第1話 7×7

 「7×7ってさ、冷静に考えて49で収まる器じゃないと思うんだ。50超えるポテンシャルあると思うんだよね」

 

 ……冷静に考えて何を言っているんですか?

 

 昨日のクラス5軍落ちしましたよ発言から1日(小泉構文)。何があったのか、いや、何もなかったからか、急にIQ15くらいの話を持ち出してきた。

 

 「いや、誤解しないで欲しいんだけど私はそんなこと思ってないよ。ただね、ちょっと聞いてほしい話があって。先週、数Aの小テストがあって、昨日それが返却されたのね。私は普通に満点だったんだけど、ノンが1個ミスってて『おいおい~』『なんだよ~』みたいな感じでいちゃついてたんだ。そんなことしてたら、ふと、ノンがどこ間違えたのかな~って思って答案を見たのよ」


 ここで一抹の不安。私はこのお話の内容を理解できるだろうか。なんせ私の最終学歴は公立中学である。高校は入学式しか行っていない。いくら一年一学期一番最初の内容だったとて。習ってなければ、(特に数学なんて)わからない可能性が高い。

 ……とも思ったがまぁ、とても小テスト上位勢の会話から出るものではなさそうな話の入りだったし、大丈夫でしょ。杞憂杞憂。


 「ノンが間違えてた問題っていうのを簡単にいうとさ、『以下の数字群から50以下の数字のみのものを全て選べ』っていうもので、いくつか①{12、34}とか②{3n(nは20以下の整数)}みたいなのがあるの」


 ほぅら、中卒の私(彼女もそうっちゃそうだけど)でも分かりそうな問題だったぞ。安心してお話の続きを聞けるぜ。こんな簡単な問題が高校数学の内容なわけが無いから、中学の内容の復習テストとかな。ですよね?高1の皆さん?


 「その中に⑥{7n(nは7以下の整数)}っていうのがあったわけ。そう、お察しの通りノンは回答するとき⑥を選ばなかったんだ。『おい~何やってんの』みたいな感じでいじってたらノンが『ちょっと最後時間がなくてあんま考える時間なくて』みたいな言い訳と一緒に、なんか、不可解なことを言い始めたんだ」


 ちょっと洒落怖みたいな語り口になってきたな。


 「『だって7×7って50超えそうじゃない?』」

 「は?私はそう思ったよ。でも彼女は止まらなくて、『7なんて四捨五入したら10』

『実質10×10なのにその半分も行ってない』『80は無理にしても60くらい行けそう』というノン氏の供述により『確かにそうかも』と、思ってしまったんだよね」


 結局思ってるやないかい!


 はい、「私はそんなこと思ってないよ」のくだりから温めてたツッコミ完了。いや~絶対フリだと思ってたんだよね、あれ。達成感があるぜ。


 「んで、楓はどう?7×7、ぱっと見50超える感じしない?」


 話を振られた。どうしよう、死ぬほどどうでもいい(幽霊ジョーク)。まぁでもちゃんと回答してあげたい。うまい感じで、興味が無いことを悟られないように、うーん、そうだな、


 (8×8が64の方が納得できないかな)


 「『待ち合わせ会館キットカット駅前店』?何を言ってるの?」

 

 こっちのセリフだよ。


 「あ、バス来た。んじゃ、また明日」


 彼女に手を振りながらお見送り。それにしても、クラスの大半からはぶられてても学校に行けるの、心強いなぁ。学校ではノンさんとやらと二人で、〇〇と〇〇〇〇のベリーハード版みたいな感じなのかしら。

 

 まぁ、それはそれとして、

 

 適当にイエスとでも答えときゃよかったな。反省。

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