が使えるようになる。


魔眼は発現は片目だけだから魔法も一つだけ。」


人外喰らいヒトデナシクライが補助するような魔法・・・。」


出し入れが重要なのか?


確かに便利だが、しっくりくるものがない。


「あ~もう、察しが悪いわね。


って言ってるんだからさ、


飲み込むまでが食事でしょ。


憶人の魔法は喰って自分のものにする。人知を超えたものならすべて。」


「自分のものにするってどういうことだ?」


「ものは試し。これでも喰らえ。」


突然、魔夜が俺に向かって魔法を使う。


魔夜の魔力が剣の形をとりその本物の剣へと姿を変え、


俺のもとに飛んでくる。


結界シールド


ダメだ。透過される。だったら


人外喰らいヒトデナシクライ


何とか直撃は避けられたが


「ぐああああああ。」


右眼が熱い。痛い。はち切れそうだ。


「憶人。飲み込んで。」


「飲み込むってこれを!?」


「考えて、口と胃袋どっちが容量が大きい。」


そうだ。もちろん胃袋の方が大きい。


口なんて体のごく一部だ。


飲み込む、咀嚼して飲み込んで自分の血肉に変えるイメージで。


「はぁ、はぁ、死にかけた。」


苦しかったが何とか成功したみたいだ。


「よし、成功ね。吐き出せないでしょうけど、


もう私の魔法が使えるようになってるはずよ。」


さっきの魔法をイメージしてみる。


すると、突如怒涛の文字列が俺を襲った。


魔力を依代とし実体を持たせる。強大であるほど、顕現時間は短縮、消費魔力増加。

作成履歴:エクスカリバー、ダーインスレイブ、レーヴァテイン、デュランダル、グングニル、・・・


存在偽造カバー・イグジステンス・ストーリー


頭にふと浮かんだ言葉を口にして、気づいたら、まったく同じものが俺の手にあった。


「ふふん。師匠から弟子へのはなむけってやつよ。


これで火力不足も解決ね。それに、」


「なんか、俺の魔力総量が増えてる!!


それに肉体の魔力に対する耐性も上がってる!?」


「えっへん。私の魔力を食べたんだから当然ね。」


普段おちゃらけてる魔夜だがこんなに強かったんだな。


「とにかく、これで私から教えられることは全部教えたわ。」


「ありがと。おかげで強くなった。」


だけど、


「まだ魔夜よりは弱いけど、魔夜は俺が守るから。」


「期待しても良い?」


「あぁ、約束だ。」


魔夜は小指を絡ませてきて


「指切り拳万、嘘ついたら針千本飲ーます。」


眼のハイライトが消えた。ガチだな。


「「指切った」」


絶対に約束守らねえとな。

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