永倉 死す編(仮)
第29話 世界がヤバイ!!
ライフポイント……ゼロ。
俺は敗北した。
義妹である亞里栖に。
新デッキでボコボコにやられ、俺はプライドもズタズタのボロボロだった。……嘘だろ。俺の最強のドラゴンデッキが一方的にやられるとは。
ていうか、亞里栖のヤツ……罠カード多すぎだろッ。
「ちくしょう……」
「えへへーん。両ちゃん、約束通りにご飯奢ってね! あと賞金も」
そうだった……忘れていた。
もし亞里栖が勝った場合は晩御飯と賞金を出すと豪語してしまったのだ。負けるはずがないと絶対的な自信があったというのにな。
だが、現実は現実。
俺のデッキ構成が甘かった。それだけだ(泣)
まあいい。相手が亞里栖で良かった。
これが永倉だったらリアルファイトが勃発していたところだ。チョキでぶん殴っていたところだ。
こんな可愛い美少女がトレカを遊んでいるとか、嫌でも目立つだろうな。というか珍しい。
最近は女の子の参入もそれなりにいるらしいが、どっちかといえばポ●カとかの方だ。遊●王はあんまりいないかな。
「よし、飯を食いにいくか」
「さすが両ちゃん!」
歩いてイタリアンなお店へ入った。
牛丼屋とかラーメン屋の方が気楽でいいのだが、せっかくのデート。少しくらい良い店を選ばないとな。
「ここにすっか」
「えっ……」
なぜか亞里栖は足を止めた。
あれ、おかしいな。
こういうところの方がウケはいいと思ったのだが、違うのか。
「ダメか?」
「ダメじゃないけど両ちゃんらしくないよ。もっとマニアックなお店を選ぶかと」
「どんな店だよ……!? うーん、じゃあ……メイド喫茶とか」
「そう、それ!」
なんでだよっ!
俺はそういうイメージなのか……? いやいや、メイド喫茶とか月に一度通うかどうかの頻度。あと猫カフェも行くし、鳥カフェもさりげなく通っていたりする。その程度だ!
「メイド喫茶でいいの?」
「うん、いいよ」
「いいのかよ……」
どうやら、普通という選択肢はないらしい。
そういえば亞里栖は変なお店が好きだったな。一見さんお断りのようなお店も平気で入るとか言っていた。冒険が好きなタイプかもしれない。
……立ちんぼなんてこともやっていたわけだし、当然か。
いいだろう。
ならば俺の趣味に染めてやる。
向きを変え、メイド喫茶へ向かった。
徒歩十五分。
ようやく到着した。
「へえ、ここがメイド喫茶なんだね」
「そうだ。この辺りでは唯一だな。可愛い子も多いと有名だ」
「ふーん」
「なんだ。妬いているのか、亞里栖」
「ち、違うし! ていうか、両ちゃんのこと狙っているメイドさんなんていないでしょー」
「そりゃな」
月一回しか来ないし、そんな漫画みたいな恋愛は起きないって。
お店の中へ入ると「おかえりなさいませ、ご主人様とお嬢様」と激カワ猫耳メイドに迎えられた。照れ臭いが、こういうものだから仕方ない。
席へ案内され、メニューを貰う。
「へ~、結構いろいろあるんだね」
「好きなのを選んでいいぞ。王道はオムライスだ」
「うん、そうしよっと!」
ケチャップで文字を書いてもらえるからな!
そもそも、俺の大好物はオムライス。そこにメイドさんの愛のこもった文字が刻まれるわけだ。
『世界がヤバイ!!』
とな。
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