「まだこんなに明あかるいうちから出歩であるいて、お母かあさんにおこられやしないの、リリス」

　ミルクが、リリスにかけよりたずねました。

「お母かあさんはいつだっておこっているよ。おこるのが仕事しごとみたいな生いき物ものだからね」

　リリスは鼻はなにしわをよせて、いたずらっぽく笑わらい、話はなしを続つづけました。

「この前まえも、正午しょうごの太陽たいようを観察かんさつしようと思おもってね。

わたし、こっそり昼ひるまで起おきて、屋根やねうら部屋べやにかくれていたんだ。

でも、結局けっきょくお母かあさんに見みつかって、ひどくしかられたさ。

魔女まじょは昼間ひるまはねて、夜よるに活動かつどうするものだって。

小ちいさいうちから昼間ひるまに起おきていたいなんて、お母かあさんはわたしをひどく変かわったむすめだって言いうんだ」

　リリスは、乗のって来きたほうきを表おもてのドアのわきに、なれた手てつきで立たてかけました。

そして、そのままいきおいよくドアを、バタンとしめました。

けたたましくドアをしめるのは、魔女まじょにとってはれいぎ正ただしいやり方かたなのです。

「それにお母かあさんは、わたしがあんた達犬族たちいぬぞくとなかよくするのも、ちっともよく思おもっていないんだ。

魔女まじょはネコと、人間にんげんが犬いぬとなかよくするものなんだって。

どうしてって聞きいたら、もう大昔おおむかしからそういう風ふうに決きまっているんだなんて言いうんだけど。

でも、あいつらネコって気取きどってて、わたしは好すきじゃないな」

「コーヒーとサンドウィッチはいかが」

　イヴが、かた手てにコーヒーポットを、もうかた方ほうにはサンドウィッチがたくさん乗のった大皿おおざらを持もって、リリスのもとへやって来きました。

ポットは温あたたかくて、そこからコーヒーのいいかおりがただよってきます。

はだ寒ざむい夕方ゆうがたに、友達ともだちと楽たのしく話はなしをするには、何なにか少すこしつまめる物ものと、コーヒーが一番いちばんいいのです。

「いいね。ぎゅうにゅうたっぷりでお願ねがい。それからたまごのサンドウィッチがあったらちょうだい。

ああ、まだ明あかるいうちに何なにか食たべるなんて、わくわくする」

　リリスはにこにこしながら、みんなの囲かこんでいる、茶色ちゃいろい木きのテーブルにつき、イスの下したで足あしをバタバタさせて喜よろこびました。

「ところで、何なんだってまたこんな時間じかんに、あわててやって来きたんだね」

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は２０２４年４月２３日です。

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　注意：この作品は　『小説家になろう』、『カクヨム』、『Novel days』に、同時掲載しております。

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