第23話 朱兎陥落

「もうむりだぁ。」


情けないことだがオレは今日もじっちゃんにぼこぼこにされた。


今朝の6:00から続けていたが今はもう14:00だ。


じっちゃんは「動きがよくなってきていると」言ってくれているが


「だったらなんで 負けが増えてるんだよお!!」


昨日より戦績は悪く。


0勝100敗0引き分け。


完敗だ。悔しい。


憶人の奴もオレみたいにぼこぼこにされてるんだろうな。


「いつもんとこの大福でも買って励ましてやるか。」


疲れた体に鞭打って能力を使用、


町の上空を飛んで目当ての店まで向かう。


「おーい朱兎、元気してっか。」


「朱兎ちゃん、よってかんね。」


「朱兎にいだ。おーい朱兎にい。」


下から町人の声がする、今は疲れてるんだけどな。


「おうよ、そっちはどうだじじい。」


「ハッ、まだ若いもんには負けねえよ。」


「ばっちゃんよぉオレは今急いでんだ、また別の日にしてくんねえか。」


「残念だねえ。この前荷物運んでくれたお礼がしたかったんだけどねえ。」


「当然のことだからいちいち気にすんな。」


「ガキンチョ、ちゃんとかあちゃんの手伝いはしてるか?」


「いっけね、買い物の途中だった。」


「こけんなよ。」


話かけられたら答えるのが筋ってもんだから


疲れてても関係ないわな。


そんなこんなの空の旅を終え和菓子屋に着き


「おう、ばっちゃん苺大福を・・・」


じっちゃんと鏡子姉は粒餡で、憶人は粒餡かこし餡かはその日の気分、魔夜さんは白餡だから、


「粒餡3つ、こし餡1つ、白餡1つくれや。」


ばっちゃんは


「朱兎君かい、はいよ、ちょっとまってねぇ。」


テキパキと大福を紙で包み、紙袋に入れる。


「ありがとな、ばっちゃんまた来るよ。」


お代をおいて飛び立とうとしたその時


「お待ちよ。えらく汗かいてるじゃないの。


これでも飲んでいきなさい。」


とキンキンに冷気漂う麦茶の入ったコップをオレに手渡してくる。


「ぷはーっ。ありがとな、ばっちゃん。


そんじゃ今度こそ帰るな。」


「気を付けるんだよ。」


「ばっちゃんこそな。」


そうしてオレは紙袋を胸に抱いて町の上空を疾駆する。


そうして行きよりも早く家に戻ってきたのだが


「「どっごーん。」」


轟音が聞こえ、遅れてコンクリの壁が倒れ土煙が上がる。


おっかしいな、あのコンクリはオレが全力で蹴りっても亀裂が入るだけなんだけどな。


ただ、あの治安維持隊にはオレより強い人が2名ほどいるから。


どっちだろ?じっちゃんが力加減間違えることあるのか?


とにかく向かうか。


「大丈夫かー。って」


オレは衝撃の光景を目にする。

~]

「おくと!!」


後輩がコンクリに埋まり、


泡を吹いてぶっ倒れている。


隊服の中央は小さな手の形に消え去り、


憶人の胸が青紫に変色してる。手形がくっきりしてる。


「ま~や~さ~ん~。


なにしてるんですか。まったく。」


このあとオレは憶人を引っ張り出して鏡子姉にパス。


魔夜さんに修復を任せてティータイムの準備をした。


憶人は結局起きてこず、魔夜さんは罰としておやつ抜き。


鏡子姉が前から食べてみたかったのよねぇと白餡を、


白夜さんは断固粒餡派だったのでこし餡はオレがいただいた。


「頬っぺたがおちる~」


うむ、満足いくティータイムだった。

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