イヴとミルクの物語① 『にじのぼうけん』

第1話 旅に出でる ３

老犬（ろうけん）ダイが、やさしくたずねました。

彼（かれ）は赤茶（あかちゃ）のざっしゅ犬（けん）で、野菜（やさい）や果物（くだもの）を作（つく）って生活（せいかつ）していました。

今日（きょう）もイヴのカフェに野菜（やさい）をとどけに来（き）たところでした。

ダイはひじょうにかしこくて、めんどう見（み）もよかったので、森中（もりじゅう）のみんなからしたわれていました。

「そうそう、これを見（み）て。何（なん）だと思（おも）う」

　リリスはサンドウィッチを口（くち）にくわえると、あいた両手（りょうて）でポケットから、うすよごれたハンカチを取（と）り出（だ）して開（ひら）きました。

すると、そこから小（こ）ビンが出（で）て来（き）ました。

小（こ）ビンの中（なか）にはきらきらとにじ色（いろ）にかがやく、大変美（たいへんうつく）しい粉（こな）が入（はい）っていました。

「わあ、なんてきれいなんでしょう」

　ミルクが見（み）とれて言（い）いました。

「本当（ほんとう）に。こんなにきれいな粉（こな）は見（み）たことがないわ。

魔女（まじょ）ってやっぱり不思議（ふしぎ）な物（もの）を、色（いろ）いろと持（も）っているものなのねえ」

　今度（こんど）はイヴが、リリスのかたに手（て）を置（お）いて、小（こ）ビンをのぞきこみながら言（い）います。

はい色（いろ）の毛（け）をしたポチが、小（ちい）さな声（こえ）ではずかしそうに言（い）いました。

「ほうせきや、海（うみ）の中（なか）のサンゴやシンジュなんかよりずっときれいだと思（おも）うけれど、ぼく、まちがっているかな。

だって光（ひかり）のかげんで七色（なないろ）にかがやく粉（こな）なんて、見（み）たことがないから。

でも、これっていったい何（なん）なの」

　友達（ともだち）のおどろくすがたを見（み）て、リリスはやや得意気（とくいげ）です。

ダイが目（め）を丸（まる）くして言（い）いました。

「これは、ひょっとするとにじのかけらじゃないかい。

やっぱりそうだろう。長く生きてきたが、初めてお目にかかるよ。

リリス、こんなきちょうな物（もの）をいったいどうやって手（て）に入（い）れたんだい」

「にじのかけら？」

　イヴ、ミルクとポチの三人（さんにん）が、口（くち）ぐちに言（い）いました。

三人（さんにん）ともそんな言葉（ことば）、初（はじ）めて聞（き）いたからです。

するとダイが説明（せつめい）してくれました。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は２０２４年４月２５日です。

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