イヴとミルクの物語① 『にじのぼうけん』

嘉手苅 灯(カデガル トモス)

第1話 旅に出る 

第1話 旅に出でる 1

あなたへ


あなたの家いえから、月つきがのぼる方ほうに向むかって歩あるいて行いくと、何なにが見みえて来くるでしょう。


 たぶんそれは山やまが六むっつと、川かわが八やっつ。その全すべてを通とおりすぎると、人間にんげんはだれも知しらない、深ふかい深ふかい森もりに出でるはずです。




 その森もりにある犬いぬの町まちに、イヴとミルクは住すんでいます。イヴは、白地しろじに黒くろい点てんてんのあるダルメシアンで、ミルクは茶色ちゃいろに長ながいくせ毛げをしたかわいいざっしゅ犬です。二人ふたりはともに女おんなの子こでした。




 森もりの表通おもてどおりに、とは言いっても、それはほんの小道こみちだったのですが、二人ふたりは三階建さんかいだての、かわいらしい家いえを持もっていました。


 その一階いっかいでイヴは、サンドウィッチのおいしいカフェを開ひらいていました。


 二階にかいではミルクが、こう水すいや石せっけんの店みせを持もっていました。


 二ふたつは別べつべつの店みせでしたが、表おもてのかいだんでだれでも二ふたつの店みせを、自由じゆうに行いき来きすることができました。


 そのため森もりの生いき物ものは、両方りょうほうの店みせを合あわせて「かわいい犬いぬのお店みせ」と、よんでいました。




 ある日ひの午後ごごのことです。そのカフェで、イヴとミルクと、友達ともだちのダイとポチの犬いぬばかり四人よにんで、いつものようにコーヒーを飲のんでいました。




 それは、冬ふゆから春はるに変かわる時期じきのことで、夕日ゆうひがまどからやさしい光ひかりを部屋へやに投なげていました。


 ですがその光ひかりはまだまだ弱よわく、温あたたかいコーヒーがみんなにおいしく感かんじられる季節きせつでした。




 せわしなく店みせのドアが開ひらいて、ぼさぼさの黄色きいろいかみをした、魔女まじょの子こが店みせに入はいって来きました。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は2024年4月18日です。

 注意:作者がコメント欄を読むこと、またいかなる場合もコメントへ返信することはございません。読者の方のコミュニティーとして節度ある使用へのご理解に感謝します。

 注意:この作品は 『小説家になろう』、『カクヨム』、『Novel days』に、同時掲載しております。


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