その13の2



「ちょっと待ってよ」



 二人が間の抜けたやり取りをしていると、ジュリエットが口を挟んできた。



「学校の規則で、


 学生がダンジョンに潜る時は、


 最低でも四人でパーティを組まないといけないはずだ。


 一人パーティだなんておかしいよ」



「私も一年生のころは、


 クラスメイトの方々とパーティを組んでいたのです。


 ですが私は顔が怖いので、


 かつてパーティを組んでいた方々にも


 私は恐れられてしまったのです。


 それで距離ができてしまい、


 今は私ひとりでダンジョンに潜っているというわけです」



「そんなのダメだよ。校則違反だ」



「校則っていうか、危ないんじゃないのか?」



 カイムが疑問を呈した。



「そうかもしれませんが、


 私には、パーティメンバーを見つけるということが


 どうやら難しいようなのです」



「俺がルイーズと組めば問題解決だな」



「うんそうだね。……ってダメだよ!?」



 カイムの発言に頷きかけたジュリットは、我に返ってツッコミを入れた。



「パーティには四人必要なんだから、


 キミが入ってもあと二人たりないよ!?」



「そうか……。


 こういう時って、どうすれば良いんだ?」



 カイムが尋ねると、ジュリエットはこう返してきた。



「担任の先生に相談するのが良いんじゃないかな?」



「ですが……。


 一年生の時に先生に相談をした時は、


 私なら自分の力でなんとかできると言われてしまいましたけど……」



「無責任な……」



 ジュリエットは顔をしかめた。



 この冒険者学校は国営だ。



 教師の怠惰は国家の威信に関わるとでも思っているのかもしれない。



「一年の時の担任も


 チッピング先生だったのか?」



 カイムがルイーズに尋ねた。



「いえ。クラス替えが有りましたから、


 その時は別の先生が担任でしたよ」



 前の教師がダメだっただけで、テリーであれば良い回答をくれるかもしれない。



 そう思い、カイムはこう提案した。



「それじゃあもう一回


 相談に行ってみるのが良いかもな。


 ……今、先生はどこに?」



「たぶん職員室だと思いますけど」



「行ってみるか?」



「そうしましょうか」



 そうすることになった。



 カイム、ルイーズ、ジュリエット、それとターシャの四人で職員室に向かった。



 職員室に入ったカイムは、すぐにテリーを見つけることができた。



 朝に職員室を訪ねた時と同じ位置で、テリーは椅子に腰かけていた。



「先生」



 カイムがテリーに声をかけた。



「はい。何でしょうか?」




 ……。




 カイムはルイーズが置かれている状況を説明した。



「そんな事になっていたなんて……。


 気付くことができずにもうしわけありません」



 テリーは謝罪した。



 彼の視線はなぜか職員室の床へと向けられていた。



 それを妙に思いつつ、カイムは礼儀正しい口調でこう言った。



「いえ。座学を教えてらっしゃる先生が


 ダンジョン実習の事に気がつかないのは


 仕方が無いことだと思います。


 あの、どうすれば良いでしょうか?」



「そうですね……。


 それではヴィルフさんが


 レオハルトさんをパーティに入れてあげてください」



「えっ? 私がですか?」



 ジュリエットは意外そうに言った。



 表情を見るに、テリーの提案に乗り気ではないらしい。



 それを読み取ったテリーは、ジュリエットを咎めた。



「あなたは2年A組のリーダー的存在でしょう?


 レオハルトさんが孤立していることに対して


 何か思うところは無いのですか?」



「ですが、彼女の孤立には……


 少なからず自業自得な面が


 無いとは言えないと思うのですが……」



 やはりルイーズをパーティに入れるのは嫌なのか。



 ジュリエットは歯切れ悪く、言い逃れのような言葉を口にした。



 それに対し、テリーは厳しい顔でこう言った。



「だから一人で


 ダンジョンに潜らせるようなことになっても


 構わないと?」



「それは……」



「パーティメンバーに関して指示を出されるのは


 教師の横暴のように思えるかもしれません。


 できることならば


 生徒の自主性に任せるのが一番なのでしょう。


 ですが、


 あなたたち以外のパーティに


 レオハルトさんが加入することになれば、


 そのパーティの人たちを萎縮させてしまうことになるでしょう。


 何せレオハルトさんは


 大陸最強と言われるほどのお方なのですからね」



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