第29話 大舞踏壊 閉演

口の中が熱くて、鼻まで鉄の匂いがしてくる。


右頬を殴られたと気付く。


「先輩、なんでパンチにしたんですか。


今なら蹴りも入ったでしょうに。」


「先輩からのハンデだと言いたいところだが、


オレは決定打に欠ける。


お前の能力は生存にぶっぱしてるからな。


だから、痛めつけることにシフトチェンジした。」


ちっ。そこに気づかれたか。痛いな。


正直、俺には致死性の攻撃よりも


痛い攻撃の方が有効だ。


俺の能力はだけだから


痛みをなかったことにはできない。


悔しいが基礎スペックは先輩の方が上、


戦闘が長引くほど被弾も増えるだろう。


出し惜しみしてらんねえ。


今までの魔力垂れ流し生活、その放出先?


「吐け、人外喰らいヒトデナシクライ。」


んなもんこの魔眼に決まってらぁ。


魔力も魔術も詰め込んできたストックがある。


とはいえ、俺が起動できるのは八つまで。


強化魔術は起動し続けなければならない。


身体強化二倍ブーストダブル八重掛けオクテッド


ただ、一時的に体内の魔力量を増加、魔力による身体強化を二倍から十倍にする。


当然、肉体の魔力許容量を超えているわけで、


肉体が光の粒子になって消えていく。


使用して五秒経つ前に能力も使用。


特攻を仕掛け続ける。


ストックしていた結界シールドがもの凄い勢いで消費されていく。


俺の踏み込みに耐え切れないんだろう。


まぁ、一日中魔力が枯れるまで高速で生成し続けたんだ。


数に余裕はある。だが、俺からもこのままでは有効打がないのも事実。


先輩は俺の攻撃を捌き続けているし。


俺は先輩に触れられた瞬間にほぼほぼ負けが決まる。


「先輩、そろそろお開きにしましょうか。」


俺が起動できるのは八つだけだけど。


起動した魔法陣は?


起動したらそれっきりの魔術は?


魔改装オーバーライド武器庫パンドラ全開放フルファイア


先輩には久しぶりに見せる大技。数は13。


前回は魔夜に止められちゃったけど、


先輩は対処できるかな。


「先輩を舐めてもらっちゃ困るぜ!!」


弾幕の隙間を縫うようにして急接近してくる朱兎先輩。


魔改装オーバーライド武器庫パンドラ全開放フルファイア


一回目はブラフ。オレが今(7つ、6つと)生成したものだ。


本命はコレ。


先輩が通過してきたところに召喚。


完全に死角。


俺は魔眼で再吸収すればいい。


対能力結界アンチアビリティーエリア


これは俺が頑張って完成させた、一日分の魔力で作った魔術。


能力は結界内部で能力を発散させない。


これで先輩の能力が体外に及ぶことはなく、


先輩の勝ち筋は消えた。


そして、


仮人迫命ヒトデナシバグ


「チュドーン!!」


黒煙の中から落ちてくる先輩。


「ふふふ、これで俺の勝ち。よっしゃー。」


そういえばこの戦いのこと誰にも言ってねえや。


っということは・・・。


「せんぱ~い。」


俺はヘロヘロの体に鞭打って、飛ぶ。


先輩のもとへ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る