第33話 意外なお趣味を持つ学生と出会う

 ある課題でレポートが出てきたので、大学の図書館で調べている。全てが英語で、知らない言葉があるため、時間がかかっている。


「隣いいかな」


 男の声が聞こえた。私は反射的に対応をする。


「どーぞ」

「ありがとう。君は初めて見る子だけれど」


 ウェーブがかかった金髪に青い瞳の男。ファンタジー系の王子様にいてもおかしくないビジュアルだ。恐らくここの学生なのだろう。


「はい。短期留学でここに来ました」

「だからか。見覚えのない子がたくさん来ていると思ったら」


 キャンパス内の施設を使っている子はたくさんいる。私を含め三十人参加をしているから、注目度は高い。


「君は相当レベルが高いとお見受けした」

「それはどうも。そういうあなたも」


 彼が持つ美術の本を見る。わざとらしく言ってみる。


「中々の美意識をお持ちのようで。それが専攻ですか」

「いや。これはただの趣味さ。芸術活動が趣味みたいなもんでね。ここでは物理学を中心に勉強している最中なんだ。最近だと心理学も手を出してる」

「凄いですね」


 とりあえず適当にやり取りをする。こちらもレポートを仕上げたい。私の意図を読み取ったのか、男は静かに読書を始めた。レポートの難易度は高くない。三十分程度で終わった。


「うーん」


 背筋を伸ばす。スマホで時刻を確認する。午後三時。ユートンさんと合流して帰っておくべきだろう。


「それじゃ。私は帰りますね」


 軽く挨拶をして、立ち上がろうとした時、掴まれてしまった。


「君ともう少し話がしたいんだ」


 慌てていたのか、男の鞄から本が落ちた。拾ってみる。カバーがされていない表紙で、一般受けしないようなものだ。どちらかと言えば、オタク受けするようなものだろう。男は逸らしていた。隠したかったのだろう。


「どうぞ」


 本を渡す。見た目と中身のギャップが激しい人だ。縁があったら、もう一度話したいところだが、そう簡単にいかないだろう。敷地が広く、学生人数が多いからだ。


「なんかごめん」


 何もされてないのに、謝罪の言葉を受けてしまった。


「はい?」

「こういう本って苦手な人の方が多いから」


 そうかもしれない。しかし私は雑食だ。問題ない。


「大丈夫ですよ。びっくりしただけで」

「だよねぇ……」


 言葉のチョイスを間違えてしまった。余計に落ち込ませてしまった。


「本当はいい勉強になるかと思って手を出したら、面白くて夢中になっちゃって、こんな感じになって。夜の街の新たな帝王という称号を獲得したいのにマズイという自覚は」


 何か色々と言っている。気になる言葉はあるが、世の中には中二病というものが存在する。きっとそれが発症したのだと……思いたい。しかし彼の精神ダメージは相当なものだろう。そっと置いといて、私は図書館から出て行った。

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