Scene 3

 このまま一緒に、どこかへ連れて行ってくれることを願っていた。

    此処ではない、何処かへ……。


「ここは……」

 バイクが停車した廃棄場にて、パメラは予感に声を震わせ、

「君の献身には、感謝している」

 かつて借り暮らしをしていた廃屋の一室。

「ここで、お別れだ」

 AIのその言葉が、永劫の別れを告げていることを悟る。

「どうして……?」


 ……どうして?


「アイ……」

 別れの心構えは、済ませていたはずなのに。

「わたしも、地上そらに連れて行って」

 なぜこのような台詞を、わたしの心は吐き出しているの?

「地上は、君が生きられるような世界ではない。……ここが一番安全だ」

 嫌だ。

 そんな言葉は聞きたくない。――望んでいない。

「私のことは忘れてほしい。……私は、君を守ることはできない」

 嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 あんな寂しい思いは、二度としたくない。

 あなたが居てくれたからこそ、わたしは――。

「だめ……」


 ――行かないで……!


《AI!》

 アケディアが警告の信号こえを発した直後、通信は途絶し、

「……彼女には、少しだけ眠ってもらった」

 瞳の色が緋色へと変わったパメラは、

「わたしはあなたが好き……どうしようもなく愛してしまった」

「パメラ、君は……」

 両性具有。

 衣服を脱ぎ落した少女は、立ち尽くす竜を抱き寄せ、

「あなたの鼓動を、ずっと聞かせていて……」

 震えるパメラの背に、瞼を伏せたAIはそっと両手を回した。


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