第20話 仮人はすぐに死ぬ

「ツクモン、貫いて。」


フォークのツクモンが飛んでくる。


それも一本ではない。何十本もだ。


頬から血が流れる。正直押されている。


「俺もそこそこに強いと思っていたんですがねえ。」


何発か躱しながら、こっちにはまだ余裕があるぞと思わせておく。


「う~ん、憶人君は弱くはないけどイマイチって感じ。」


ブスッ。


フォークが右肩を貫いた。


痛みで魔術が解けて、


スパン。


ナイフに右脚のアキレス腱を切られた。


崩れ落ちながらも見える青空には一面に銀の食器が並んでいる。


仮人迫命ヒトデナシバグ!!」


何とか能力を発動させツクモンの包囲網から逃れる。


そんな俺に対して鏡子さんは


「今みたいに油断してはすぐに窮地に陥る。


おじい様や朱兎君ならそんなことにはならない。


なんで、いつも逃げ腰なの?


その能力なら相手が倒れるまで特攻をしかければいいじゃない。」


鏡子さんが戦っているところを見たことがなかった。


なんとなく、前の俺よりも少し強い程度だろうと思い込んでた。


この人は強い。俺は弱い。


きっと心の問題だ。


「ご指摘ありがとうございます。


確かに俺は弱い。


だから、俺は死んでやる。


勝つためなら何度でも。」


「良い目になってきたねえ。憶人君。」


ズババババ。


これからってのに容赦ねえぜ鏡子さん。


仮人迫命ヒトデナシバグ


情けないが距離を取って、


弾幕戦に移行する。


作戦その1:ツクモンを破壊する。


正直これが成功すればただの接近戦をするだけでよ良くなる。


倍率は鏡子さんの方が上だとはいえ、


元の身体能力は俺の方が高いんだから十分に正気はある。


魔改装オーバーライド武器庫パンドラ全開放フルファイア


これは初めてやるから上手くいくかは賭けだ


改変シャッフル魔弾バレット追尾弾ホーミング


これで追尾の対象をツクモンに絞って破壊する。


必中の最大火力。これならいける。そう思ったのに。


「おじい様、お借りします。」


鏡子さんが木刀にリソースをこめたかと思えば、


「っは!!」


ツクモンと弾幕の間に割り込んで、薙ぐ。


上空でな爆発が起き、俺の攻撃は無効化された。


「おいおい、それはズル過ぎますよ鏡子さん。」


だってそれは白夜さんの能力だったから。



鏡子さんの能力であんなことまでできるとは知らなかった。


あれは能力複数持ちどころの話じゃない。


おそらく、ツクモンというのは鏡子さん以外でも作れるのだろう。


そして、ツクモンにはそれ自体の持つ能力に加えて、


使用者の能力も刻まれる。


あの木刀は白夜さんのものだった。


だから、白夜さんの能力が使える。


ただ、残りがだから大したことができないというわけではない。


鏡子さんの化け物みたいな量のリソースをつぎ込めば、


遜色ないレベルまで引き上げられる。


ツクモンの追撃を捌きながら、そんな考え事をしていると。


鏡子さんは木刀を上段に構え、


「やぁっ!!」


俺は透明な何かに袈裟斬りにされていた。


仮人ヒトデナシ・・


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