第22話 先輩がんばる。

最近、憶人のヤツが何かこそこそと頑張っている。


魔夜から魔法について学んでいる。


最近はもっぱら魔力を放出しては、自然回復、


たまったらまた空っぽにというのを繰り返しているらしく、


「そんなに力を使って辛くないのか?」


と訊いてみたが


「筋肉痛みたいな痛みが1日中」


ということらしい。


そうか、魔法使い、いや憶人は魔術師か、にも筋肉痛のようなものがあるらしい。


だがな、オレは今、四肢が爆散して、肺も破裂しそうだぜ、憶人よ。


「じっちゃん強すぎるってマジで。」



憶人が訓練をしていて先輩である俺を抜くなんてあってはならない。


抜かれるのは身長だけで十分だ。


「じっちゃん、オレに修行をつけてくれ。


見違えるぐらいに強くなりてえんだ。」


確かに頼んだよ。強くしてくれえって。


だけどよお、こんなにもきついのは求めてねえんだわ。


「修行内容がひたすら組手とかバッカじゃねえのー!!」


だが、やってやる。やってやるぞ。


オレは強くなって胸を張って憶人の先輩を名乗るんだ。



「ぐげえ。」


今日の組手もしんどかった。


じっちゃんの動きが目で追えない。


直感を頼りに粘っては見たがまったく歯が立たない。


蹴りを入れたら投げられ、何もしなくとも投げなれ、


100本やりあってオレは息上がってるのに


じっちゃんは汗一つかきやしない。


「朱兎君お疲れ。ツクモン、お茶を持ってきて。」


鏡子さんが持ってきてくれないんかい。


まぁ、そろそろ夏に入るし気温自体は高いから


動きたくないのもわかる。


オレの前に麦茶の入ったコップのツクモンが飛んでくる。


「ごきゅっごきゅっ。ぷはー。」


生き返る~。


「ツクモンありがとな。」


会釈をして台所に戻るツクモン。


「もう、疲れてるのはわかるけど無視はひどいんじゃない?」


ぷんすこって感じで、唇をとんがらせる鏡子姉。


「ごめん、ごめん。ぼーっとしちゃってさ。


それで何本とれたかって?


一本も取れなかったよ。わかってたことだろ。」


「まぁ、私のおじい様だから当然ね。」


「なんで鏡子姉が威張ってんだよ。」


「いいじゃない。身内のことで威張っても。」


「ふーん、そんなもん。」


「そんなもん。」


その後たわいのない雑談をして


夕方になって、鏡子姉(というよりツクモン)が夕飯を作って、


その間に風呂にはいって、食べて寝る。


「明日は、明日こそは一本取ってやる。」


今日の戦績


0勝99敗1引き分け


明日は絶対に勝つ。

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