Scene 4

 一夜明け……。


「……」

 ベッドに横たわるパメラは、玄関の扉が閉まる音を耳に。

 震える手でシーツを握りしめ、誰も居なくなった部屋で嗚咽を殺し……。

 やがて衣服を着なおした彼女は、廃棄場の瓦礫の山に腰かけ、

「探しましたよ、嬢ちゃん」

 現れた天羽の声には反応せず、遥か地上そらを見上げ続ける。


 そしてしばしの時が流れ、


「わたしを、売るんですか?」

「ケっ……ケケ」

 白髪の筋者は、肯定とも否定とも取れぬ奇怪な笑声を発し、

「なら、勝手に解体して部品を持って行ってください。……わたしはもう、ガラクタと同じなので」

 自暴自棄となった少女に対し、

「あの姉さんは、どこへ行ったんですか?」

「……」

「捨てられたんですかい? ご丁寧にもゴミ捨て場に?」

 天羽は嬲るかのように挑発を送るが、

「わたし……大切な人に乱暴を働いたんです」

「……」

 泣き腫らした目で微笑んだ少女の姿に沈黙し、

「寂しさと欲望のままに抱いて……それでも、あの人はわたしを受け入れてくれて……」

 咎人たちが逃れし地下世界はかのなか

「わたし……あの人を愛していた。滅茶苦茶に愛していた! 忘れろと言われて、忘れることなんて出来やしない!」

 涙で顔をくしゃくしゃにしたパメラは、慟哭の叫びをあげる。


 そして大阪の地にて――。


「へぇ……」

 東京ジオフロントへと進軍するマルコシアスの前に――AIは、一人立つ!



◇ 第五話 激動 ◇


                                    了

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