『花菖蒲の寝ぬ空へ』: Terza rima

婀娜あだやかにあまはなめく花菖蒲はなあやめ

はなはもっ忌々いまいましき

花柄はながらで あまねあや


けどわめけどあたえぬ右手みぎて

なれどはなれぬ嘔吐えずゆめ

れのてのかげさえあいして


はなせ はなせ もうやめてくれ

はなしかけるなとわめいたとて

はなせなかった あなたの両手りょうて


はなにかかった はなこえ

はなから不快ふかいだったそのあさましささえ

はなれない はなせないまま よる


あららかにあばただれる花菖蒲はなあやめ

はなはもっ忌々いまいましき

さながそばで はばめく五月蝿さばえ


かせめてもたたえる右目みぎめ

されどはなせぬ根付ねづゆめ

かぜあめ


はなせ はなせ もうやめてくれ

はなけるなとなげいたとて

はなせなかった あなたを


わなかった ざまとげ

はなから不快ふかいだったそのやかましささえ

はなれない はなせないまま よる


はなぎれば たださだ

はなばなれになって ふるえるふえ

花菖蒲はなあやめ にぎめ そらへと


はなせ はなせ あめ

はなしかける あの花影かえい辿たどって

はなせなかった あなたとのゆめ


はなしたかった からこえ

はなから不快ふかいだったこのなやましささえ

はなせない はなせないまま よる


ままぐ あなただけの飛雨ひうこら

はなめく 花菖蒲はなあやめそら

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